CEOメッセージ
2020年3月期を振り返ると、通信業界には、改正電気通信事業法の施行や第4の通信事業者の参入のほか、5Gの本格始動など、さまざまな環境の変化がありました。
そして、昨今の新型コロナウイルス感染症による影響は、世界中の経済や社会活動にとってあまりに大きくなっています。この未曾有の事態から生まれる誰しも経験したことのない新しい世界「ニューノーマル」は、社会のありようを一変させると同時に、変革を加速させる大きなチャンスでもあります。
KDDIは、このような大きな変化の中において、目指す姿として掲げる「社会の持続的な成長に貢献する会社」の実現に向けて、グループ全体で一丸となって取り組むとともに、中期経営計画の達成に向けて注力してまいります。
ここでは、2020年3月期を振り返るとともに、新型コロナウイルス感染症対策と、その先を見据えたKDDIのこれからについてお話しいたします。
2020年3月期の振り返り
中期経営計画1年目の成果
2019年に発表した中期経営計画では、持続的な利益成長をベースとして、2025年3月期のEPSを、2019年3月期対比で1.5倍とすることを目標に掲げました。年平均成長率 (CAGR) に置き換えると約7%の年成長が必要な中、2020年3月期のEPSは、安定的な利益成長と自社株買いの実施により6.4%増の275.69円となりました。中期経営計画の達成に向けて着実な一歩を踏み出すことができたと考えています。
2020年3月期から2022年3月期までの3年間では、成長領域の拡大とコスト効率化の取り組みにより最終年度の利益が最大化する見込みであり、2020年3月期は期初予想および社内計画を上回る実績となりました。
成長領域の利益成長が顕在化
2020年3月期は、ライフデザイン領域・ビジネスセグメントといった成長領域が営業増益を牽引しました。
これは、持続的な成長に向けて実施した、前中計期間 (2017年3月期~2019年3月期) における約5,000億円の成長投資の成果が顕在化した結果だと考えています。
ライフデザイン領域では、成長投資がエネルギーや金融分野の規模拡大につながっています。また、ビジネスセグメントでは、企業のデジタルトランスフォーメーション (DX) 推進への貢献に向けて、成長投資を通じてデバイス・ネットワーク・クラウド・データ活用までワンストップで提供できる体制を整えてきました。今、その総合力が基盤事業・新規事業の双方に寄与し、増益しています。
「KDDI Sustainable Action」策定
本年KDDIは、中期経営計画に連動した「KDDIが目指すSDGs」を、社会課題の大きさとKDDIが通信事業者としてより貢献できる事業領域の観点から8つの社会課題領域へ見直しを行い、KDDIが、これからも事業を通じてさまざまな社会課題の解決に取り組み続けるという決意を込めて、2030年を見据えたKDDIのSDGs「KDDI Sustainable Action」を新たに策定しました。社会課題をリスクとして捉えるだけでなく、KDDIならではの強みを活かしたチャンスと捉え、5GやIoTなどを活用した地方創生や、途上国における低廉で高品質な通信サービスの提供など、事業として利益をあげながら、さまざまな社会課題の解決を図ります。
各事業の取り組み
パーソナルセグメント
2020年3月に、5Gの商用サービスとなる「au 5G」を全国15都道府県の一部エリアにて提供を開始しました。「au 5G」エリアは、2020年夏以降、全都道府県主要都市に展開する予定です。また、データ使い放題で人気のエンタメコンテンツがセットになったau 5G料金プラン「データMAX 5G ALL STARパック (注)」「データMAX 5G Netflixパック」などのスマートフォン向け料金プランの提供を開始しています。「au 5G」によって、大量のデータを瞬時にストレスなく、自由に扱うことができ、従来の制約から解放された「UNLIMITED WORLD au 5G」をコンセプトに、さまざまな業界のパートナーとともに、エンターテインメント・スポーツ・アートなど生活のあらゆる場面で新しい拡張体験「Augmented Experience」をお届けしてまいります。
また、「通信とライフデザインの融合」により「グループID×エンゲージメント×総合ARPU」の最大化を図ります。具体的には、2019年に開始したスマホ決済サービス「au PAY」の魅力化を図ることでお客さまとのタッチポイントを強化 (エンゲージメント) し、ビッグデータの活用によるお客さま視点に立った「心地よい提案」を通じて、既存通信事業の基盤であるグループIDを拡大していきます。さらに、「au PAYアプリ」をお客さまの日常生活すべての入り口となる「スーパーアプリ」と位置づけて磨き上げ、お客さまに新しい体験価値を提供することで総合ARPUの最大化を図ってまいります。
ビジネスセグメント
さまざまな業界、利用シーンで企業のDXが加速し、ビジネスモデル自体が大きく変化しています。既存のモバイル・固定通信事業を安定的に成長させるとともに、お客さまのDXを支援する5G/IoT時代のビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」を中心に、あらゆる"モノ"に通信が溶け込む時代のデジタルインテグレーターとして、さまざまなパートナー企業とともに5G時代ならではの新しい体験価値とビジネスの創造を進めてまいります。また、IoT世界基盤を通じて、国内だけでなく海外にもIoTをより一層拡大し、引き続き国内外の事業規模の拡大に取り組み、環境変化に強いレジリエントな基盤づくりへ貢献してまいります。
さまざまな社会課題や新型コロナウイルス感染症とその先を見据えた対応
近年、5G/IoT、AI・ビッグデータなどの技術の進展により本格的なデジタル化が進み、データにさらなる価値を見出す「データ駆動型社会」へと変容しています。KDDIは、これらの技術を活用し、人々が抱えるさまざまな社会課題の解決や新型コロナウイルス感染症とその先を見据えた対応として、生活者の安心・安全を確保し、経済活動をサステナブルなものにするための取り組みを推進していきます。
そのために、2020年8月、KDDIはKDDI総合研究所とともに、ニューノーマル時代のレジリエントな未来社会構築を目指した「KDDI Accelerate 5.0」を策定しました。5Gネットワークをはじめとしたネットワークレイヤのみならず、プラットフォームレイヤ・ビジネスレイヤの進化、それを支える7つの分野のテクノロジーとオーケストレーション技術を駆使し、政府が推進する「Society 5.0」の実現を加速します。
日本の産業基盤を支える強靭な5G/Beyond 5Gネットワーク上に、各産業に向けた最先端のオープンなプラットフォームを形成します。その環境を用いて、多様な企業同士が手を組み、各業種のアセットやノウハウを組み合わせながらサイバー空間とフィジカル空間を融合させる。
これにより、お客さまとの新しいエンゲージメントが創出できれば、リカーリング型のレジリエントなビジネスモデルに進化することができます。
各産業のビジネスモデルの進化は、新しいライフスタイルと新しい経済メカニズム、新しい社会システムを創造することでしょう。
KDDIは、レジリエントな未来社会の構築に向けて「Society 5.0」の実現を5Gで加速していきます。
人財ファースト企業への変革
常に変化の激しい事業環境の中でも勝ち抜いていくためには、社員や組織の高度な自律性と成長が不可欠です。
従来から当社は、経営における「人財ファースト」の考え方に基づき「自律性高く成長し続ける人財」を目指す社員像として社内に向けて掲げてまいりましたが、この度、社員一人ひとりが時間や場所にとらわれず成果を出す働き方を実現することを軸として「KDDI新働き方宣言」を策定いたしました。それぞれのワークスタイルや組織における役割、生活環境に合わせて、社員一人ひとりが自身にあった働き方を実現していきます。
また、その新しい働き方を支えるため、働いた時間ではなく成果や挑戦および能力を評価・称賛し、処遇へ反映することを目的とした新人事制度を2020年8月より順次導入していきます。職務領域を明確化した「ジョブ型」人財マネジメントを導入し、市場価値に基づいた報酬制度や専門性の深耕を推進することで、「ジョブ型」の長所を生かしつつ、KDDIグループ内の広範な事業領域でのさまざまな成長機会との両立を目指していきます。
さらに社内DXの推進により、オフィスやIT 環境整備を進めていくことで、テレワークと出社のハイブリッド型で、社員一人ひとりのスタイルに応じた働き方を実現していきます。
「KDDIフィロソフィ」がサステナブル経営の原点
当社は、「KDDIフィロソフィ」の実践を通じて、すべてのステークホルダーの皆さまから愛され、信頼される企業を目指しています。KDDIには、社会インフラを担う通信事業者として、24時間365日いかなる状況でも、安定したサービスを提供する重要な社会的使命があります。通信事業は、電波など国民共有の貴重な財産をお借りして成り立っているだけに、社会が抱えるさまざまな課題に対して高い志を持って貢献していく社会的責任があると認識しています。このような企業としての姿勢、従業員の持つべき考え方をまとめたものが「KDDIフィロソフィ」であり、そこにサステナブル経営の原点があると私は考えています。
国内外に広く事業を展開していくなかで、各事業部門が連携を強化し、全従業員が共通の価値観を持って行動していくことは不可欠だと感じています。今後も「KDDIフィロソフィ」を全従業員が共有し、一丸となって使命を遂行することでサステナブル経営を推進していきます。
持続的成長と株主還元強化の両立を目指す
KDDIは、2000年の発足以来、どんな困難に直面しても諦めることなく、企業の原点である持続的成長にこだわり、19期連続増益を達成してきました。通信業界は今、グローバルに見てもこれ以上の成長は困難だという見方が広がっていますが、我々KDDIはあらゆる知恵を絞って持続的成長に挑戦していきます。
本年10月1日をもって、KDDIは20周年を迎えます。
Tomorrow, Together
これからも、お客さまやパートナー、社会とともに未来を信じて進み、長期視点に基づいた持続的な利益成長と株主還元強化の両立を目指してまいります。
今後とも、KDDIグループへの変わらぬご支援とご指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期) 達成に向けた進捗
中期経営計画の達成に向けて順調な滑り出し
2019年5月に発表した中期経営計画では、持続的な利益成長をベースとして、2025年3月期のEPSを、2019年3月期対比で1.5倍に拡大することを目標に掲げています。
また株主還元については、配当性向を「40%超」へ着実に引き上げるとともに、機動的な自己株式取得を実施します。