2010年12月 社長会見
日時 | 2010年12月1日 (水) 13:30~14:35 |
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場所 | 東海大学校友会館 望星の間 |
発表案件 | 社長就任について (273KB) |
あいさつ
変化
KDDIをとりまく環境は大きく変化している。
まず1つめは「デバイス」。
これまでデバイスとは携帯端末そのものだけだったが、これがマルチデバイスというものに変わってきている。携帯電話のほかにスマートフォン、スレート型のタブレット、または家電の中に通信機能が入っているものなどが登場している。
また、電力メーターの中にも通信モジュールが入るような変化が起きている。
2つめは「ネットワーク」。
これまでのKDDIのネットワークは、FTTHなどを提供する固定通信のネットワークと、モバイルのネットワークの2つだけであったが、近年ではわれわれのグループの中にモバイルWiMAXを提供するUQコミュニケーションズがあり、2012年には3.9GのLTEも予定している。
また、CATVのJ:COMに資本参加し、これまでわれわれの一員であったJCNに加えて、CATVのエリアにおいてもそれなりのプレゼンスを持ち得た。
さらに、Wi-Fiにおいても投資をし、ワイヤ・アンド・ワイヤレスもわれわれのグループの一員となった。
これからの時代、特にスマートフォン時代を考えると、われわれのモバイルネットワークをすべて使ってしまうような膨大なトラフィックデータの増加が予想される。
従って、われわれのネットワークをマルチにとらえて、自由に、シームレスに使う時代がくる。
3つめが「競争軸」。
これからはシームレス競争である。これまでは、通信事業者間で競争していればよかったが、上位レイヤなどこれまで競争相手に考えていなかったレイヤも、われわれの「競争軸」の中で考えていかなければならない。
4つめの「ビジネスモデル」も、これまでの垂直統合モデルから、マルチデバイス、マルチネットワークをベースにしたオープンなビジネスモデルを作っていかなければならないと考えている。
最後に、「グローバル化」。
1億2千万人の日本国民だけを対象としてビジネスモデルを作り上げるだけでなく、69億人もいる世界の人口相手にビジネスモデル作っていかなければならない環境になっているのではないかと思っている。
新しいKDDI
9月10日の記者発表のときも申し上げたのだが、「新しいKDDI」をつくっていきたいというのが私の思いを要約する言葉である。
キーワード
具体的には、3つのキーワードがある。
1つめは「強みの最大化」。
われわれは3Gのネットワーク、モバイルWiMAX、LTE、CATV、固定通信網と、複数のネットワークを持っている。これも強みである。
また、3千万のお客さまがいらっしゃる。
さらに申し上げれば、コンテンツレイヤ含めていろいろな経験をわれわれはすでに持っているし、KDDIグループにはあわせて1万8千人の社員がいる。
こういったアセットを最大化していきたい。
2つめは「飽くなきチャレンジ」。
われわれのアセットを120%に伸ばすためには、飽くなきチャレンジをしていかなければならない上に、それを確実に実行しなければならない。
3つめは「実行の徹底」。
KDDIはだんだん内向きになっているのではないかとよく言われる。
私自身も1万8千人の社員がこのまま内向きでいいのかという疑問がある。
社員を活かして行くという意味においては、「飽くなきチャレンジ」と「実行の徹底」をしていかなればならない。
目指す先
「地域からグローバルまで」ということを申し上げたい。
なぜ地域かというと、われわれのグループの中にはCATV事業者がいる。彼らは本当に地域に密着したサービスを提供している。
そのようなお客さま密着型の立場から、ビジネスモデルをさらにグローバルに拡げ、これまでは国内中心であったビジネスモデルのベースとして、世界を相手にしていきたい。
そういったビジネスドメインに対して、われわれは何を提供するかということだが、通信を基盤としてお客さまの生活や企業活動に新たなシーンを創造していきたいと思っている。
通信事業者は、土管屋と揶揄されることがある。英語ではパイプだが、土管屋に徹するということをわれわれは、ダムパイプに徹すると言う。
われわれは通信事業だけでなく周辺も含めて、皆さまにサービスを提供したいという意味で、スマートなパイプになりたい。それを地域からグローバルまでドメインを拡げて実施していく。
これがわれわれの目指す先だと思っている。
成長に向けた3つのもっと
具体的に、どういう方向感かというと、今朝社員向けにも話をしたが、われわれは3つの方向性を実施していこうと思っている。
「3つのもっと」。もっとは、確実にやりきるということである。
われわれが過去数年トライしていたある方向を、これからの10年でとことんやっていく。これをビジョンの核にしたい。
「もっと身近に!」「もっともっとグローバルへ!」「もっといろんな価値を!」この3つである。
1つめの「もっと身近に!」とはどういうことかというと、「真のFMBC」。KDDIは2000年に合併以来、あらゆるシーンの固定通信からモバイルまでのすべてを提供する国内唯一の通信事業者であると申し上げてきた。
しかしながら、やってきたことはサービス横断の割引サービスレベルにとどまっており、私がやりたいことは「真のFMBC」である。マルチデバイス、マルチネットワークをベースに新たなビジネスモデルをつくっていきたい。
加えて、お客さまから最初に相談いただくパートナーになりたいということ。
プロダクトアウトだけでは世の中を変えていけない。
先ほど紹介したCATVも例である。CATVという通信サービスを提供しているにも関わらず、お客さまが困れば切れた電球を交換するなど、密着したお客さまのそばにいるサービスを届けたい。気持ちとしては、お客さまから最初に相談いただくパートナーという風に考えている。
2つめは「グローバル」。
ビジネスモデルの観点、事業のドメインをグローバルベースに変えていきたいということ。
「企業のグローバルな活動を完全サポート」とは、これまでやってきたことであるが、日本企業が海外に出て行くときに必要なものをすべて提供するということで、完全サポートと申し上げている。これを徹底して行う。
加えて、海外においてもコンシューマ向けのサービスを拡大していきたいということ。
われわれの最初の試みとして、バングラデッシュのbracNetというISPに出資をした。この国は、1億7千万人の人口がいるが、まだまだインターネットが2%弱の普及率である。
海外のコンシューマサービスは、これから伸びて行く国を中心に投資を進めていきたいと考えている。たしかに、グローバルにおいてケータイの世界は、陣地取りがはっきりしている。われわれ自身は、まだまだこれから伸びて行くインターネットの世界において、力を入れていきたい。
さらに、海外へコンテンツ事業を拡張したい。
これまでは国内を中心に事業ドメインを考えてきたが、われわれが持っている日本特有のクールな文化が求められるアジアを中心に、思い切って外に出て行きたいと考えている。
最後に、「もっといろんな価値を!」。
これは、「お客さまの生活や企業活動に新たなシーンを創造していきたい」と考えている。
お客さまの生活シーンに当社のICTをプラスし、さらには当社のパートナーと一緒に価値提供をしていきたい。
「エンタメ」はLISMO、「スポーツ」はau Smart Sports、「金融」はじぶん銀行ですでに実施している。さらに新たな分野ということで、「医療」、「食」、「自動車」、「教育」、「エネルギー」といったそれ以外の生活シーンにおいても、われわれのビジネスが感じられるような、そんなビジネスをやっていきたい。
人を最重要視
われわれはこの3つの軸をとことんやっていきたいと考えているが、そのためには、「人」を最重要視しなくてはいけないと思っている。
「人」、「チャレンジ精神」、「熱意」、「一体感」をベースに、私自身が旗をふって社内改革を進めていきたい。
お客さまとともに
「お客さまとともに」とは私が好きな言葉である。
われわれの事業は、「お客さまの生活を包み込むサービス」であるべきだと思っている。
なんとなく空気のようなサービスだが、通信がベースになる世界を築いていきたい。
「社会の持続的発展への貢献」とは、当たり前の話であるが、通信キャリアとして「信頼性の高いネットワーク」をつくっていく。「子どもからお年寄りまで安心・安全な利用環境」、「地球環境保全」、「事業成長そのものを通じた社会貢献」、これは企業の責務として、ベースラインとしてやっていきたい。
新しいKDDIをつくる
最初に申し上げたが、「新しいKDDI」をつくるという思いである。
KDDIは、2000年に3社合併してから10年が経った。
ある意味、ケータイの第三世代の伸長にあわせて右肩上がりに成長してきたのではないかと思っている。
これからの時代は、最初にご説明したとおり、いくつかの変化が同時に起こりつつある、非常にダイナミックな時代を迎える。
私は、それに見合った、それに対応できる新しいKDDIをつくっていきたいと思っているし、それをグループ社員全員でやり遂げたいという思いである。
質疑応答
経営方針
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- 合併からこれまでの10年をどう評価し、これからの10年をどのように経営していくのか。
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時代は変化する。携帯電話が3Gへ移行してく波をほかキャリアに先んじてとらえ、パケット定額、音楽ダウンロード、GPSなどの先進的なサービスを先行して提供し、お客さまにauをお選びいただいた。その後、ほかキャリアにキャッチアップされ、スマートフォンへの変化をとらえきれなかったが、今後は固定通信も融合して、マルチデバイス、マルチネットワーク、マルチユースを実現していく。
これからの10年は、社内のベクトルを合わせて、チャレンジ精神を忘れずにやっていく。
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- KDDIの通信業界の中でのポジショニング、日本の中での役割や、経営の旗印をどのように考えているのか。
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競争環境を維持することを通じて、国民・社会に便益をもたらすという考えに変更はない。
さらに、事業ドメインを通信だけでなく周辺事業にも拡げ、国内だけでなく海外も一つのセグメントになるよう取り組んでいく。
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- 10年前にNTT対抗軸としてKDDIは発足したが、今後はどのような状況となっていくのか。
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発足当時の「日本の電話を安くします。」というスローガンのように、やることを1点に絞る事業環境ではなくなっている。今後は、さまざまなドメインで事業を営む会社になる。
NTT対抗軸としては、引き続き競争を通じて国民に利益をもたらしていく。事業フレームは通信だけでなく、上位レイヤまで拡大する。
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- ほかレイヤのプレーヤーでも提供可能なマルチデバイス、マルチネットワーク、マルチユースを、通信事業者が提供する強みは何か。
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ネットワークに保有している情報や、携帯電話の位置情報など、通信事業者が持つ情報が強みである。通信事業者と上位レイヤのプレーヤーが協力することによって、より強力なサービスを提供できるので、そうしたビジネスモデルを構築する。
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- マルチデバイス、マルチネットワーク、マルチユースを実現した具体的なサービスや料金はいつごろ、発表となるのか。
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来年には、ある程度のビジネスモデルをお見せできるのではないかと考えている。
ビジネスモデルの全面的な変更はインパクトが大きいので、上位の概念で包み込むようなビジネスモデルが必要だ。
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- 設備投資に対する考え方は。
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KDDIは周波数再編対応の山を越えたので、設備投資額もピークを越え、右肩下がりになっている。今後LTEの投資が発生したとしても、右肩上がりにぱっと増加するものではない。
しかしながら、設備競争や設備投資による技術革新が、通信事業者の力の源泉であることはこれまでと変わらないので、必要な設備投資は引き続き行う。
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- 放送事業に対するグランドデザインはあるのか。
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従来から、FTTHでのVOD、CATVで提供しているコンテンツ利用のシナジー効果創出、コンテンツとして映像サービスなどを提供しており、この分野にも引き続き力を入れて取り組んでいく。
今後は、マルチスクリーン戦略として、Androidのプラットフォーム上でマルチユースを実現していくが、具体的な内容については今後お話したい。
海外事業への取り組み
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- 具体的にどのような市場や地域への事業拡大を考えているのか。
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法人市場については、データセンターを中心として取り組んでいく。
新たなコンシューマ向けサービスについては、アジアを中心に取り組み、10年後にはKDDIの戦略が明らかになるように進めていく。
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- アジア圏のコンシューマ事業においてはM&Aは実施するのか。
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アジア地域においては、M&Aを通じてインターネットのレイヤなどで、現地のプレーヤーと一緒に事業を立ち上げていく。アジア以外の地域においても、案件ベースでM&Aを検討する。
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- アジアにおけるM&Aの対象は通信事業者とコンテンツ事業者のどちらか。
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上位レイヤ、下位レイヤ含め、あらゆるレイヤで検討していく。
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- 2008年に、2013年までに海外売り上げを2,000億円にすると発表しているが、今回の海外事業への取り組みを行なうことによって、海外事業の売上高が2,000億円以上に上積みされるのか。
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2,000億円は法人事業をベースにしているので、コンシューマ事業も含めると、それ以上の規模に変更することになる。具体的には、2011年3月期決算の発表に合わせて明らかにしたい。
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- 総売上に占める海外事業売上比率をどれくらいまで増加させるのか。
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2013年の目標とした海外売り上げ2,000億円達成が視野に入ってきているが、現在見直しを進めており、具体的なものは来春ごろに公表したい。
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- M&Aは具体的に進んでいるのか。
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従来同様、必要な検討は進めているが、決定しなければお話できない。
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- M&Aの資金規模は。
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案件ごとに判断する。フレームがあるわけではない。
移動通信事業戦略
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- 移動通信事業をどのように巻き返していくのか。
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IS03を反転のきっかけとする。スマートフォンの展開に遅れがあったが、日本市場に合ったスマートフォンを投入したので、これに続くISシリーズで上昇気流に乗り、元気な、ワクワク感のあるauを取り戻す。
慢心から、他社のキャッチアップを許し、J.D. Powerの顧客満足度が2位となってしまったが、反省して、社員一丸となってauがお客さまに一番近い事業者となる。
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- 無線システムをマルチに保有することによって、運用コストが増加するのではないか。
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3Gの全国展開には1兆円必要と言われたが、モバイルWiMAXは約1,000億円で、人口カバー率60~70%まで、システムを構築できた。今後提供するLTEでは、ノードのコストが低廉化し、1つの設備で複数の無線システムが載せられるようになっており、NWコストがどんどん下がっているので、問題にならないだろう。
コストよりも、どのようにシステムを使うかが問題であり、それぞれの無線システムの特徴に合った使い方をしていく。固定通信ネットワークも合わせて、増大するトラヒックを複数のネットワークでコントロールして、お客さまにシームレスに提供していく。
スマートフォン戦略
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- 今後、スマートフォンを携帯電話の中で、どのように位置付けて取り組んでいくのか。
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短期的には、IS03の発売が好調にスタートしたことに続き、来期にはラインアップにおけるスマートフォンの比率を増やして、積極的にスマートフォン市場の変化に対応していく。
中長期的には、単純にスマートフォンの比率を増やすのではなく、通信モジュールが組み込まれたスレートPCをラインアップに加えるなど、さまざまなデバイスを取り入れて、マルチデバイスに取り組んでいく。
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- ラインアップにおけるスマートフォンの比率はどの程度にする考えか。
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来期前半としては、半分以上の機種数を考えているが、来期全体については、現在、計画策定中である。
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- スマートフォンに関するKDDIの現状をどのように考えているのか。
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他社にキャッチアップするためには、まだ時間が必要だ。IS03で、他社にないデバイスを1つ出すことができたが、ラインアップがそろわないと市場に浸透できない。しかし、必ず追いつく。