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デジタル人材育成を目指す求職者向けリスキリングプログラムの提供

2024/03/29

愛知県豊田市 デジタル人材育成に向けた市民のリスキリング講座

さらなる人材不足や業務のデジタル化が進んでいく昨今、愛知県豊田市では、今後役立つデジタルスキルの習得意欲のある求職者向けに、2023年12月からの3カ月間、『「オンライン×みんな」で学ぶデジタルスキルアッププログラム』を実施した。KDDI株式会社が本案件を受託し、スクーと連携してプログラム内容の構築から研修の実施までを手がけ、豊田市が目指す求職者のデジタルスキルの向上に向けた持続可能な学びを、学習者への伴走支援によって実現した。その取り組みについて、豊田市、スクー、KDDI 3社の担当者にお話を伺った。

背景と課題

デジタル人材を育成し、産業を活性化したい

人口約42万人の豊田市は自動車関連産業が盛んな「クルマのまち」であり、世界をリードするものづくりの中枢都市だ。今回のプログラムの企画担当者である豊田市役所の川瀬様は、同市の課題と研修実施の目的についてこう語る。

豊田市役所 産業部産業労働課
川瀬 貴大様

豊田市 川瀬様:近年、デジタル技術の急速な発展・業務改善、DX・デジタル化などでこれまでにない大きなビジネス変化が生じています。これらは、当市の基幹産業である自動車産業をはじめとする労働市場においても、デジタル人材への需要の高まりを加速させています。しかしその一方で、今後、慢性的な人手不足が起こることが予想されます。そこで、その人手不足の対応策の1つとして、主に求職者をターゲットとしたデジタルスキルに関するスキルアップの機会を提供し、人材育成だけでなく就職マッチングも行うことで地域産業の発展を目指し、今回の事業を企画しました。

本プログラムでは、受講者のニーズに応えられるようにレベルの異なる3コースが設けられた。デジタルの基本を学ぶ「IT活用コース」、サイト制作など実践的な応用を学ぶ「WEBデザインコース」、そしてより専門的な「プログラミングコース」。

レベルの異なる3コース

集合型形式をベースとしながら、自身の学習スピードに合わせていつでも学べる環境と、伴走による個別最適の学び、受講者同士の相互学習の機会を提供したいと考え、事業者を募った。

メンターの導入で学びの満足度を高める

この公募に着目したのがスクーだった。スクーは「世の中から卒業をなくす」ことをミッションに掲げ、2011年に設立。社会人教育のオンライン学習のプラットフォームとして事業をスタートし、現在では企業、高等教育機関や地方自治体へも事業領域を広げている。スクーの社長室で地方創生事業を担当する円谷様は、豊田市への提案を検討する上で、ある仕組みを実現できないかと考えた。

株式会社Schoo 社長室
円谷 幸子様

Schoo 円谷様:オンライン学習を活用した研修の場合、単に受講IDを付与して、『あとは自由に学んでください』という方法もありますが、どこまできちんと受講するかで個人差が出てしまいます。スクーでは過去にも他自治体で市民向け社会人教育の提供に携わったことがあるのですが、その講座では受講者に伴走しながら学びのアドバイスをする『メンター』を設けました。講座期間の途中で受講者の学習状況を聞き、メンタリングすることで、結果として受講者の満足度がとても高かったのです。

円谷様は、この豊田市のプログラムでもメンタリングがとても有効な仕組みだと考えた。KDDIとスクーは2019年に業務提携契約を締結しており、以前から両社で情報交換をするとともに、KDDI社内の研修でも「Schoo」のコンテンツを活用していた。今回のプログラムでリーダーを務めたKDDIの全(じょん)は、プロジェクト参画への理由をこう語る。

KDDI株式会社
地方創生推進部
全 詠九(じょん よんぐ)

KDDI 全:KDDIでは地域課題の解決に向けて、地域の課題と向き合い、さまざまな取り組みを実施しています。社内には経験豊富なベテラン社員がいます。長年培ってきた社会人としてのノウハウを今回のメンタリングに活用できると考え、スクー様と共働でプロジェクトに公募することを決めました。

こうして豊田市の「求職者向けデジタルスキルアッププログラム」を受託したKDDIは、スクーと連携し、全体のスケジュール構築やプログラム内容などカリキュラムの詳細を詰めていった。KDDIからはリーダー 全のほか、3コースにメンター各1名、サポーター1名の総勢5名がプロジェクトに参加することが決定した。

豊田市×Schoo×KDDI デジタルスキルアッププログラムの取り組み

対面での交流で学習意欲を高める

2023年12月、プログラムがスタート。受講者は3コース合わせて約30名。30代~50代が中心でとりわけ40代が多かった。受講動機として、今後の求職活動に向けて高度なスキルを身に付けたいという声が多く、子育てが落ち着き何かスキルを身に付けてチャレンジをしたいという方からの関心が集まったことがうかがわれる。12月6日に実施されたキックオフミーティングでは、受講者がリアルで集まり、対面でプログラムの目的や詳細についての説明が実施された。

プログラムスケジュール

豊田市 川瀬様:各プログラムの受講のほか、これから一緒に学ぶ受講者同士の交流のため、対面実地でのキックオフミーティングを行いました。当日は、思っていた以上に受講者同士の間で交流が生まれ、とても有意義な受講者間での学びの場となりました。キックオフでの雰囲気や活発な受講中での様子を踏まえ、受講後の振り返りとして、受講者とメンターが学びの成果を伝え合う場としての「ミートアップ」を実地とオンラインのハイブリッドで実施することとしました。

ミートアップ風景

集合オンライン研修で学び合う環境を提供

12月11日からはオンライン学習がスタートし、その講義のほとんどで「集合オンライン研修」が導入された。これは、講義を視聴する時刻をあらかじめ決めておき、参加した受講者がチャット機能を通じて意見や感想を入力し、共有できるというものだ。

集合オンライン研修 イメージ

この機能は、スクーの法人向けオンライン研修で従来から社員同士の学びの促進のために活用されていたが、同じコースを選択した受講者たちがリアルに集まらなくても、共に学び合い、学習意欲を高めて持続的な学びを促すため、豊田市の研修でも大きな柱として位置付けられた。

丁寧なヒアリングで適切な助言を実現

集合オンライン研修を受講できなくても、受講者は好きな時間に視聴して個人で学習することも可能。しかし、受講するかどうかは個人に委ねられるため、「学習進捗サポート」機能を設け、KDDIの管理担当者が受講者ごとの受講状況を把握し、各コースのメンターと情報を共有できるようにした。メンターは学習進捗や学びの傾向を理解した上で、2024年1月中旬から受講者と個別のメンタリングを行い、柔軟なアドバイスで持続的な学びを促していった。

豊田市 川瀬様:メンタリングを活用した伴走支援により深い学びが実現したことに加えて、受講したカリキュラムの難易度が合わない場合には、「Schoo」上にあるほかのコンテンツを組み合わせて、個別最適な学びへと学習内容にカスタマイズすることができました。まさに、スクー様のサブスク型学習コンテンツを活用したメリットでしたね。

KDDIでは受講者に応じたカリキュラムを調整する上で、学習進捗の把握に加えて、有意義なメンタリングとなるよう、周到な準備をしていた。

KDDI 全:受講者がどのような状況で何を目指して学んでいるかといったことも含め、丁寧なヒアリングをしないと有効な提案はできないと考え、質問項目についてはかなり議論を重ねました。また、想定される質問についての回答や提案を用意するなどメンタリングの筋書きをメンター陣で共有したのです。その準備があったことで、より深いことが聞けて、適切なアドバイスができたと思います。

学びを行動につなげた受講者のみなさん

メンタリングを経て後半に入り、2月29日のミートアップで3カ月間のプログラムが終了した。リアルとオンラインのバイブリッドで実施された「ミートアップ」では、プログラムでの学びについてメンターを交えての振り返りが行われた。受講者の中には、学んだ知識を生かして、SNSを始めたり、ホームページ制作に挑戦した方もいた。

「ミートアップ」へ参加した2名の受講者に、プログラムの感想を聞いた。

受講者 久保敷さん

久保敷さん:私は栄養関係の仕事をしているので、料理講座の宣伝に活用できればと思い、SNSやホームページについても学べる「WEBデザインコース」を受講しました。みんなで学ぶ集合オンライン研修では、「がんばって学ぼう!」という気持ちになれました。個人学習は家事の合間やお風呂など、隙間時間をうまく活用して視聴しましたね。メンタリングの機会もあったので、チャットでは聞けない学習の疑問などをメンターの方に相談できたのはよかったです。

要望としては、デザインしたものを発表するなど、学びを実践する場があったらよかったと思いました。個人的には学んだことを生かしてチラシをデザインしてみました。とても素晴らしい勉強の機会だったと思います。

受講者 松本さん

松本さん:昨年、定年退職しましたが、人生100年と言われる時代、新しいことに挑戦しようと思って受講しました。ワープロや表計算のソフトは使っていましたが、ほんの少しの機能しか使っていないことを知り、デジタルスキルの基礎を学べる「IT活用コース」を選びました。集合研修では講義を聞きながらチャットを打つのが難しかったですね。ほかの受講者のコメントを「そういう見方もあるのか」と思いながら見ていました。

プログラムでは、ChatGPTについての授業もあり活用方法についても学べました。デジタルという今まで知らなかった社会の現象を理解し、これからの人生で社会とつながっていく上で有意義なプログラムでした。

手応えと今後の展望

伴走支援がオンライン学習の学びを深める

一連のプログラムを終了した豊田市の川瀬様はその成果をこう語る。

豊田市 川瀬様:オンライン集合研修で受講者が学びあえたこと、そして、学習進捗の管理やメンタリングで伴走支援ができたことで、受講者は学びを深められたと思います。実際に、受講者からのアンケートでも『もっと学びたいです』『学ぶなかでやりたいことが見つかりました』というご意見もいただきましたので、この研修を実施してよかったと実感しています。今後の展望としては、こういった研修を受講してスキルを身につけた方々と豊田市内の企業とをマッチングして、市内産業の振興につながるような仕組みを構築していきたいですね。

今回の取り組みは、スクー、そしてKDDIにとっても大きな知見となった。

Schoo 円谷様:人材育成の課題を抱えている地方自治体は数多くあります。その解決の一助にスクーのプロダクトやネットワーク、ノウハウが活用できることを実感できました。十分な対策を取られていない自治体にも、スクーからの情報発信を促進して、課題解決を加速していければと思います。

KDDI 全:リスキリングは企業で働いている方だけでなく、一般の方々にも大きなニーズがあることに気づきました。学習機会が限られている方々にスクー様の質の高いサービスとコンテンツを横展開しながら、地域の課題を解決するチャンスがあるのだと強く実感しました。

豊田市のデジタルスキルの学習プログラムは、スクーをはじめとする先端のスタートアップ企業と自治体がつながり、共に地域の課題解決に取り組んでいく好事例となった。

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