2023年3月期決算説明会(決算ハイライト・質疑応答)
日時 | 2023年5月11日(木)15:30-16:00(決算プレゼン)、17:15-18:15(アナリスト・投資家向け質疑応答) |
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場所 | KDDIホール(東京都千代田区大手町) |
登壇者 | 代表取締役社長 CEO 髙橋 誠 取締役執行役員副社長 パーソナル事業本部長 雨宮 俊武 取締役執行役員専務 CTO 技術統括本部長 吉村 和幸 執行役員常務 ソリューション事業本部長 桑原 康明 執行役員常務 CFO コーポレート統括本部長 最勝寺 奈苗 執行役員 パーソナル事業本部 副事業本部長 松田 浩路 執行役員 コーポレート統括本部 経営管理本部長 明田 健司 |
決算ハイライト
決算説明会の模様
決算説明会では、「23.3期連結業績」と、「24.3期連結業績予想」について、社長の髙橋より説明しました。
1. 23.3期連結業績
23.3期の連結売上高は5兆6,718億円でYOYプラス4.1%、営業利益は1兆757億円でYOYプラス1.4%となりました。また、注力領域のビジネスセグメントと金融事業の順調に成長しました。営業利益の増減要因については、マルチブランド通信ARPU収入がマイナス853億円、グループMVNO収入・ローミング収入はマイナス278億円、3G停波関連はプラス803億円、DX・金融事業はプラス289億円、コスト効率化含むその他はプラス641億円、エネルギー事業はマイナス88億円となりました。燃料高騰影響などはマイナス363億円となり、通期では、プラス152億円の増益となりました。値下げ影響や燃料高騰影響などに対し、注力領域やコスト効率化推進などにより増益しました。
2. つなぐチカラとサステナビリティ経営
当社は、昨年5月に、中期経営戦略に加えて「KDDI VISION 2030」、「つなぐチカラを進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる」を策定し、発表しました。KDDIの使命はつなぐことです。命、暮らし、心をつなぎ、進化させることで、誰もが思いを実現できる社会をつくることに貢献していきます。サステナビリティ経営の根幹にあるのはつなぐチカラです。「つなぐ」を支える高品質かつ強靭な4G/5Gネットワークに、中期で500億円規模の追加投資も行い、より高品質なネットワークを提供していきます。そして、国内外で3,700万回線となったIoTをあらゆる産業に拡大させ、Starlinkなどの技術面の拡張も行うことで、あらゆるものに通信がますます溶け込んでいく時代に通信基盤を強化していきます。そして、これらの取組みをパートナリングにより、さらに拡げ社会の持続的な成長に貢献してまいります。
3. サテライトグロース戦略と経営基盤強化
■事業戦略
サテライトグロース戦略のセンターである5G通信については、通信ARPU収入反転に向けた取り組みを推進していきます。まず、5Gエリア構築においては、生活動線に沿って強化、全国エリアカバーの拡大も推進します。23年4月末時点で鉄道は47路線、商業地域は323エリアにまで拡大しました。全国のエリアカバーについて、人口カバー率は90%を超え、5G基地局は24.3期末には約9万局にまで拡大予定です。
通信ARPUとIDについては、23.3期のマルチブランド通信ARPUは3,960円、23年3月末のIDは3,123万となりました。通信ARPUはau使い放題プランが増加した一方、UQ mobileの構成比率が上昇。IDはUQ mobileを中心にモメンタムが好調で、期初予想を上回る結果となりました。加えて、UQ mobileからauへ移行されるお客さまの数は、YOYで約1.6倍と大きく増加しました。通信ARPU収入については、YOYの減収幅が着実に減少しており、24.3期上期中の反転を目指します。通信ARPU収入反転のポイントとして、データ需要の高まりを捉え、auの魅力化とデータ利用を促進していきます。auのデータ利用量は、様々なコンテンツを5Gでお楽しみいただいていることから、YOYでプラス26%伸び、それに伴い、使い放題プラン契約者数も増加しています。引き続き、5Gと使い放題プランの魅力化を推進し、さらなるARPU成長を目指します。お客さまのニーズに合わせたご提案により、さらにデータ利用を促進していきます。UQ mobileでもデータ利用量が大きく伸びており、中・大容量プラン魅力化により、さらなるデータ利用増を目指します。povoの強みは、お客さまに最適なトッピングを最適なタイミングでご提案できる点です。Z世代向けには、SNSデータ使い放題を、また、スポーツイベントの際は、データと動画コンテンツのトッピングをご提案しました。
■注力領域
注力領域のDX、金融、LXは、通信とのシナジーにより、競争優位性を発揮していきます。
[1] DX
ビジネスセグメントの業績について、売上高は、NEXTコアがYOYでプラス17.6%と成長をけん引、各領域でYOY二桁成長を達成し、営業利益の直近5年間のCAGRはプラス13%と、順調に拡大しています。
ビジネスセグメントの成長戦略では、時間軸に沿ったお客さま提案を進めていきます。まずはじめに、既存通信事業のお客さまニーズを踏まえ、DXを提案していきます。短期的な課題である、業務プロセス効率化にはマネージドなどのコーポレートDXでご支援します。また、コールセンターなどのアウトソースニーズには、事業基盤サービスでご支援します。これらのサービスを通じて得たデータを活用し、ビジネスDXではデジタルツインなどによってお客さまのビジネスモデル変革に貢献します。このように、NEXTコアを推進し、お客さまの課題解決に貢献していきます。
NEXTコアの推進効果は、通信事業のお客さま基盤をベースに、事業領域とIDの拡大につながることです。日系メーカーA社さまの例では、通信をベースとした様々な価値提案を通じ、複数サービスのご利用に加え、マネージドによる運用もアウトソースいただいた結果、2010年から2022年にかけ月額利用料は約4.5倍になりました。これからもお客さま理解を深め、通信+αの価値を提供してまいります。
さらに、強みを活かして、グローバルにも事業領域とIDが拡大しています。コネクティッドカーに搭載のIoT回線数は、23年3月末で1,800万を超え、3年前と比較して約6.6倍となりました。国内の主要自動車メーカー様へ提供を拡大し、世界7地域で事業展開しています。データセンターも、コネクティビティを強みに積極展開しています。成功事例のロンドン・パリでは設備を拡張、この5月にはバンコクにも開業予定です。データセンター事業は、高付加価値のコネクティビティデータセンターが成長を牽引しており、売上高は23.3期に1,000億円を超え、営業利益率は2割以上と高水準です。この高利益率の源泉は、高いコネクティビティです。コンテンツとネットワークのハブになることで、さらに利用者が集積するという、強固なエコシステムを構築しています。
デジタルツインでは、データを活用した価値創造機能を強化します。人流データと3D都市モデルを組み合わせることで、多様なシミュレーションが可能になり、東京のまちづくりに貢献しています。データドリブンの機能を強化するため、データエンジニアリング専門のフライウィールを連結子会社化しました。同社の豊富な人財や技術を活かし、PDCAを高速に回すことで、データ分析の課題を解決していきます。
[2] 金融事業
金融事業については、金融事業成長により、KDDIグループの企業価値最大化を目指します。金融をエンベデッドしてauのお客さまにご利用いただくことで、付加価値ARPU拡大や長期利用促進などのauとのシナジー効果を最大化していきます。auフィナンシャルグループは、auブランドのお客さまからの信用をベースに、住宅ローンをはじめとした競争力ある商品をご提案することで、経済圏を拡大します。auとのシナジーとともに、auフィナンシャルグループの営業利益と顧客基盤が拡大しています。金融関連の付加価値ARPU収入はYOYプラス17.7%と順調に伸び、営業利益の成長に加え、決済・金融取り扱い高は14.3兆円、au PAY カード会員数は860万、auじぶん銀行ローン商品残高は2.3兆円と顧客基盤が順調に拡大しています。
[3] LX
LX(Life Transformation)については、新しい技術で体験価値を変革し、豊かな未来社会を創造してまいります。Starlinkやドローンでは、様々な場所に通信環境を提供し便利な生活体験をご提供していきます。「αU」(アルファユー)は、メタバースを中心に、ライブ配信、バーチャルショッピングなどのWeb3領域を全方位に提供していきます。
■経営基盤強化
経営基盤強化の取組みも推進していきます。まず、カーボンニュートラルの実現にむけては、auリニューアブルエナジーを4月に事業を開始しました。京セラとの資本業務提携により、再生可能エネルギー発電の事業化を加速してまいります。また、自社の省エネ施策と再エネへの切り替えを推進し、2030年度のカーボンニュートラル達成を目指していきます。
続いて、人財ファースト企業への変革として、新人事制度と社内DX、働き方改革の三位一体改革を推進しています。そして、これらの取り組みは、着実に実を結び、人事領域の外部評価機関から最優秀賞の受賞、DX基礎スキル研修の6,000人受講修了、エンゲージメントスコアの向上と、成果につながっています。今後も、グループの持続的成長を支える人財戦略としての三位一体改革を推進していきます。
4. 24.3期連結業績予想
24.3期は、売上高は5兆8,000億円とYOYプラス2.3%の増収。真ん中、営業利益は1兆800億円とYOYプラス0.4%の増益を目指します。ビジネスセグメントが成長をけん引し、営業利益は2,200億円とYOYプラス15.3%、連結営業利益の2割超の水準を目指します。これらの実現にむけ、通信ARPU収入反転や注力領域の成長でローミング収入の減少カバーを目指します。営業利益のプラス要素として、マルチブランド通信ARPU収入と、注力領域のDX・金融事業の成長などを見込んでおります。マイナス要素としては、ローミング収入の減と、23.3期の金融事業の一時的会計処理影響がありますが、ローミング収入については、25.3期以降、減収影響が緩和見込みです。
株主還元については、持続的成長を伴うDPS成長を重視しています。24.3期の1株あたり配当金は140円、22期連続の増配を目指します。自己株式取得は、3,000億円の取得枠を設定しました。
質問者1
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- 今年度の事業計画の前提について、ローミング収入が600億円減収とのことだが、なぜここまで大きいのか。またプレゼンテーション資料P34の滝グラフ上の「その他」に含まれるコストカットは中期計画上、もう少し大きくてもよいのでは。200億円の増収に転じる通信ARPU収入のベースとなるARPUトレンド含めて、数字の背景を教えて欲しい。
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ローミング収入600億円の減収については、楽天モバイルがコスト削減に向けて、大きくローミングエリアを減らす計画が前提。一方、本日プレスリリースした、同社との新たなローミング協定は、5G投資に傾注し、4Gはローミングを増やして設備効率を上げるというWINWINの議論の結果。当社にとっては、24.3期は▲600億円の減収幅が縮小し、3桁億程度改善の見込み。
「その他」については、プラスとマイナスが含まれる。エネルギーは安定的な収益を目指し、100億円程度の増益は見込みたい。それ以外には技術のコスト構造改革で200億円程度の増益要因。それに加え、ARPU増に向けてauの魅力化に向けたマーケティングコスト増を想定している。
通信ARPU収入については24.3期上期中に、ARPUについては24.3期中に反転させたい。トラフィックは順調。auで前年比+30%、UQ mobileも+20%と着実に上昇。料金プランもauのMAXプラン、UQ mobileの中大容量プランが増加傾向にあり、当社のシナリオが順調に推移してきている。
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- 株主還元について、3,000億円の自社株買いと5円の増配は、1.5兆円の枠組みの中でバランスを変えたのか、中期経営戦略で目指しているEPS成長に向けたコントロールなのか、全体的な考え方を教えて欲しい。
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昨年度、大きな料金値下げ影響と障害、燃料高騰影響、楽天ローミングの減収という厳しい経営環境で増益出来た。対外公表値には250億円届かなかったが、障害、燃料高騰影響などの350億円が無ければ100億円程度プラスとなっていた。
更に、今期も600億円のローミング減収を打ち返して増益を目指す。燃料高騰影響が無くなり、エネルギー事業を安定させ、通信ARPU収入も反転させることが出来れば、来期以降良い絵が作れると思う。19.3期にEPS1.5倍を宣言したが、現在起こっているようなビハインドの状況は想定していなかった。1年遅れでビハインドしていると捉えているが、あきらめず、事業成長と株主還元のハイブリッドで実現したい。ここ1~2年間、事業成長は大きな数字が出せなかったので、しっかり株主還元するべく、今期増配5円、3000億円と設定した。あきらめずに推進していきたい。
質問者2
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- 4Qの通信ARPU3,870円は、想定以上に下がったように思う。前年比180円下げた要因を教えて欲しい。
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最大の要因は接続料金精算。22.3期の3月と23.3期の3月だと後者の下げ幅が大きかった。この点がARPUが下げ止まらなかった大きな理由。
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- マルチブランドID3,120のうちUQ mobile・povoはどのくらいか。新年度のIDの数と比率はどの程度を想定しているか。
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ID 構成について、7割強がau。UQ mobileは800万に届く水準。povoは150万超。au構成比の維持は大きな課題。今年度は昨年度程減らないと想定している。加えてauからUQ mobileへのダウングレードが多かったが、収まってきており、UQ mobileからauへのアップグレードが増えてきている。au比率の下落が緩やかになるとみている。
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- マルチブランドIDの今期の計画は。
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3,100万。定義を見直した。具体的にはpovoのID定義を課金ユーザー数ベースに変えた。これにより新定義では23.3期末3,088万になり、24.3期には3,100万になる計画。今後はこれで開示する。
昨日ソフトバンクが決算説明会で発表していたスマホ純増数100万については、当社でも同じくらいの水準。スマホの数は重要なので今後の開示は検討していきたい。
質問者3
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- コンシューマー領域について、今期のマーケティング予算は昨年対比でどうなるのか。
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auを魅力化していくためのマーケティングは強化する。データ分析して効率よいマーケティングを目指し、効果測定しながら進めていく。23.3期は4Qにマーケティングコストを落としたので、今期は上げていく。
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- 代理店手数料などはどうみているのか。
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データを活用して効率よく推進していきたい。効率化を進めて、全体の額は減少させていきたい。
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- ビジネスセグメントについて。連結利益に占める割合が大きくなっている。通信会社のビジネスセグメントはITサービス企業とどう違うのか。既存通信はわかるがNEXTコアの部分について、所謂ITサービス企業と比較してどのような強み、成長機会、収益構造があるのか教えて欲しい。
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NEXTコアが非通信の部分でありSIに関連。当社ののびしろはDX、SI。SIerとの違いの最大ポイントは、通信をベースにした顧客数。次にIoTで差別化が図れていること。その通信のレイヤーをベースにしてマネージドなど通信に近いところから順に拡大している。その上でIoTで入手したデータを活用してソリューション提供していること。
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- 収益性のところは、リカーリングモデルになっているところがSIerと違うということか。
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ベースがリカーリングモデルになっている。可能な限りソリューションの一時金をリカーリングにしようという思考で進めている。通信ベースでの利益が17~18%程度あるが、同様の収益性がある。
プレゼンテーション資料P20-21でこのビジネスセグメントの成長戦略の流れも時系列で示している。今後も継続してご説明していきたい。
質問者4
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- マルチブランドID数について、UQ mobile からauへのアップグレードが増加とのことだが、auからUQ mobile へのダウングレードとのバランス感について教えてほしい。
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絶対数については非開示だが、まだ均衡点には到達していない。現状はauからUQ mobileがまだ多いが今後は減少傾向。UQ mobileからauへのアップグレードについては、かなり上昇傾向にある。均衡させるために、auの魅力化を図っていく必要がある。
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- 楽天ローミングについて、6月からの新たな協定では、首都圏でも提供するとのことだが、料金を値下げする報道が出ている。実際に値下げするのか。固定と従量でどのような変更があったのか、可能な範囲で教えてほしい。また、23.3期から▲600億円減少とのことだが、そこまで減少するのか。計画の考え方について教えてほしい。
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開示は控えることとしている。ただし、報道ベースのような大きなディスカウントがされている事実はない。また、▲600億円については、記載の通りである。新たな協定によって、減収幅の改善を見込んでいる。
質問者5
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- 市場の流動性について、解約率がKDDIのみならず他社でも上昇しているが、ここはどう考えたらよいのか。
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上がる要素と下がる要素がある。4Qは安価な端末を出し合い流動性が高まった。公正取引委員会からのガイドラインが示されたことは逆に流動性が抑制された。また、5月末にワンストップ化が導入されるので、これにより流動性が高まる。当社は他サービスとのバンドルに注力しており、ここは流動性が抑制される。ただし、流動性が高まることが悪い事ばかりではない。流動性が高まることにより5Gの割合が増加すれば、トラフィックもARPUも上昇するので、決してマイナス要素だけではない。しかしながら水準についてはコントロールしていきたい。
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- マーケティング戦略について、MNP新規から機種変更重視の方向に変わっていくのか。
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単純にMNPやID数よりも、ID×ARPUのトップラインを上げていくことに重きを置いていきたい。加えて非通信の付加価値も重要であるため、あわせてトップラインを上げていきたい。
質問者6
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- 株主還元の考え方に関して、1,000億円の追加は大きいと感じている。今後のM&Aの考え方について教えてほしい。
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中期の成長戦略で、7,000億円を投資すると申し上げたが、コロナ影響もあり案件が出てこなかった。コロナが明けて、取り組みたい案件が増えている。DXの領域、グローバル、金融とWeb3.0などを検討の俎上に載せている。ひとつひとつ実現していきたい。
株主還元については、昨年来、大きな成長が出来ていないので、強く打ち出していきたい。
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