2004年9月 社長会見
事業計画
-
- メタルプラスの加入者数、売上、利益などの事業計画は。
-
事業計画については、現時点ではコメントを差し控えたい。
-
- 交換機など既存電話網の設備の除却損はどの程度か。
-
既存電話網の設備については、ほぼ償却期間を終えており、除却にかかる費用はそれほど大きくない。むしろ、既存電話網を維持するためには、メーカー側で生産などを打ち切りたいとしている部品などを調達する方法やコストを考慮する必要があり、現時点でフルIP化を進めたほうが効率的であると判断した。
-
- 2007年度までの投資額、コスト削減の見通しは。
-
投資額は、400~600億円の間程度になると思う。コスト削減については、既存電話網を更新する場合に比べて半分程度の投資で済むと考えている。
-
- 既存のマイラインユーザーがメタルプラスに移ることによる、業績への影響は。
-
具体的には申し上げられないが、お客さま一人あたりの収入は、基本料収入があるのでメタルプラスのほうが大きくなると想定している。短期的には設備投資などのコストがかかるが、収入が大きく減少することはないと考えている。
-
- 最終的な人口カバー率はどの程度になるのか。
-
CDN (Contents Delivery Network) の拡張のスケジュールにもよるが、2005年度早期で60%では満足できない。提供エリアの拡大はNTTと協議する必要があり、マイラインのお客さまが多いエリアから拡大していきたい。
-
- フルIP化はいつ頃から検討を始めたのか。今のタイミングで発表するのは、ソフトバンクの「おとくライン」への対抗か。
-
昨年からフルIP化に必要なNGW (Network Gateway) の開発を進めてきており、概要がまとまったので、メタルプラスの料金とともに発表した。特にソフトバンクの発表とは関係ない。
-
- 2007年度末のフルIP化終了時に、光プラス、メタルプラス、マイラインの割合はどの程度になっているのか。
-
現時点での予測は困難であるが、当社としては、高機能のサービスを求めるお客さまには光プラス、電話サービスを求めるお客さまにはメタルプラス、メタルプラスでカバーできないお客さまにはマイラインを提供するモデルを考えている。
-
- マイラインの加入者数は。
-
法人: 275万、個人: 659万である。ほかにDIONなどのお客さまを含めると、KDDIは固定通信分野でも日本で第2位のお客さまを持つ事業者である。
料金
-
- メタルプラスの料金は、ソフトバンクの料金を考慮して決めたのか。また、ソフトバンクが対抗値下げを行った場合、再度値下げを行うのか。
-
料金については、050番号のIP電話料金を参考にして、ソフトバンクの発表前から決めていた。
メタルプラスで今回の料金を実現できたのは、フルIP化によってネットワークの構造を変えたからできたもので、コストに基づいて算定し、お客さまに永続的にサービスを提供できる料金にした。ソフトバンクが値下げしてきても、対抗値下げを行うつもりはない。
-
- ソフトバンクのようにキャンペーンは考えていないのか。
-
キャンペーンは決めていない。メタルプラスは今までにないフルIP化によるサービスである。市外フラット料金などの魅力をアピールしていきたい。
-
- マイラインは赤字だと思うが、今回のフルIP化やメタルプラスの提供によってどのような効果があると考えるか。
-
マイラインは赤字ではない。固定通信事業が苦しいのは、光プラスやADSLなどの販売促進にコストがかかるからである。当社は、光プラスに加え、メタルプラスを機会に、事業を拡大していく。
-
- auとのセット割などは行わないのか。
-
今のところ考えていない。
-
- メタルプラスに移行することによって、電話加入権が不要になることに対し、KDDIが買い取るなどの対応を行うのか。また、メタルプラスから加入電話に戻る場合はどうなるのか。
-
電話加入権については、お客さまの財産であるので、お客さまの判断で処理していただくことになる。メタルプラスをご利用いただく際には、電話加入権は休止扱いになるので、加入電話に戻す際には再開することもできる。
制度
-
- メタルプラスの提供によって、メタル回線 (ドライカッパー) の開放義務の見直しがあった場合、どのように対応するのか。
-
ドライカッパーや光ファイバーの開放義務については、単に回線だけの問題ではなく、回線を敷設する、とう道、菅路、電柱など、インフラの開放の問題である。制度上は、開放されたことになっているが、実際には利用できない場合がほとんどで、現実的には、自前でアクセス回線はなかなか敷設できない。
-
- メタルプラスの提供により、NTT地域網をバイパスすることが可能となり、NTT地域の交換設備がボトルネックではなくなるという見方が出てくると思うが、それについてどう考えるか。また、それによって、NTTがアクセスチャージを独自の方法で算定するよう主張することなどが考えられるが、どのように考えるか。
-
メタルプラスを提供しても、他事業者を含めたマイラインは引き続きNTT地域網に依存することになる。また、アクセス回線は、依然としてボトルネックである。状況は変化してきているが、現時点で簡単にボトルネックではなくなるというのはどうかと思う。これから議論し、総合的に判断していく必要がある。
-
- メタルプラスの提供によって、NTTに依存しないフルラインのサービスが提供できるようになることで、NTT東西に対する規制や、NTTそのもののあり方について、NTTが見直しを主張してくることも考えられるが、それに対する考え方は。
-
我々が、以前から主張しているのは、いかにして、公正な競争条件を整えるかということである。メタルプラスのようなサービスを提供できるからといって、NTTとそのほかの事業者が本当に公正に競争できるようになったといえるのか。少なくともアクセスラインの独占は解決できない。
NTTの民営化から約20年たつが、基本料金について、NTT自身も問題だと認識している、コストに基づかない級局別の料金体系を是正していないし、基本料金は値上げした。一方、市外電話料金はNCC参入以降、大幅に値下がりした。プッシュホンの利用料金についても米国などは無料である。企業努力で対処できるところを、NTTは競争がなければ対処していない。これは、独占企業体質そのものだ。例えば級局別の基本料金などは、値上げなどの際に是正できたはずだ。また、収益的に苦しいというが、トヨタ自動車に次ぐ膨大な利益を出している企業のどこが苦しいのか全くわからない。
今回のフルIP化についても、いかにお客さまにメリットがあるかを強調したかったから発表した。既存の電話網に比べて、コスト構造が全く変わる。これがフルIP化の目的だ。IP化を進めることでコストが下がることはNTTもわかっているはずだ。
当社が市外電話サービスに参入した当時、PDHという方式を採用していた。NTTはネットワークのコストを下げるため、SDH方式に変更してほしいと依頼してきた。当社はPDH設備の償却も終わっていなかったが対応した。以前のNTTはコスト削減を考えていた。当社はこれまで、携帯電話のPDC設備の除却、固定網のマイクロ設備の除却などを行い、大きな特別損失を出してきた。コスト構造を大きく変えるには、そういうレベルのことをやらないと変わらない。新しいテクノロジーを利用することで、コストを下げ、ユーザーに還元することがKDDIの責務だ。
そのほか
-
- 今回のフルIP化やメタルプラスの提供によって、固定通信の法人営業部門の分社化について、変化はあるのか。
-
従来から申し上げているとおり、分社化については、現在再検討中である。