- KDDIホーム
- 企業情報
- 地域共創(Te to Te)
- 地域共創の取り組み事例
- 地域のデジタル化の基礎固めに取り組む福岡県豊前市 シニア層向けスマホ教室を開催
地域のデジタル化の基礎固めに取り組む福岡県豊前市 シニア層向けスマホ教室を開催
2024/03/22
スマートフォン(スマホ)が普及したことで、コミュニケーションや情報入手など、日々の生活の利便性が高まりました。スマホを住民サービス向上や地域のデジタル化の基盤にと考えている自治体も少なくないでしょう。その際に課題となるのが、年齢が上がるにつれてスマホの利用率が低下傾向にあることです。シニア層の「端末の使い方がわからない」「用語が難しい」「習得の機会がない」といった声に応え、総務省のデジタル活用支援推進事業を活用し「シニア層向けスマホ教室」を開催した福岡県豊前市の取り組みをご紹介します。
背景と課題
シニア層にスマホをもっと身近なものにしてもらいたい
豊前市役所 総務部 デジタル化推進室長
木戸亮一さま
福岡県の東部に位置する豊前市では、総務部にデジタル化推進室を設置し、デジタル活用による住民向けサービス向上に取り組んでいます。
「公民館長さんや地域の区長さんとの会話のなかで、デジタル化にあたっては、大前提として住民のスマホ活用が必要だという話がありました。しかし実際のところ、スマホを日常的に使えるシニア層の方は限られているという声が多く聞かれました」と話すのは、豊前市役所 総務部 デジタル化推進室長の木戸亮一さまです。
シニア層にとってスマホは、それまでの電話とはまったく異なる形状・使い方であることが利用率の上がらない理由だと木戸さまは話します。
「機器のすべてが画面で、タップやフリック入力で操作するスマホは、『どこを押せばいいの?』とシニア層は戸惑ってしまうのです。『電源の入れ方もよくわからない』という方も大勢いらっしゃいます。また、スマホ操作を教えてくれる人が身近にいないという方も少なくありません。行政としては、住民へ情報をお届けする手段などにスマホを活用したいですし、インフラとしてのスマホの重要性は今後ますます高まると思います。そのためにも、まずはシニア層の方々にスマホを身近なものにしてほしいと常々考えていました」(木戸さま)
KDDI×豊前市による取り組みの流れ
自治体の負担が少ない「デジタル活用支援推進事業」を活用
豊前市役所 産業建設部 商工観光課 企業立地係
西村憲さま
木戸さまがそう考えていた時にKDDIが提案したのが「シニア層向けスマホ教室」です。
豊前市とKDDIは、以前から地域共創の取り組みを行っていました。豊前市役所 産業建設部 商工観光課 企業立地係の西村憲さまは、「商工観光課が主幹となって、関係人口を増やすための取り組みを進めてきました。KDDIは地域共創に積極的に取り組んでいるので、その活動のなかで『次に何ができるだろうか?』と相談し提案してもらったのが、シニア層向けのスマホ教室の企画でした」と振り返ります。
KDDIが提案したのは、総務省のデジタル活用支援推進事業の「地域連携型」施策で、民間主体で携帯電話事業者や地域のICT企業が地方自治体や公共団体へ講師などを派遣するというものです。国が予算を付けて推進しているため自治体側の金銭的負担が実質的になく、総務省への各種申請や講師派遣の調整などの運営は民間企業(豊前市のケースでは、KDDI)が行うため、自治体側での実務作業も少ないというメリットがあります。
「シニア層にスマホの便利さを知っていただくには、まずは基本操作を習得いただく必要があります。シニア層のスマホユーザーを増やしたいと考えていた市としても、喜んで実施することにしました」(木戸さま)
こうして、豊前市が公民館などの会場手配と広報活動、参加者の募集と受付を担い、KDDIが総務省への申請や講師およびアシスタントの派遣を担うという役割分担でシニア層向けスマホ教室がスタートしました。
25回にわたってスマホ教室を開催、応募倍率は3倍以上
豊前市では、シニア層がメインターゲットであることから、大規模開催ではなく地区ごとに集まるような小規模で数多く開催する方がよいだろうと判断し、市内の7施設で合計25コマのスマホ教室開催を決めました。1回あたりの参加人数は8人までとし、募集の告知は紙で配布する市報で行ったところ、参加定員人数の3倍以上も集まるほどの反響がありました。
「参加者が使うスマホの通信事業者はどこでもOKです。応募した方々の話を聞くと、『スマホで何ができるのか、まずはそこから知りたい』という声が多いようです」(木戸さま)
インターネットの使い方やSNSの使い方などの教材が用意され、参加者は講師の説明を聞きながら自分のスマホを操作します。また個別相談の時間では、よく理解できなかった部分を聞き直したり、自分がやりたいと思っていたことを質問できます。
講師が座学や個別相談に対応
使用した教材
シニア層向けスマホ教室を開催する時、大きなハードルになるのがスマホ独特の「用語」です。
「『タップって何?』と参加者のほぼ全員が疑問に思います。『(画面内のボタンを)押す』『(操作したい箇所に)触る』など、ありふれた言い方に置き換えて説明することが大切ですね。コミュニケーションの入り口である用語でつまずくと、限られた時間内では質問もできなくなり、そこで諦めてしまいます。わかりやすい用語、教材を用いることが、なにより理解の助けになります」(木戸さま)
木戸さまは、スマホ教室の実施により地区内にスマホが得意な人が増えることで、お互いに教え合う文化が醸成されることも期待しています。スマホ教室は開催の回数に限度がありますが、「スマホのことなら、あの人に聞けばいい」という人が各地区に増えることで、人と人とのつながりも緊密になります。
「スマホのことを教えてほしくて久々に住民同士が集まった、というケースもありました。スマホをきっかけとして、地域交流が活性化するのは良い効果です。シニアの方々にとって新しいツールを使って自分のできることが増え、楽しみながら学べることはいい刺激になります。かしこまった座学だけではなく、座談会のようにワイワイしながら教え合えるようになると、雰囲気が良くなります」(木戸さま)
今後の展望
市からの情報発信、地域の商業活性化にもスマホが貢献
豊前市役所 産業建設部 商工観光課 課長
井上由美さま
豊前市役所 産業建設部 商工観光課 課長の井上由美さまは、市からの情報発信や地域商業の活性化にとってもスマホの役割は大きいと話します。
「紙で掲示・配布される市報は、若い世代にはあまり読まれなくなっています。行政も公式SNSアカウントなどを情報発信に活用すべき時代となりました。市外向け・市内向け、どちらの情報発信においても、スマホの役割は大きくなっていきます。デジタル活用の格差が世代間の分断にならないようにする必要があります」(井上さま)
また、井上さまは、電子マネーの普及など地域商業のデジタル化においてもスマホは不可欠だと考えています。
「例えば、市民のスマホ活用が進めば、スマホで地域振興券を使えるようにするなど、地域の商業者も潤う施策がとれるようになります。そうした循環を生み出すためにも、行政によるスマホ教室開催の推進は必要なことだと思います」(井上さま)
さらに木戸さまは、「スマホは、情報伝達や商業振興はもちろん、防災や市民の安全などのアプリを展開していくためのインフラにもなります。その第一歩として、これからも多くのシニア層がスマホを使えるようになるよう努めていきます」と展望を語ってくれました。
KDDIではこれからも、自治体の皆さまとともにデジタルデバイド(デジタル格差)解消に注力してまいります。
シニア層向けスマホ教室 ご参加者の声
「スマホを買ったものの、使い方が分からなかったので勉強会開催を知って飛び込んでみた。用語は難しいが、カーナビ、SNSは使ってみて便利さがわかった。知人にもどんどんスマホ利用を勧めてみたい」
「私は85歳。勉強会には2回参加して、東京の二人の息子と写真を送り合えるくらいになってきた。モノの注文もできるし、スマホはいろいろなことができるんだなと感心している」
「スマホの使い方を教えてくれる人がおらず、今までは表示される通知の消し方もわからなかったが、勉強会で疑問が解決できてうれしい。特に音声入力を教えてもらえたのはありがたい。いままで電話とメールだけで十分と思っていたが、検索で調べものができるのは便利。電車の時刻表とか、すぐにわかるようになった。加入している生命保険会社のアプリも使いたいし、次は決裁サービスアプリやフリーマーケットアプリに挑戦したい」
「勉強会の内容はすぐに役に立つ。公民館でやってもらえると、興味が湧いて使ってみようという気になるし、基本操作を教えてくれるのはありがたい。次回は嫁さんも連れてきたいね。海外旅行をしたいので、翻訳アプリを使ってみたい」
「勉強会でSNSの使い方を教えてもらえたので、初めて写真の送付ができた。友達から写真を送ってもらうばかりだったが、これからは自分からも送信できる。配布された教材も分かりやすく書かれていて良い。持ち帰って自宅で復習できるからね」
「勉強会で教わって、なんとなく使えるような気分になった。さっそく娘にSNSでメッセージを送ったら『いいね!』とスタンプが返ってきてうれしかった。自分の子どもに質問すると『こんなこともわからないの?』と言われて癪に触るが、スマホ教室なら初心者同士なので安心して講師に質問できる」