2008年9月 社長会見
景況感
-
- 米国の金融市場が大きく変動している。通信事業者としてのKDDIへの影響、さらに、全般的な景況感について、教えてほしい。
-
当社の通信事業に対して、直接的な影響はほとんどないと見ている。日本がバブルから回復するのに10年あまりかかったが、米国は、世界経済に与える影響が大きいので、早期に回復することを期待している。
-
- 景気動向と通信市場について、従来はあまり関係性が見出されなかったが、今後はどうなると見ているか。
-
国際電話事業は、10年ほど前まで、景気と関連があった。一方、携帯事業は、これまで景気に関係なく伸びてきた。今後、景気と、携帯端末の総販売数とトラヒックが、どのように関係するか見極めるのは難しい。最近、携帯端末の総販売数が前年比で落ちてきているが、景気とは別の要因である。
au全般
-
- MNP前、auは順調に伸びていた。2年が経ち、最近auらしさが失われているとの指摘もある。指標として、純増数だけでみていいのかとの疑問もあるが、auの現状をどうみているのか。また、その原因をどのように分析しているのか。
-
指標として純増数だけでいいのかという指摘は、そのとおりである。一方、ドコモの2in1導入やソフトバンクの2台目需要への取り組みなどに比べ、auが出遅れたのは事実である。また、携帯端末についても、他社に比べ魅力的なものを投入できなかったことも一因といえる。しかし、夏モデルや今後の秋冬モデルなど、かなりのところまで出せると考えている。
-
- MNPが始まってから、市場環境や各種サービスの条件、ユーザーの意識など、これまでと比べ変わった点は多々あると思うが、もっとも想定外だったのはどのような点か。
-
ソフトバンクのホワイトプランとスーパーボーナスが引き金になり、端末の価格や新しい料金プランが市場に与えた影響は大きい。端末/料金分離型プランの導入も影響があったが、その評価はこれからである。
今後の携帯市場において、分離型プランを提供しても、何らかの販売コミッションが導入され、新たな販売奨励金モデルがでてくると、実質的な料金値下げにつながるので、この点が懸念される。
-
- サービスや料金が各社横並びとなっている中、今後auとしては、どのように他社との差別化を図っていくのか。
-
これまでどおり、4つのポイント、「つながりやすさ」、「魅力的な端末」、「コンテンツ・メディアの充実」、「競争力のある料金サービス」、の向上に取り組みつつ、お客さま満足度を向上させていく。
携帯市場は飽和状態を迎えていると言われるが、まだまだ伸び代はあると見ている。最近は、市場のセグメンテーション化が始まっていることから、これまでの1機種で数が出る販売と異なり、例えばナカチェン/フルチェンなど少量多品種でも特徴を出していける端末やサービス展開が必要である。
-
- 先般ドコモが新しいパケット定額プランの導入を発表したが、auは対抗策を講じるのか。
-
料金プランについては、現時点で大きく変える必要はない。ただし、現在の料金プランは非常に複雑であり、お客さまにとって分かりづらいとの指摘ももっともだと思うので、これを分かりやすいものに変えていく必要がある。
-
- ドコモの2in1について、どのように分析しているか。
-
市場の動向によっては検討を要するが、本当に需要があるのか若干疑問である。ソリューションとのセット提供など業務用携帯は個別に作り込むケースが多く、故に、業務用と個人用の携帯電話は分けた方がお客さまにとって使い勝手がよいと思う。
-
- 目標としていた累積稼動数3000万台を達成したが、次なる目標は何か。
-
累積契約数のシェアをどこまで伸ばせるかが重要である。数値目標については、公表を差し控えるが、経営や営業などさまざまなバランスを考慮しつつ進めていく。
-
- 端末販売数の減少に伴い、在庫増加の問題は発生しているのか。
-
昨年と比べ、多少在庫が増えているのは事実だが、十分消化できる範囲である。
-
- 携帯の秋冬商戦について、総販売数の見通しはどのように見ているか。
-
今年の夏商戦の実績をみると、昨年比で7割から8割程度に落ち込んでいる。この傾向は秋冬商戦にも続くと考えており、昨年比で約8割程度になるであろう。
-
- 今年度の総販売目標値を修正するのか。
-
今年度の目標修正は考えていない。
-
- 携帯電話の法人市場への取り組みについて、現在の手ごたえ、また、今後の展開など聞かせてほしい。
-
モバイルコンピューティング市場においてKDDIは一定の評価をいただいており、主に大規模法人をターゲットとしたソリューションとのパッケージ商品については強みを持っている。中小規模の法人向けについては、価格競争が激しくなっており、価格競争以外のアプローチも検討する必要がある。例えば、お客さまの利用実態に即した形で、機能限定型のローコスト端末の開発なども一案である。
-
- auにおけるGoogleのアンドロイド端末の位置付けについて、改めて聞かせてほしい。
-
いわゆるオープン化の一つの方向性を示したものである。 ただし、あくまでもお客さまにとっては選択肢の一つに過ぎず、故に、現在のところ全端末への搭載や標準システム化といったことは考えていない。
スマートフォン
-
- iPhoneが発売されて2カ月が経つが、影響についてどのように分析しているのか。
-
特定層に向けた一定需要があることは予想していた。販売開始直後の一時的なブーム発生など、ここまでの流れは想定どおりである。
-
- スマートフォンについて、来年春を目途に法人向けの販売を開始する旨アナウンスされたが、今後の展開はどのように考えているのか。また、個人向けの販売は行わないのか。
-
ソリューションと連携したサービス提供があって、はじめてスマートフォンの良さが生きてくる。携帯電話を上回る使い勝手の良さ、付加価値といったものをどれだけ提供できるかがスマートフォンの成否にかかわってくる。また、個人向けの販売についても予定している。
携帯事業の海外展開
-
- ドコモは、アジア域を中心に、海外通信オペレータへの出資など海外への事業展開を遂行しているが、KDDIはそのような計画はないのか。
-
海外通信オペレータへの出資においては、一定の経営権を得ることが基本戦略となる。リターンを期待した小額出資は、基本的に考えていない。そういった観点から、慎重に検討を行っているが、適当な物件がないというのが現状である。
固定通信事業
-
- NTTグループが光回線で1000万回線を突破したとの報道もあったが、KDDIの固定通信事業における今後の取り組みについて聞かせてほしい。
-
固定通信事業については、これまでどおり2010年度に黒字化を図るとの目標に変更はなく、十分実現可能である。
NTTグループが光回線1000万回線を達成したとのことだが、別の見方をすれば、元々約6000万の固定回線を提供している中でいまだ1000万回線しか光回線に置き換わっていないとも言える。これは、FTTHに対して必ずしもお客さまの評価が高くないこと、FTTHならではのサービスがないことが原因である。よって、固定通信事業はまだまだ拡張する余地があり、その中で、いかにお客さまにとって魅力的なサービスを提供するかが重要な鍵となる。
そのほか
-
- 昨今KDDIをはじめ、通信業界全般においてサービス障害が頻発しているが、その点についてどのように考えるか。
-
お客さまに多大なご迷惑をおかけしたことを、改めて深くお詫び申し上げる。発生原因は多岐にわたっているため、ベンダーとともに、事象毎に原因の究明と対策を検討しているところである。
-
- 端株について、10月1日の買い取り時期が迫ってきているが、進捗状況はどのようになっているのか。
-
10月1日までに5割以上の株主から買い取りまたは買い増しの意思表示があると見ている。一方、株主ご自分で手続きするより、そのまま期日を待って、強制買い取りされる方がいいとの考えを持っている株主もいるようだ。想定外だったのは、8月下旬、税務当局から、強制買い取りの場合、みなし配当課税の対象になるとの連絡を受けたことである。この点についても、株主に周知徹底を図っているところである。
-
- 放送事業者が認定放送持株会社に移行している。通信と放送の融合について、今後、どのように取り組むのか。
-
業務提携と資本提携は、必ずしも一致しない。特定の通信事業者とマスコミが1:1で結び付くのは良くないと考えるので、出資は考えていない。