2006年12月 社長会見
MNPシステム障害
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- MNPのシステム障害が発生したが、システム容量が構造的に足りないなどの重大な問題なのか、あるいは初歩的なミスによるものなのか。
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携帯電話の取り扱いは毎年3月がピークであり、システム設計に当たっては、ピーク時のデータ処理数をある程度上回る容量を確保している。今回は、特定のハードディスクに処理が集中し、システム全体の処理を遅らせたことが原因である。ソフトウエアの試験が不十分なために生じたチェックミスだと考える。
MNP、携帯電話事業
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- MNPによる顧客の流動化が思ったより進んでいないとの見方があるが、市場動向をどう見ているか。また、何かテコ入れ策を考えているか。
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MNP開始後のMNPを利用しない新規契約のマイナスが当初の想定より小さく、MNPを利用せずにキャリアを変更するお客さまが多いことが分かってきた。ただし、MNPとそれ以外の新規のお客さまの動きを合わせて考えると、MNPが市場を活性化したことは確実である。従って、現時点では、特にMNPのテコ入れ策を実施する予定はなく、活性化した市場で当社のお客さまベースが拡大するようにしていきたい。
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- 来年のシェアの見通しは。
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来年かどうかは競争相手との関係があるが、早い時期にシェア30%を実現したい。
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- 携帯電話の機種数はMNPを開始した今年がピークか。あるいは今後も機種数は増えていくのか。
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例えば、家電製品は、普及に従い、大量生産コストダウンから、マーケットに応じた多品種少量生産に移行してきた。携帯電話も普及は進んできており、家電製品のような存在になりつつある。今後は、MNPの動向に関わらず、多品種少量生産の傾向が続くと考える。
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- 来年の携帯電話純増数はどの程度だと予測しているか。
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個人市場は飽和しつつあるが、モジュールと法人向け市場が成長しており、トータルでは、今年と同程度の純増数を見込んでいる。個人情報保護法の影響で、個人用と会社用の携帯電話を区別する動きが顕著になってきており、携帯電話市場の今後の成長は法人需要にかかっている。
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- 今後のコミッションの動向は。
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当社もコミッションを削減できればいいと考えているが、端末価格は市場で決まる。仮にコミッションを削減すると端末価格が上昇し、販売数が低下すると考えられる。そうなれば、例えば、auショップで、お客さまをきちんとサポートするための販路を維持する資金が必要になるし、メーカーの生産体制も考え直す必要がある。
また、ワンセグのような新サービスの普及も遅れるだろう。コミッションを削減すれば、単純に料金が下がるというものではなく、販路、メーカーなどの経済全体を考えて着地点を考える必要がある。
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- Rev.Aの現状とエリア拡張の計画は。
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Rev.Aは2GHz帯を利用してサービスを開始している。今後は、EV-DO Rev.0のときと同じペースでエリアを拡大していく。なお、auでは、800MHzと2GHzのデータ通信をデュアルで利用できる端末をすでに発売しており、Rev.Aのエリア外ではRev.0にアクセスしていただけるなど、ネットワークの効率的な利用は実現している。
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- 新800MHz帯を利用開始するのはいつ頃か。
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周波数再編の全体の中で考える必要があるが、今のところ、来年度後半か再来年度に新800MHz帯を利用開始する予定である。
WiMAX免許など
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- WiMAXの免許付与にあわせ、来年は、MVNO (仮想移動体通信事業者) やコミッションの在り方など、無線サービスの競争環境が総務省で議論されるが、どう考えるか。
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WiMAXの免許は来年度中に付与されると予想しているが、無線サービスの競争環境が直ちに変わるとは思わない。WiMAXは携帯電話に取って代わるものではなく、新しい市場を開拓するものだと考えており、当社では、全国一斉にサービスする計画はない。
WiFiが普及しなかったのは、周波数を共用し、ホットスポット的なサービスしか実現しなかったためであり、今回のWiMAXでは、通信事業者に免許が与えられれば品質を確保してサービスの提供が可能となる。免許はそうした品質を確保できる事業者に付与することが望ましいと考える。
auでは、すでに一部の事業者にMVNOとしてインフラを貸し出している実績があり、今後も、お互いにビジネスになる案件であれば、取り組んでいく。WiMAXの免許付与にあたり、MVNOへのインフラ開放が条件になっても構わない。
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- WiMAXの免許について、NTTグループから東西とドコモが手を挙げていることについて、どう考えるか。
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NTTグループ内で競争意識が生まれてきたのであれば、歓迎すべきことだと考える。NTT自体の意識が変わらなければ、日本の電気通信市場における公正競争は実現しない。英国BTは、自ら改革しなければ、自社の自由度が限定されてしまうと判断し、主管庁から要請されることなく、アクセス部門を分離し、経営の自由度を高めた。
固定通信
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- 固定通信事業のテコ入れのため、J:COMと提携するつもりはないのか。
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提携がうまくいくためには、お互いが十分に話し合い、提携の目的についてトップ同士が納得していなければならず、時間がかかる。CATV会社との提携にはシナジーが見込めるのは事実だが、現時点では具体的な話はしていない。
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- 東京電力はいまだにTEPCOひかりの販売を続けており、ひかりoneと区別がつきにくい。ひかりoneに統一しないのか。
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TEPCOひかりの設備に余剰があるので販売を続けているが、来年1月には事業統合し、ひかりoneを中心に販売していくことになる。
NGN
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- NTTのNGN (次世代通信網) 計画について、どう考えるか。今後の課題とKDDIの対応方針も合わせてコメントしてほしい。
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NTTのNGN計画の詳細については、情報がないのでコメントできない。ただ、現在NTTのネットワークは、他事業者との接続方法が、アクセス、アクセス網、中継網など何通りもあるが、NGNでは、他事業者ネットワークとのNNI (接続インターフェース) が東西に一カ所ずつしか想定されていない点が問題としてあげられる。これにより、当社やほかの新電電にとっては、NTTのネットワークへの依存度が高くなり、自由なサービス提供が制限される懸念がある。また、NTT東西がまったく同じ技術でネットワークを構築しようとしているのも、NTT分割の主旨からすると疑問がある。いずれにせよ、まだNTTの計画も案の段階なので、今後、議論していきたい。
そのほか
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- 合併後6年間の評価は。
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「選択と集中」が経営のテーマだった第一フェーズでは、有利子負債削減など財務が改善し、auが復活するなど、ある程度成果が上がったと考える。一方で、固定系は、マイラインで疲弊し、予想以上に苦戦した。「戦略とスピード」をテーマにした第二フェーズでは、固定通信事業のテコ入れやauのシェア30%達成後の新たな目標設定など、事業面の課題がまだまだ残っている。