- KDDIホーム
- 企業情報
- 地域共創(Te to Te)
- 地域共創の取り組み事例
- 地域経済活性化のためにDXを推進し、未来を拓く~銀行DXを担える人材を育成する、八十二銀行「DX人材育成プログラム」~
地域経済活性化のためにDXを推進し、未来を拓く~銀行DXを担える人材を育成する、八十二銀行「DX人材育成プログラム」~
2024/03/29
さまざまな業界でDXの必要性が叫ばれる昨今、地域経済の要となる地方銀行においても社会の変化に対応した変革が求められています。2023年の銀行法改正により、金融機関の業務範囲や出資の規制が大幅に緩和され、銀行の役割は非金融の分野へも広がりを見せています。地方銀行として、地域経済を活性化していくために何ができるのか。その1つの答えとしてDXに取り組む八十二銀行で、プロジェクト推進の役割を担うデジタルトランスフォーメーション部(以下DX部)の山岸和広さん、耳塚大樹さんにこれまでの取り組みや、今後についてお聞きしました。
背景と課題
銀行の業務・組織のデジタル改革を推進する人材を育成する
八十二銀行
デジタルトランスフォーメーション部 調査役
山岸和広さま
山岸さま:当行では創立90周年となる2021年に「中期経営ビジョン2021」を公表しました。そのテーマの一つに「業務・組織のデジタル改革」が掲げられ、デジタル改革=DXを進めていくことが明確に定められました。その一環としてDX部が設立され、従前から進めてきた業務やサービスのデジタル化をより加速させていくことに加え、DXを進めるための人材育成の取り組みを開始しました。
DX部による人材育成として最初に取り組んだのは、全行員に対してDXに関する基礎知識を身につけてもらうことでした。さまざまな事業者の研修プログラムなどを収集・検討する中で、KDDIには多くの知見と研修プログラムの経験や実績があったことから、内容や進め方を相談し、2021年度から「DX人材育成プログラム」を利用した研修を開始しました。
2023年度からは、デジタル改革のコアとなる人材育成を目的に、本部の企画担当者の中から各部2~3名を抽出し、「デジタルビジネス企画研修」を実施しています。この研修を検討する際も、多くの事業者の情報を集めましたが、やはりKDDIとディジタルグロースアカデミア(※1)が行っている研修内容が我々と一番親和性が高いと感じ、引き続き依頼させていただいています。
金融機関にもサービス・商品のデジタル化は不可欠
八十二銀行
デジタルトランスフォーメーション部
耳塚大樹さま
耳塚さま:DX部に着任するまでは支店の営業担当として法人、個人のお客さま対応をしていました。その頃の当行では、お客さまに紙の契約書にサインやハンコをいただく手続も多く、世の中ではネットバンキングなど非接触の対応が普及していく中で、自分のやっていることと世間とのギャップのようなものを感じるようになりました。私自身、当行のデジタル化が進むべきだと思っていましたし、そういう仕事に関わることができないかと考えました。
DX部が設立された当時は、内部にノウハウがなかったので、私を含め8名が外部企業に出向させていただくことになりました。KDDIも含め、複数の企業でそれぞれがお世話になり、地方銀行では経験できない業務に従事する機会をいただいただけでなく、銀行の外をみることで、当行の状況を見つめ直す機会をいただきました。
DX部に帰任した後の私の役割は当行における新事業・新サービスの企画構想でした。出向中には新たにビジネスを企画提案するような機会がなかったこともあり、2023年度のデジタルビジネス企画研修の第1期生として受講しました。
八十二銀行×KDDIによる「DX人材育成」取り組み事例
「八十二銀行 DX人材育成プログラム」
<取り組みの概要>
八十二銀行では、2021年度からDX実現に向けた取り組みを開始。KDDI、ディジタルグロースアカデミアと共に、教育プログラムを実施している。
2021年度は全行員を対象にDX適性を可視化するアセスメントを実施。2022年度には、全体の底上げを図るためDXの基礎的な講座が実施された。2023年度は、本部行員の中でも各部署の企画担当者を対象とし、各部から2~3名を抽出してDXスキル習得のための「デジタルビジネス企画研修」を実施している。
- KDDI・ディジタルグロースアカデミアによる八十二銀行 DX人材育成プログラム 学習フロー
2023年2月9日、「デジタルビジネス企画研修」の研修2期生の最終回として「DXプロジェクトワーク」の発表会が行われた。このワークでは、研修参加者が3~4人で1グループとなり、それぞれ仮のお客さまを想定してDX化による提案を行う。4チームのうち、2チームは大手ハウスメーカー、残る2チームは鉄道会社を仮のお客さまとし、業務改革や新事業などを提案した。
教科書では学べない模擬提案発表
耳塚さま:「デジタルビジネス企画研修」を受講して一番印象に残っているのは、やはり最終の「DXプロジェクトワーク」です。デジタルを活用してお客さまの経営ビジョンに資するような提案をしていくのですが、企画して提案するだけで終わらず、提供した商品やサービスによって得られるデータを何かに活かせないかというところまで発想するというのは、いい勉強になったと思います。また、チームで話をしていると、自分の思い込みに気づけたり、自分にはない発想に出会えたり、テキストやセミナーで学んだりすることとは違う体験ができました。
銀行業界も銀行法の改正により規制が緩和され、今まで以上に広い範囲で事業を営むことが可能になりました。今回の研修においても、仮想のお客さまに対し事業案やサービス案を提案するだけでなく、それを利用するエンドユーザーのデータの活用まで考えたことはこれからの業務に活かせるところだと思っています。
お客さま目線の重要性に気づくことが大きな変化
山岸さま:この研修プログラムがとても秀逸だと思うのは、最初はDXの提案とは何か、デザイン思考から始まって、データの必要性、アジャイルの開発を学んだ上でプロジェクトワークという実践的な提案を体験するという点です。研修でデータが大事と言われても、自分になぜそれが必要なのか、腑に落ちていない人もいると思います。研修が進み、プロジェクトワークという段階になって「だから必要なのか、ここでつながるんだ」と、腹落ちする。この経験がとても大きいと思っています。研修によってお客さま目線で物事を考える重要性に気づいた姿を見ると、以前とは変わったなと感じます。
今後の展望
銀行業務に近いメニューの開発にも期待したい
耳塚さま:「デジタルビジネス企画研修」のようなワークショップ形式の研修は、自分で実践しようとしても経験できないものなので、会社として用意することが大事だと思います。当行でも引き続き、この研修を続けていただきたいと考えています。
また、今後のプログラムについてKDDIに期待したいのは、もう少し銀行実務に寄せた課題設定があるといいと思っています。研修に参加しているのは、当行本部の各部署にいる企画担当なのですが、ひと口に「企画」と言っても、銀行の業務運営を統括する部署、銀行業務の改善に取り組む部署などさまざまです。私のようにデジタルに近い部署ばかりではないので、そういうメンバーが馴染みやすそうなメニューがあると、実務とのリンク効果も得られるのではないでしょうか。今後はそういう工夫も考えられたらと思います。
地銀だからこそ、地域活性化のためにできることがある
山岸さま:当行は、2026年に長野銀行との合併を控えています。この合併によって地域の銀行としてより大きくなり、行員の数も増える。これは、より地域活性化に貢献するために行われるものであり、DXを進めることも同じだと思います。長野という地域の強みをしっかり生かし、課題から目を逸らさずに解決していくために、DXによって新たな価値と利益を生み出していくことが重要です。
日本の業界の中で金融業界、こと銀行ほど情報を持っている存在はないと思います。私たちが網羅している地域のお客さまの情報、地域の企業の皆様の情報を活用することで、お客さま同士をマッチングすることもできますし、お客さまの良さを対外的に発信していくこともできます。お客さまが個々では発想できないようなことも、お客さまと私たちが一緒に考えることで実現できる。これは私たち銀行だからできることです。だからこそ、魅力的な企画を発想する力が必要、先入観を捨てた提案力が必要です。当行の行員たちもDXを進める中で力をつけていかなければいけないと思っています。
DX人材育成プログラムのうち、「デジタルビジネス企画研修」については、本部の企画担当者のほぼ全員が今後受講できるようにすることを考えています。新たに「デジタルDX人材の中期育成方針」なるものを策定し、その中で、どのような役割に対してどういうスキルを身につけてもらうのかを定めました。そのスキルを具体的に身につけていくための取り組みはKDDIの知見も借りながら進めていきたいと思っています。