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お城好きに向けた体験型NFTを開発し、関係人口の創出に取り組む

2024/08/19

愛媛県の西部に位置する宇和島市では人口減少に伴う地域の活力低下が課題となっています。外部から地域の活性化を後押しする「関係人口」の増加を目指し、KDDIとの実証実験として取り組んだのはNFTの活用による観光資源の魅力発信でした。宇和島城をテーマとした体験型NFTという全国でも事例の少ない取り組みを担当された宇和島市産業経済部商工観光課の椙山(すぎやま)孝章さまにお話を伺いました。

背景と課題

地域活性化に向け関係人口の増加に期待

宇和島市 産業経済部 商工観光課
椙山孝章さま

椙山さま:宇和島市の人口は2005年の合併時は約9万2600人でしたが、現在は約6万8000人まで減少しています。産業や教育、生活面など、地域の活力に低下がみられ、学校ではクラスの数が減り、伝統的な「宇和島牛鬼まつり」でも牛鬼(うしおに)の担ぎ手や、イベント参加者の数が、年々少なくなっている印象を受けます。

人口減少の時代に入った今、地域の活力を生む新たなエンジンになり得るのは「関係人口」(※1)の増加です。市外の方に、宇和島市の地域やコミュニティにさまざまなかたちで関わってもらい、いわゆる「おせっかい」を焼いていただく。外部の活力を取り込む関係人口には大きな期待を寄せています。

  • ※1)
    「関係人口」とは地域と多様に関わる人々を指す言葉です。さまざまな課題に直面する地方圏では、変化を生み出す人材が地域に入り始めている例も多くあり、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が、地域づくりの担い手となることが期待されています。

交流人口のきっかけとなる観光の魅力と課題

椙山さま:私の担当する観光セクションでは、関係人口の増加に着目しながら、その手前の「交流人口」として、観光で宇和島市に訪れる方々を増やすことが重要だと考えています。

宇和島市には、現存12天守(天守閣が現存する全国12カ所の城)のひとつである宇和島城や、重要文化的景観に選定されている遊子水荷浦の段畑など、多くの観光資源があります。加えて、魚類の養殖、真珠の養殖、柑橘類の栽培など産業と食文化が豊かです。しかし、情報発信や受け入れ態勢の整備にはまだまだ改善の余地があります。松山市の道後温泉や高知県など全国的にも知名度の高い観光地から一歩足を伸ばしてもらえるような訴求が必要だと考えてきました。

宇和島市×KDDIの関係人口創出の取り組み

NFTを活用して宇和島城をお城好きに訴求する

椙山さま:観光を通じた来訪者の増加を模索していた時にKDDIから実証実験の提案がありました。市のシンボルである宇和島城とNFT(※2)を絡めて特別な体験を提供し、お城好きのコアなファンに宇和島市を訪れてもらい、関係人口の増加につなげるという企画です。

宇和島城が多くの人を惹きつける背景には、天守や石垣、郭といった築城の文化的価値はもとより、江戸時代やそれ以前からも紡ぐ歴史と文化の物語を多く有することにあると考えています。お城好きの方々はその魅力を理解し、知的好奇心を刺激する発信をしてくれるので、宇和島市の魅力発信を強化する上でとても有効な企画だと思いました。

正直なところ、NFTについての知識は乏しかったのですが、お城にまつわるリアル来訪特典付きNFTの販売は、全国的にも珍しい取り組みであることもあり、その露出効果にも期待をして提案を受けることにしました。それと、日頃行っている観光PRではリーチできていないNFTの購入層に対する新たなPRチャンネルを設けられる点も魅力的でした。

  • ※2)
    NFT(Non-Fungible Token)とは、ブロックチェーン上で発行され、唯一無二性を証明することができ代替が不可能なトークンのことを指します。

ツアー前から旅アトまで充実のメニューをラインアップ

新規ウィンドウが開きますhttps://market.alpha-u.io/collections/uwajima

今回の実証実験では、宇和島城にまつわる5つの体験を用意し、KDDIのNFTマーケットプレイス「αU market」で発売しました。体験内容は「夜間開城ガイド付きツアー」「お城インスタグラマーの現地ツアー参加権」「天赦園でのお茶会」「甲冑着付け体験」「特別甲冑を着用したお城まつりへの参加権」などです。

どれもまったく新しい企画という訳ではなく、過去に実施したものをアレンジしました。観光セクションのマンパワーも限られているので、現実的に実施できる内容にしたのです。

これらの企画で最も手応えがあったのが、「お城インスタグラマーの現地ツアー参加権」です。KDDIからの提案で、お城系インフルエンサーとして活動する「お城インスタグラマーKAORI」さんに依頼し、ツアーを企画しました。特典については次の権利を企画しました。

  • [1]
    事前:KAORIさんと学芸員による宇和島城の解説のオンライン視聴権
  • [2]
    当日:現地ツアーへの参加権
  • [3]
    事後:オンライン座談会への参加権
  • [4]
    事後:ツアーのアーカイブ動画の視聴権
  • [5]
    事後:デジタルサインとKAORIさんとの2ショットNFT

事前に宇和島城についてオンラインで学びつつ、ツアーに参加し、終了後も座談会に参加するとともにツアーのアーカイブ動画を見ることができる「旅アト」の体験も折込みました。また、写真のNFTは購入時のアカウント登録で設けた「αU wallet」に登録されますので、宇和島城を訪れた思い出が刻まれます。NFTはただの体験チケットのように一度使って終了ではなく、体験後も手元に残るので宇和島市とのつながりを証明できる役割を持っているそうです。このツアーは、四国以外の関東から中国地方まで幅広い地域の方々に参加いただきました。

城だけでなく市の魅力を満喫する観光ツアーを設計

椙山さま:現地ツアーではまず、午前中をかけて宇和島城を見学した後、KAORIさんとの2ショットを撮影。昼食は市内でも人気の高い「ほづみ亭」で宇和島を代表する郷土料理「宇和島鯛めし」をいただきました。午後は、大名庭園として名高い「天赦園」、宇和島藩を治めた伊達家の貴重な文化財を展示する「伊達博物館」を見学した後、「道の駅 みなとオアシスうわじま きさいや広場」で地元特産品をお買い求めいただき解散となりました。きさいや広場では、KAORIさんお薦めの地元グルメもあるので、参加者のみなさんは食べるのを楽しみされていたようです。宇和島城だけでなく、市の魅力も巡るツアーとしてルートを設計しました。

お城インスタグラマーKAORIさんコメント「参加者は宇和島の魅力を発見してくれる!」

KAORIさん:宇和島城の魅力は昔ながらの道が残っていて、建物の礎石が多く残っているところです。江戸時代を感じられるお城として素晴らしいと思います。

宇和島市は地元グルメも魅力です。鯛飯が有名ですが、知られていないグルメがたくさんあります。ツアーの最後に訪れた道の駅の「さちコロッケ」は絶品です。それと、アコヤガイの唐揚げですね。事前準備で訪れた時に食べて、インスタで紹介していたので、フォローワーのみなさんも「食べたい!」とコメントしてくれました。

ツアー参加者のほとんどは中部地方より東側から来ていて、みなさん前泊しています。ツアー前には、私がお薦めした商品を買ってくれて、地域の観光消費にも貢献してくれています。参加者もきっと宇和島の魅力を発見してくれるだろうから、みんなで共有して盛り上げていきたいと思いますね。

今後の展望

NFT×観光資源の試みで見えてきたこと

椙山さま:まず、今回の実証実験では、NFTを利用したことで、宇和島市との接点がない方々にアプローチでき、そういった方々がお城をきっかけに足を運んでいただけたとしたら最高の成果だと思います。改めて、地域の観光資源とNFTは親和性が高いことを実感する機会になりました。

そして、リアル体験特典付きNFTという手法を用いたことで、当初の狙い通りお城好きのコミュニティから「宇和島城に行きたい」というインプレッションをもらうことができ、実際に足を運んでもらうことができました。

今回の企画で、宇和島市の資源に関心のある外部の方々と接点を持ち、交流人口を増やせることが分かりました。さらに、地域に関わるような体験を組み込めていければ、関係人口まで発展させられます。例えば、毎年5月に開催している「伊達なうわじまお城まつり」の企画運営に参加する権利をNFTの特典として組み込んでいくこともできます。スタッフとして参加すれば、地域の人々とのつながりと交流が生まれ、関係人口に発展していけるのではないでしょうか。

今後の課題はデジタルアートです。今回、購入者の手元に残るNFTは写真でしたが、デジタルアートとして価値のあるものとすることでNFTをアートとして収集するコレクターの興味を惹くこともできるでしょう。価値の高いアートに貴重な体験をプラスできれば面白い実績が生まれると思います。

自治体の課題をテーマとした企業との共創は行政運営のモデルになる

椙山さま:今回の実証実験の最大の成果は、民間企業であるKDDIと共創ができたことです。行政だけでできることには限界があります。しかし、今回のように地域課題というテーマを共有し、宇和島市とKDDIがパートナーとして歩調を合わせて一緒に仕事をしていくと、実現できることの範囲が大きく広がると実感できました。

それぞれが主体性を持って、お互いの能力を発揮しながらプロジェクトをやり遂げていく。市の職員数も減少の一途をたどる今、民間企業や外部人材との共創は、これからの行政運営のモデルになると思います。

  • 内容は掲載当時の情報です。現在とは情報が異なる場合があります。

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