2010年10月 決算社長会見
日時 | 2010年10月22日 (金) 15:00~16:00 |
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場所 | KDDIホール (KDDI大手町ビル 2階) |
発表案件 |
決算
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- 移動通信事業が減収減益となった要因は?
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シンプルコースへの移行が進み、音声ARPUが減少していることが大きな要因である。シンプルコースの導入時期は、他社よりも遅かったため、当社にとっては当面の減収要因が続くが、移行が進めばその要因もなくなる。
他社に比べてデータARPUの上昇が遅れているのは、スマートフォンの導入が遅れたことが要因だが、すでに発表したとおり、スマートフォンの導入も本格化しているので、今後、データARPUも上昇していく。
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- 固定通信事業黒字化の主な要因は?
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KDDI単体費用の減少によるが、内訳としては、ネットワークのスリム化による費用削減が大きな要素だ。
KDDI単体の売り上げは減少しているが、これはレガシーの音声サービスが減少しているためだ。一方、ケーブルプラス電話やFTTH、「KDDI Wide Area Virtual Switch」の売り上げは伸びてきている。
FTTH事業の赤字が減少し、顧客が増えれば、全体として増収増益にできると考えている。
自己株式取得
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- この時期に実施した理由は?
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経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行および株主還元策の一環である。
また、自己株式を取得することには、KDDIはまだまだ成長するというメッセージを込めている。今期は、フリーキャッシュフローに余裕があるという背景もある。
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- 取得した株式の用途は?
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未定。
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- 上限1,000億円まで自己株式を取得するが、その資金は設備投資やM&Aに振り向ける必要はなかったのか?
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設備投資は2年前がピークであり、今後はそれ以下で実施していく。現在は、大型のM&Aも予定していないため、自己株式を取得することとした。
移動通信事業戦略
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- スマートフォンの導入が遅れた理由は?
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スマートフォンを最初から1台持ちの電話として、お客さまに必要な機能を搭載しようとしたこと、フィーチャーフォンに重点があったという戦略のミスによる。
スマートフォンをラインナップとして持たなかったことにより、純増数シェアが落ち、MNPによる他社への流出が起きた。
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- グローバル仕様のスマートフォンは、メイン端末として導入しない戦略なのか?
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お客さまがご利用する端末であるかがキーポイントだ。
グローバル仕様のスマートフォンはこれから多様化していくので、低価格な端末が登場したときには、それを選択するお客さまもいるだろう。
また、グローバル仕様のスマートフォンであっても、Android (TM)を搭載していれば、LISMOなど当社独自の機能も搭載することは容易だ。
今後は、グローバル/独自仕様での垣根はあいまいになっていくので、お客さまのご要望に応じて、バランスをとって導入していく。
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- 今後、グローバル仕様のスマートフォンが中心となっていった場合に、携帯端末での競争力には差分がなくなっていく。そうなった場合に、通信事業者の競争力差別化のポイントはどこになっていくのか?
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魅力的なアプリケーションをどのように提供できるかがポイントだ。魅力的なアプリケーションを探し出し、先行して導入することが大きな競争力の要素であり、KDDIではそこに力を入れている。
また、セキュリティを保障するau one Marketのように、お客さまに使い勝手の良いサービスを提供することも重要だ。
アプリケーションを含めたプラットフォームの優位性が競争力の差別化となる。
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- コンテンツ・メディア事業にはどのように取り組むのか?
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KDDIがコンテンツプロバイダーとなる考えはないが、コンテンツを提供するためのプラットフォーム構築には積極的に取り組む。
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- 今後1年間で、導入する携帯端末におけるスマートフォンの比率はどれくらいか。フィーチャーフォンはミドルエンド、ローエンドの端末に収れんしていくのか?
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導入するスマートフォンの比率は、11月18日の発表会で田中専務が発表したとおり。 当面は、フィーチャーフォンの価格が低廉なので、ミドルエンドやローエンドの位置付けとなるが、いずれスマートフォンの価格も低廉化するので、将来は区別がなくなるだろう。
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- 11月18日発表したスマートフォンの強化は、お客さまの他社流出防止と、他社からの奪回のどちらが目的か?
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IS03には、スマートフォンのすべての機能を搭載し、おサイフケータイなど、スマートフォンになかったフィーチャーフォンの機能も搭載した。
お客さまの必要を1台で満たせる端末であり、これによって他社からの奪回を目指しているが、当初はauのお客さまの機種変更が先行するので、奪回の効果が現れるまでには時間がかかる。
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- Skype (TM)の導入は、差別化戦略のひとつか、それとも主力となるものか?
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すでにスマートフォンでSkype (TM)を利用しているお客さまもいるが、データ回線を使用しているため、PC間のSkype (TM)通話よりも品質が劣る。KDDIが提供するSkype (TM)は、回線交換を使用するため、品質が良く、ひとつの大きな競争要素になると考えている。
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- Skype (TM)と従来の音声電話をどう棲み分けるのか?
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Skype (TM)の料金を発表していないが、料金によって、お客さまのご利用が分かれることになる。Skype (TM)は、さまざまな音声サービスのひとつと考えている。
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- 固定通信網と融合させたネットワークを構築して移動通信のトラフィックに対応していくことによって、KDDIの強みを発揮できるのか?
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他社とは異なり、KDDIは固定ネットワークを自前で構築している。これを活用することで、強みを発揮できる。
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- FMBCサービスにはどのように取り組んでいくのか?
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すでにCEATECでも発表しているが、例えば、Android (TM)搭載のセットトップボックスは、スマートフォンや携帯電話と固定通信サービスを結びつけるものである。
そのように、さまざまなサービスを結びつけるプラットフォームの準備を、KDDI研究所も含めて進めている。
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- LTEが導入される2年後まで、データ通信の高速化にどう取り組むのか?
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EVDOマルチキャリアの導入によって、キャリアを複数化することで対応する。
さらに、UQ WiMAXのデータ通信の速さに加えて、auの3Gでエリアをカバーするデュアルモードで、データ通信の魅力化に対応していく。
LTEの普及は技術的に時間を要するものなので、LTEとほかのサービスが融合して、便利に使えることが大切だ。バックボーンがどのようなネットワークであっても、お客さまがどこでもデータ通信を快適に利用できるように取り組む。固定通信網のネットワークも含めて、お客さまに自由にご利用いただけるようにすることが、KDDIの競争力の源泉になっていく。
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- LTEにどのような期待を寄せているのか?
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LTEという技術への期待というよりも、周波数をどのように有効活用するかの問題だ。データのビット単価を低減できるネットワークを構築することが大切だ。データ通信の高速化だけではなく、キャパシティのある、ビット単価が低廉なデータネットワークを構築することが重要だ
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- 電子書籍専用端末や、Pad型端末など、デバイスの多様化と、それに対応した事業にどのように取り組むのか?
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例えば電話機能を中心とする携帯電話端末では大きさが限られてしまうように、どのようなものにも対応できる端末は、何らかの制約が生じる。
今後は、お客さまが利用したいサービスに適した端末や、Wi-Fiのみが搭載された端末など、さまざまな端末が登場する。お客さまにとっては、どのようなネットワークをバックボーンとして利用するかは重要ではないので、こうした端末に対応する高度なネットワークを構築して、Wi-Fi WALKERのような端末で、構築したネットワークをお客さまが自由にご利用いただけるようにすることが重要だ。
経営
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- チャレンジ2010において、達成できたことと、できなかったことをどう評価しているか?
また、達成できなかったことを、新社長にどう引き継いでもらいたいと考えているのか? -
チャレンジ2010を策定した時点とは、シンプルコースを導入して、携帯電話の販売方式を変更しなくてはならなくなったことで、大きく違ってしまった。
それ以外の部分では、この第2四半期に固定通信事業が黒字化するなど、順調に進んでいる。
移動通信事業では、端末も出そろい、今後はデータARPUも上昇するが、それに伴ってデータトラフィックが増加することとなるため、増加するトラフィックに対応できるネットワークを構築することが課題となっていく。
今後は、固定通信網も合わせて、上昇するデータトラフィックに対応したネットワークを構築することが大事だ。
また、事業の収益構造も変化しており、通信トラフィック以外の事業収益を上げていくことが大切だが、これこそ、田中新社長の得意分野だ。
- チャレンジ2010において、達成できたことと、できなかったことをどう評価しているか?
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- 10月1日で、KDDIは合併10周年を迎えた。その大半の期間において、トップとして経営を担った10年間を総括してほしい。
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正直に言って、この10年間で、これほど変化するとは思っていなかった。
3社合併を成功に治めることが、私にとっての一番の課題であった。固定通信ネットワークの統合の遅れなどはあったが、KDDIの形を造ることができ、比較的上手くいったと思っている。
私がやり切れなかったことは、新社長が新しい視点で遂行してくれるものと確信している。