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自治体の窓口業務のDXを推進!~住民と職員双方に優しい、瑞穂町の窓口DX施策とは?~
2024/03/19
少子高齢化による人口減少や労働力不足を背景に、全国の自治体では業務のデジタル化が課題となっています。限られた人員と予算の中でいかに地域住民に質の高いサービスを提供するのか、また、デジタル活用によってどのように職員の業務効率化を図っていくのか。
このような課題の解決に貢献できるよう、KDDIは「多摩地域における行政のデジタル化」を支援する東京都市長会と連携し、BPR(業務改革)の実施を含めた行政手続のデジタル化・窓口DXの実現に取り組んでいます。
今回は、本取り組みに参加され、窓口DXを進める瑞穂町デジタル推進課の水村探太郎さまにお話を伺いました。
デジタル技術で自治体の業務を変革する「自治体DX」とは
自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、自治体がデジタル技術やデータを活用し、地域住民の利便性向上を目的に行政サービスの最適化を目指す取り組みです。自治体におけるDX推進の意義については、総務省の「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」において、次のように述べられています。
「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(2020年(令和2年)12月25日閣議決定)において、目指すべきデジタル社会のビジョンとして、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」が示された。
(中略)
このビジョンの実現のためには、住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割は極めて重要であり、自治体のDXを推進する意義は大きい。
総務省『自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.2版】(3.2MB)』
このようなデジタル社会のビジョンを実現するため、行政サービスを担っている自治体がデジタル技術を活用して「住民の利便性向上」につなげ、また、デジタル技術やAIなどの活用によって「業務効率化」を図り、行政サービスの更なる向上を実現していくことが求められています。
背景と課題
今後の社会に向けて、いち早く課題に向き合う
瑞穂町企画部デジタル推進課 課長
水村探太郎さま
日本の人口減少は、瑞穂町にとっても大きな課題です。
ほとんどの自治体は、社会が高齢化していく中で、行政サービスの内容や質を維持できるのかという不安を感じていると思います。今回、東京都市長会さまの窓口DXの取り組みに手をあげたのも、この状況に危機感を持っていたからです。
2030年、2040年と時が経ってから窓口DXに取り組むより、今から始めていち早くPDCAサイクルを回したい気持ちがありました。
関係部署だけでなく役場全体で前向きに取り組む
先進自治体の事例において、窓口DXによって住民満足度が上がるという話は聞いていたので、どのようなプロセスで推進していくのかという興味はありました。その一方で、最初は中身が何も見えないまま取り組みを始めた状態でしたから、自分たちに本当にできるのかという不安も感じていました。
ただ、役場全体に「DXに取り組んでいかなければいけない」という共通認識はあったので、デジタル担当の職員だけでなく、窓口担当の職員も一丸となって取り組んでいこうと決意した形です。直接担当でない部署からも、「この部署にも同様の手続があるから、見直しの対象になるのでは?」と情報をもらうこともありました。皆が前向きな気持ちで、DXのスタート地点に立ったのです。
瑞穂町×東京都市長会×KDDIによる「窓口DX」の取り組み
<取り組みの概要>
今回の取り組みでは、住民が町外から引っ越してきた時に窓口での手続が必要になる「転入届」を起点に、それに伴う窓口の合計20手続を見直し、業務のデジタル化を推進。窓口で同じ内容を何度も記入させない「ワンスオンリー」による住民目線での利便性向上を目指した。
<窓口DXを推進するための「BPR」を実施>
「BPR(Business Process Re-engineering)」とは、現在の業務プロセスを細かく分解し、問題点を分析して抜本的に再構築すること。瑞穂町のBPRは、「転入届」の受付業務を含む20手続(主要6手続と付随する14手続)について、下記のステップで行われた。
<窓口DXツールの導入~実施まで>
BPR後に窓口DXツール「ゆびナビぷらす」を導入。これまで窓口を訪れた住民は、届出の内容によって異なる窓口で同じ内容の申請書を何度も記入する必要があったが、デジタルツール導入により、一度入力した内容はQRコードでほかの申請にも引き継げるようになり、手続の簡略化を実現した。
瑞穂町のホームページまたは受付窓口に用意されているQRコードをスマートフォンで読み取ると、「ゆびナビぷらす」のトップ画面にアクセスできる。必要項目の入力が終わると、申請用のQRコードがメールに送られてくるので、役所の窓口でそれを提示して手続を行う。住民は窓口で申請書を書く必要がなく、職員は申請書を度々チェックする手間が省けるだけでなく、記載ミスを防ぐこともできる。
スマートフォンに送付されたQRコードを窓口で提示。デスクに設置されたタブレットで内容を確認後、窓口で記入済みの申請書を出力し、受理となる。申請書以外に手続が必要な窓口の一覧が出力されるので、住民は記載に従って申請を進めれば、申請漏れがなく、何度も役場を訪れずに手続を完了できる。また、必要な持ち物も手続ごとに表記される。
自治体BPRの基礎から学んだことが職員の力に
BPRの実施は初めての挑戦でしたが、「As-Isフローとは何か」、という基礎からしっかり教えていただけたことが非常に大きかったです。最初にBPRやDXを進めていく工程を提示していただき、変更箇所もKDDIと相談しながら進めることができたので、デジタル推進課の担当からもプロジェクトが進めやすかったと聞いています。
また、職場の理解をさらに深められるように、BPRの研修を受けた担当がわかりやすい形で実務の作業に落とし込んで、職員にアドバイスをするよう工夫していました。
外からの情報も参考に組織で取り組む
窓口DXツール「ゆびナビぷらす」がどういうものかわかってくると、改めて具体的な疑問点も出てきます。ほかの自治体はどのようにしているのか、見学に伺うこともありました。KDDIを含む支援事業者からも「ほかの自治体はこうしていますよ」などさまざまな助言もいただき、「この部分の手順は省いても大丈夫なのか」、「そういう方法もあるんだ」と、外からいろいろ教えていただくことで、業務の見直しがさらに進みました。
最初はトップダウンで窓口DXの推進が始まりましたが、皆が前向きな姿勢で取り組み、「試しにほかの手続でもデジタルを活用した申請を取り入れてみてもいいか」と意見を出してくれる職員もいます。ボトムアップで現場から追加提案の声が次々上がるのは、職員の中にもいい循環が生まれている証です。
住民満足度95% まだ伸びしろがある
実際に窓口を利用された住民の皆さまにアンケート調査したところ、「オンラインでスムーズに手続できた」、「何度も入力する手間がなく便利」、「手続時間が短くなった」といったご感想をいただき、満足度95%という高評価をいただきました。
中には改善につながる声もありました。ただ、その内容というのも「事前申請できることを知らなかった」「事前申請を知っていたら使いたかった」など、多くが利用に前向きなものでした。
これは、まだ伸びしろがあるということ。事前周知を工夫して住民満足度95%を上回るよう、町のホームページなどで案内しているところです。
今後の展望
申請対象とするライフイベントを増やし、さらなる住民サービス向上を目指す
瑞穂町の窓口DXはまだスタートしたばかりです。実施から日が経つごとに職員も機器の操作や新たな運用に慣れていくため、今後はさらにスピードアップを図ることができるでしょう。
今のところ、「転入届」のみですが、今後は色々なライフイベントの申請を増やしていきたいと考えています。
「ゆびナビぷらす」は、申請された方に手続の必要な窓口をすべてご案内できるツールです。そのため、職員一人ひとりの経験やスキルに頼らず、窓口サービスを高水準で平準化することができます。役場を訪れた住民が皆、時間や質の差がなく同じサービスを受けられるのは、とてもいいことです。これからも、住民の皆さまの利便性を高められるよう、DXを推進していきます。
BPRの考え方を、役場の中に浸透させる
「窓口DX」の実施によって住民満足度95%という目に見える成果を得ましたが、それ以上に12名の職員が今回の一連の取り組みに参加し、BPRの基礎から教えていただいたことが、とても大きな成果だと感じています。部署異動などで、それぞれがまた違う場所でBPRの考え方を伝えていくことで、役場全体のBPRに対する意識がさらに強くなると思います。
瑞穂町では2022年度に「DX推進方針」を作成し、現在デジタル化の実施計画について検討しているところです。デジタル推進課として、現在は全職員を対象にデジタルセキュリティ研修を行っていますが、ゆくゆくはBPRも含めた研修ができたらと考えています。
官民連携で自治体DXを推進する
今回の取り組みを通して、KDDIのファシリテートが非常に長けていると感じました。BPR、窓口DXツール導入、RPA導入(システムの自動化)は支援事業者が別だったので、それぞれ個別に対応していると、どのタイミングで何をすれば良いかがわからなくなってしまいます。両者の間をKDDIがうまく調整してくれたのは、とてもありがたかったです。
これからは、自治体の業務も官民連携で最適化していく時代です。私たちのわからないところは専門知識を持っているところに相談し、サポートをいただきながらDX推進をさらに加速したいと思います。