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自治体のデジタル化で、行政窓口の手続きをもっと便利に! ~5つのモデル事業を通して自治体のBPR推進を図る「東京都 区市町村における行政手続等デジタル化モデル事業」~
KDDIは、2021年10月に「東京都 区市町村における行政手続等デジタル化モデル事業」(以下、本事業) を受託しました。そして、これまで自治体計画の策定支援などを行ってきた経験や他企業との共創ノウハウを活かし、自治体のデジタル化支援を行う行政向けコンサルチームを組成。本事業のモデル事業に選ばれた5つの自治体について、その業務プロセスの抜本的な見直しに伴走し、行政手続きデジタル化を支援しました。また、本事業で得られた知見を他の自治体に波及させていくための映像コンテンツ制作も行いました。
今回は、本事業を担当された東京都 デジタルサービス局戦略部戦略課 (インタビュー当時) の関貫 直哉さま、映像コンテンツ制作を担当した株式会社ディジタルグロースアカデミアの長良木 靖史さまにお話を伺いました。
背景と課題
急がれる自治体業務のデジタル化
関貫 直哉さま
日本の高齢者人口は2040年にピークに達すると言われており、少子高齢化による人口減少や労働力不足は社会的な問題になっています。自治体内部においても職員数の減少や税収の減少、ベテランからの技術やノウハウの継承などさまざまな問題が懸念されており、これらを補うために、紙ベースの手続きや複雑な内部事務処理などが多い自治体業務のデジタル化は以前から課題として挙がっていました。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、自治体のデジタル化の遅れが表面化したことも、本事業を進めるきっかけとなっています。
この課題に取り組むためには、新たなシステムを導入して一気にデジタル化を目指すのではなく、現状の業務フローを把握し、業務プロセスの見直しから行います。これが、いわゆるBPR (業務改革) と呼ばれる方法です。
東京都は広域自治体として、支援が必要な自治体のBPRに伴走することで、東京全体のデジタル化の底上げを図っていく役割が求められています。
BPRについては、ICTに関する勉強会など、本事業以外の活動でも必要性を伝える取り組みを行っていましたが、こうした勉強会の対象は、各自治体の情報担当やDX (デジタルトランスフォーメーション) 担当の職員になります。そのため、実際の事務を所管する職員にまでマインドチェンジを促せていなかったのが現状です。
また、自治体業務のBPRが難しい原因として、定期的な人事異動による人の入れ替わり、情報担当と事務所管担当との温度感の違いなどがあります。自治体業務のBPRは多くの関係者のマインドチェンジを促すことがとても重要で、一部の人や外部の有識者が強引に進めても成功しません。本事業では、事務所管の職員含め、行政サービスに関わる全ての人たちにBPRの必要性を知っていただき、自分たちでもやってみようというマインドになっていただきたいという思いがありました。
[参考] BPRって何?
BPR (Business Process Re-engineering) は、現在の業務プロセスを詳細に調査・分解し、どのような問題点があるかを徹底的に分析したのち、業務プロセスそのものの再構築を図ること。抜本的に見直すことから「業務改善」ではなく「業務改革」という言葉で表現される。
例えば、右図のように、住民から何らかの申請を受理して受け渡しをする場合、BPRを行う前のフローでは、一連の業務の完了までに6つの工程があり、1件あたり5時間を要していた。一方、業務プロセスを見直し、簡素化・廃止・集約・ICT化できるところを探り、整理していくと、下のフローのようにトータルで2工程分の業務を減らすことができ、時間も1件あたり3時間に短縮された。ただICT化を考えるのではなく、プロセスを細かく分解し、無駄や無理のある部分を洗い出し、再構築をしていくことで、より大きな効果を得ることができる。
BPRを横展開するための映像コンテンツ制作
本事業では、BPRのモデル事業として5つの事業を選ばせていただきました。地域や事業が偏らないように考慮しましたが、何より横展開の可能性の高さを基準に選定を行いました。また、BPRは業務プロセスを見直し、自分たちで改善していくものなので、職員の皆さんの熱意が必要です。選ばれた5つの自治体職員の皆さんはBPRヘの関心が高く、どのような改善結果につながるか、とても楽しみでした。
そして、モデル事業の実施と同時に進めたのが、BPRについての知識や実施方法の解説、5つの事業で行うBPR事例を映像コンテンツにすることです。モデル事業で行うBPRのノウハウを全区市町村へ広く展開していくためには、映像化が最適だと考え、制作することとなりました。
東京都×KDDIによる取り組み事例
区市町村における行政手続デジタル化+自治体向けBPR啓蒙映像制作
<取り組みの概要>
■4社で連携したサポート体制
今回受託した「東京都 区市町村における行政手続等デジタル化モデル事業」では、KDDIが事業実施主体となり、コニカミノルタ社・チェンジ社・ディジタルグロースアカデミア社と連携。都が選定する5つのモデル事業に対して、窓口手続きのデジタル化などのサポートを行った。
(組織図)
(サポート対象となった5つのモデル事業)
■約半年間、各自治体に伴走してサポート
10月の事業開始からそれぞれの自治体で頻繁にワークショップを開き、課題の洗い出しから改善策を踏まえたモデル事業の実施、実施後の評価までをサポート。同時に、自治体職員にBPRの実施手順なども身につけていただくことを目標とした。
(実施スケジュール)
■モデル事業の実施報告会
2022年3月18日、東京・新宿で5つのモデル事業の発表会が行われた。各自治体職員の発表はオンラインでライブ配信され、多数の自治体からの参加があった。
発表会の様子。発表者への質問は、Slido (オンライン会議やイベントなどで、リアルタイムに質問やアンケートを実施できるWEBサービス) で行われ、オンラインで参加している自治体職員たちからかなり実務的な質問が集まった。
■BPR基礎知識、モデル事業の様子などを映像化
今後の横展開に活用できるよう、以下の4本の映像を制作した。
BPRをやってみたい。職員さんが自ら動きたくなる映像を目指す
長良木 靖史さま
世の中には「BPRって何?」という方も、まだたくさんいらっしゃいます。映像制作にあたっては、BPRを全く知らないという方でも学ぶことができ、さらに、自分から「BPRをやってみたい!」と思っていただけるような内容を目指しました。ただ映像を見て勉強するのではなく、これを土台に自分たちの職場でBPRを行い、同僚の皆さんと知識やノウハウを共有しながら職場全体に広げていただくことが大切だと思います。
そのため、忙しい皆さんが隙間時間を利用して簡単に学べるよう、1つのテーマを7、8個程度のコンテンツに分割し、それぞれが3~5分ほどで視聴できるようにしています。
また、映像は、マインドセットの解説から始まり、次にBPRで業務を抜本的に改革した上でデジタル化するSaaSツールの導入という構成になっています。そして、最後にモデル事業としてBPRを実施した自治体の実践例を紹介していますので、職員の目線から一連の流れを実感し、ご自身の自治体のこととして置き換えていただきやすいのではないでしょうか。
ぜひ、多くの自治体の皆さんに視聴いただき、ご自身の職場で役立てていただきたいと思います。
今後の展望
本当のBPRの意味に気づいてほしい
BPRやDXという言葉を知っている方でも、人によってその捉え方や温度感に差があるように思います。目の前の課題を解決するためにシステムを導入することが、BPRやDXだと思っている方もいるのではないでしょうか。しかし、大規模なデジタルツールを使わず、ちょっとした日常の業務の進め方を変えるだけでも、できることがあります。
例えば、今までは3つの課の職員さんが別々に担当する業務のフローを作っていたけれど、それを話し合って共通したフローにするだけでも、業務が効率化する可能性はあります。今回のモデル事業を実施して、そうしたことにも気づいていただけたのは良かったと思います。自治体の皆さんから「良かった」「来年もやってほしい」というお声をいただけたこともうれしかったです。
本事業は2021年10月にキックオフしてから約半年の期間で発表会まで行うという、とてもタイトなスケジュールでした。その中で、モデル事業の自治体の皆さんもいろいろな考えがあり、課題もたくさん出てきましたが、それらをきれいに整理できたと思います。また、横展開するための映像コンテンツも良いものができたと思っています。
東京都から全国の自治体へ、BPRをさらに広げていく
モデル事業を実施した自治体の皆さんは、忙しい中でBPRを行っていますから、映像制作に協力いただくのは難しいと思っていました。しかし、実際には突然のインタビュー依頼などにご快諾いただき、貴重な生の声をたくさんいただくことができました。本当に素晴らしい映像コンテンツに仕上がったと思います。
自治体業務の本格的なBPRはこれからです。バックオフィスやワークフロー業務など、内部に目を向ければ改善する必要のある業務プロセスはまだまだ多くあります。この映像コンテンツで、多くの自治体がBPRに取り組むきっかけになれば良いなと思っています。