イノベーションマネジメント

イノベーションの位置づけとアプローチ

KDDIは、生活者の目線に立ち、様々な分野でライフスタイルを変革していきたいと考えています。そのため、次世代通信システムBeyond 5G/6Gを見据えた先端技術の研究開発に挑み続けるとともに、外部パートナーとのコラボレーションや、産学官連携によるオープンイノベーションを通じ、ライフスタイルの変革につながる技術(LXテクノロジー)を推進しています。

研究開発・技術実証の推進体制

KDDIは、技術トレンドをタイムリーに捉え最新技術を事業に活用するための技術実証と、長期的視野での最先端技術の創出を目指した研究開発の両方を推進しています。
技術実証の分野では、技術部門などを中心に、次世代ネットワークやLXテクノロジーといった今後事業を支える技術の開発・実証などに取り組んでいます。
一方、研究開発の分野では、上記の技術部門とは別にKDDI総合研究所で未来予測のための調査分析から先端研究・応用研究まで幅広い研究開発に取り組んでおり、特に先端研究では、ネットワーク、セキュリティ、AI、XR(Cross Reality)を中心に幅広い領域をカバーしています。317名(2023年4月1日時点)の社員が研究開発に従事しています。

研究開発費の推移

研究開発費の推移

オープンイノベーションの推進体制

ビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」

お客さまと共に、新たなビジネスソリューションを創出する5G、IoT時代のビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」(東京:虎ノ門)を2018年9月にオープンしました。また、2019年9月には、大阪、沖縄にも拠点を拡大しており、のべ450社を超える法人のお客さまにご利用いただいています。
「KDDI DIGITAL GATE」は、5G、IoTなどの各種通信を使った検証設備や体感デモはもとより、デザイン思考によって潜在的な課題や斬新なアイデアを創出する共創ワークショップ、アジャイル開発によって迅速にプロトタイプ開発が可能な専用のプロジェクトルームとKDDIの開発チームを提供しています。さらには、高度な専門性を持つパートナーで構成されるプロフェッショナル集団との共創により、「気づく」「創る」「学習し改良する」を迅速に回転させ、お客さまと共に市場価値の高いサービスをいち早く社会に提供することを目指します。

KDDI Open Innovation Fund

「KDDI Open Innovation Fund」(以下、KOIF)は、KDDIとグローバル・ブレイン株式会社により、国内外の有望なスタートアップ企業に出資を行うコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)です。KDDIの持つ多くの企業との幅広いネットワーク、マーケティングスキル、各種サービスとの連携により、投資先企業の成長を強力に支援しています。2018年4月、KOIF3号を新たに立ち上げました。
AI、IoT、ビッグデータなど、5G時代にますます重要性が高まる分野に対して取り組みを強化する「投資プログラム」を設定し、KDDIおよびKDDIグループ会社が持つベンチャー企業とのネットワークや技術・ビジネスに対する知見を活用して有望なベンチャー企業を支援しています。現在活動しているKOIF3号は、運用総額約200億円規模となっており、本投資プログラムを通じ、KDDIだけでなくKDDIグループ会社も積極的にベンチャー企業との事業共創を目指して取り組んでいます。
また、米国サンフランシスコとシンガポールに専属の人員を配置し、最新の技術や斬新なビジネスモデルを持つスタートアップ企業に対して出資検討を行っています。出資した企業が日本へ進出検討を行う際には、ビジネス開発、マーケティング、ローカライズなどの幅広い支援を行っています。

KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)

KDDIは、新しいサービスを推進するスタートアップとともに、各業種において豊富なアセットやノウハウを有するパートナー連合と連携して、5G時代において社会にインパクトのある新たな事業の共創を目指す事業共創プラットフォーム「KDDI ∞ Labo」を2011年に開始しました。同プログラムでは、公募で選抜されたチームに対し、KDDI ∞ Laboの趣旨に賛同する多種多様な大企業40社以上からなる“パートナー連合”との事業共創に向けたディスカッションから、実証実験機会の創出、事業提携に至るまで一貫して支援しています。ピッチイベントなどを通したさまざまなビジネスマッチング機会、5G実証実験環境のほか、「KDDI DIGITAL GATE」アセットの提供など、さまざまな側面で支援を行っています。

新たなライフスタイルの共創型研究拠点「KDDI research atelier」

KDDIとKDDI総合研究所は、2030年を見据えた新たなライフスタイルの提案・実証を行う調査・応用研究拠点として、「KDDI research atelier」を2020年12月に東京 虎ノ門に開設し、国内外のスタートアップを含む企業、研究機関、自治体および生活者の皆さまとの共創を推進しています。
「KDDI research atelier」では、KDDIのサテライトグロース戦略のもと、生活者や社会の中長期的課題の解消に向けて、生活者視点でライフスタイルの変化の兆しを捉え、共創によりLX(Life Transformation)の実現を目指します。また、先進的なライフスタイルを実践されている生活者の方々との共創イニシアチブである「FUTURE GATEWAY」を2021年8月に立ち上げ、ともに新たなライフスタイルの提案と実証を進めています。

世界一、世界初の成果創出を目指す「海外最先端の研究者との共同研究プロジェクト」

KDDI総合研究所 先端技術研究所は、「KDDI Accelerate 5.0」で掲げる7つのテクノロジーの基礎研究を深化・加速させるため、2020年からAI、無線通信、XRの3分野で世界の各研究分野で実績のある大学の研究者との共同研究を順次開始しました。若手研究員たちは、欧米のトップクラスの研究者・学生と共に切磋琢磨しながら、世界一、世界初の研究成果創出に向け取り組んでいます。KDDI総合研究所は共同プロジェクトで得られた成果をもとに、KDDIグループが目指す「つなぐチカラ」を進化させ、誰もが思いを実現できる社会の早期実現に貢献していきます。

イノベーションのための活動

ネットワークイノベーション

取り組み事例 内容
O帯コヒーレント高密度多重伝送 現在の光ファイバーで利用可能なO帯(波長領域1260nm~1360nm)において、光通信で最も利用されているC帯(同1530nm~1565nm)もしくはL帯(同1565nm~1625nm)の約2倍となる9.6THzを一括で増幅可能な、超広帯域な光ファイバー増幅器(ビスマス添加光ファイバー増幅器)を使って、40Tbpsを超える大容量なコヒーレント高密度波長多重信号の伝送実験に世界で初めて成功しました。
80kmまでの距離をつなぐことが多いデータセンター間通信などにおいて、光ファイバー通信での大容量化が可能になるほか、低消費電力化が期待できます。
ユーザーセントリックRANの研究 デジタルツインで多様化する、お客さま一人ひとりが必要とする通信サービスを、お客さまを中心に複数の基地局が連携して提供することで、さまざまな環境で安定して享受できるユーザーセントリックRANの研究開発を進めています。2023年2月から5月まで、ユーザーセントリックRANを用いたセルフリー方式によるエリアを構築し、基地局から複数のスマートフォン方向へのデータ通信の実証実験に成功しました。
複数のデバイスとの間でのテラヘルツ帯による同時送受信 テラヘルツ帯の送受信機とマルチビームレンズアンテナを組み合わせた仮想化端末ハードウエア実証システムを開発し、送信機と2つの受信機との間で同時に、広帯域なデジタル信号を送受信することに成功しました。
今回の成果は「仮想化端末※1」の可能性を高めるものであり、Beyond 5G/6Gで求められる超高速・大容量通信の実現が期待されます。
  1. ※1スマートフォンなどのユーザーの端末が身の回りのさまざまなデバイスとテラヘルツ帯で協調し、各デバイスに搭載されたアンテナを仮想的に束ねて一つの端末として動作させる技術。

プロダクトイノベーション

取り組み事例 内容
水空合体ドローンの開発 2021年6月、「水空合体ドローン」を世界で初めて開発しました。これまでも水中作業用ドローンは存在していますが、水上にドローンを運ぶために船に搭載するなど多くの手間がかかります。水空合体ドローンは目標の地点まで空中で水中作業用のドローンを運び、そのまま水中で作業させることが可能であるため、気軽に水中作業用ドローンを活用でき、海中の養殖場の確認や洋上設備の点検など幅広い分野での活躍が期待されます。
高度マルチモーダル対話システム「MICSUS」 2022年6月から2023年1月まで、高齢者向け対話AIシステム「MICSUS」を活用した介護モニタリングの実証実験を実施しました。介護モニタリングは、ケアマネジャーが高齢者の自宅などへ訪問し健康状態や生活状況の変化を確認する業務で、ケアマネジャー業務全体の4分の1を占めています。本実証では、MICSUSを搭載したぬいぐるみ型の専用端末およびスマートフォンを活用することで、介護モニタリングにおいて高齢者の健康状態や生活状況の変化の情報を収集するための面談とその記録業務に要する時間を約7割削減することに成功しました。

プロセスイノベーション

取り組み事例 内容
アジャイル開発教育プログラムの提供 自社でもアジャイル開発手法を取り入れてきたほか、2019年3月にScrum Inc.社、株式会社永和システムマネジメントと共に合弁会社であるScrum Inc. Japan株式会社を設立し、セミナーの開催、アジャイル開発チームの立ち上げ、アジャイルな組織運営手法の定着に至るまで幅広いスクラムチーム支援により、イノベーションの実現に取り組み、今後もアジャイル開発のノウハウを提供することを通してデジタル化による企業の変革を支援していきます。

環境イノベーション

社会イノベーション

取り組み事例 内容
大規模マンションでのロボットを用いた商品配送 2023年3月、大規模マンション「プラウドシティ日吉」(分譲主:野村不動産ほか)の住民を対象に、ロボットを用いた商品配送の受容性確認と、技術的な課題を抽出する実証実験を実施しました。本実証実験では、プラウドシティ日吉居住者から実験用ECサイトを通じて約100件の注文を受け、ロボットがプラウドシティ日吉の商業施設から各住戸の玄関前まで商品を配送しました。本実証実験の結果を踏まえ、今後はエレベーターとの自動連携や、雨風対応が可能なロボットの導入を検討していきます。
自動運転車とドローンを協調制御し、中山間地域での無人物流を推進 2023年3月、長野県塩尻市の中山間地域で、自動運転車からドローンが離着陸し、ラストワンマイルの物流を行う実証に成功しました。ドローンが、移動する自動運転車の位置に合わせて離着陸することに成功したのは日本で初めてです。
本実証は荷物を載せたドローンが自動運転車上から飛び立ち、中山間地域を飛行したのち、自動運転車上へ帰還するシナリオで実施しました。今後、労働力不足が顕在化する2030年頃を目途に、都市部からの大規模な配送は自動運転車、陸上からの輸送が困難な経路ではドローンで配送を行うといった未来の荷物配送サービスの社会実装を目指します。
スマホ位置情報を活用した公道事故防止の取り組み 2023年2月、公道においてスマートフォンの位置情報を活用し、運転手に車両の存在を通知し安全運転を支援する実証実験を実施しました。GNSS(全球測位衛星システム)で計測したスマートフォンの位置情報をもとに、自転車・原動機付自転車・自動車が同じ交差点に接近した際にそれぞれの運転手のスマートフォンへ自動通知する機能を開発しました。交差点の死角に隠れている自転車・原動機付自転車・自動車の存在を、安全面に配慮した通知によってそれぞれの運転手が事前に把握することができます。
Apple Watchで心房細動の早期発見を目指す実証 2022年11月から2023年2月まで、KDDIが開発する健康アプリ「ポケットヘルスケア」とApple Watchを組み合わせて、不整脈の一種である心房細動の早期発見を目指す実証研究を実施しました。心房細動の早期発見・早期治療につながるサービスを開発し、心房細動の早期発見・早期治療に貢献していきます。
浜松市PFS成果報酬モデル構築 2021年8月から2022年8月まで、生活習慣病重症化予防事業の官民連携社会実証を実施し、成果連動型民間委託契約方式※2の実効性を検証しました。本社会実証における生活習慣改善プログラム修了者の内、生活習慣病リスク因子を保有する56名の84%に改善が見られたほか、自治体が支出する今後3年間の医療費についてシミュレーションを行い、医療費適正化効果額を算出することができました。
本社会実証結果を踏まえ、他自治体での展開を通じて、今後も自治体が抱える医療費適正化などの課題解決を目指していきます。
  1. ※2行政課題の解決に対応した成果指標を設定し、成果指標値の改善状況に連動して委託費を支払うことにより、より高い成果の創出に向けたインセンティブを民間事業者に働かせることができる新たな官民連携の手法。

イノベーションにおける主な受賞

名称

2023年 日本ITU協会賞功績賞

表彰者

一般社団法人日本ITU協会

受賞対象名

AI/ML(人工知能/機械学習)を用いた運用自動化フレームワークの研究開発・標準化活動の推進

受賞者(所属は受賞時点)

大谷 朋広(KDDI 技術戦略本部)

受賞日/授賞式

2023年5月17日

名称

令和4年度第68回前島密賞

表彰者

公益財団法人通信文化協会

受賞対象名

ネットワーク連動型モバイル端末トラヒック制御技術の開発

受賞者(所属は受賞時点)

KDDI総合研究所

受賞日/授賞式

2023年4月6日

名称

第31回地球環境大賞 総務大臣賞

表彰者

フジサンケイグループ

受賞対象名

脱炭素社会の実現に貢献する水上ドローンを開発

受賞者(所属は受賞時点)

KDDI/KDDI総合研究所

受賞日/授賞式

2023年3月1日

名称

第10回ロボット大賞 総務大臣賞

表彰者

経済産業省、一般社団法人日本機械工業連合会ほか

受賞対象名

水空合体ドローン

受賞者(所属は受賞時点)

KDDI総合研究所/KDDIスマートドローン

受賞日/授賞式

2022年10月12日

名称

第32回電波功績賞 総務大臣表彰

表彰者

一般社団法人電波産業会

受賞対象名

5G SA方式の開発とサービスの実用化

受賞者(所属は受賞時点)

要海 敏和(KDDI執行役員常務 モバイル技術本部)

受賞対象名

2.3GHz帯ダイナミック周波数共用システムの実証及び実用化

受賞者(所属は受賞時点)

林 高広(KDDI総合研究所)

受賞日/授賞式

2022年6月28日

名称

2022年度情報通信技術賞TTC会長表彰

表彰者

一般社団法人情報通信技術委員会

受賞対象名

映像符号化の研究開発・標準化及び実用化にかかわる功績

受賞者(所属は受賞時点)

滝嶋 康弘(KDDI総合研究所)

受賞日/授賞式

2022年6月14日

名称

令和4年度情報通信月間推進協議会会長表彰 情報通信功績賞

表彰者

総務省、情報通信月間推進協議会

受賞者(所属は受賞時点)

三宅 優(KDDI総合研究所)

受賞日/授賞式

2022年6月1日

名称

2022年 日本ITU協会賞功績賞

表彰者

一般社団法人日本ITU協会

受賞対象名

ITU-T SG3(料金・政策)にて、事業者間接続及び料金の交渉に関わる勧告作成・経済的政策的議論をリード

受賞者(所属は受賞時点)

本堂 恵利子(KDDI 標準化戦略室)

受賞日/授賞式

2022年5月17日

名称

令和3年度第67回前島密賞

表彰者

公益財団法人通信文化協会

受賞対象名

超大容量空間分割多重光ファイバ伝送システムの研究開発

受賞者(所属は受賞時点)

KDDI総合研究所

受賞日/授賞式

2022年4月7日

その他

  • 「イノベーティブ大企業ランキング2023」(主催:イノベーションリーダーズサミット実行委員会、経済産業省)1位(6年連続)