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地域活性化を図るためスケールアップを目指す起業家を支援するアクセラレーションプログラムを併せたビジネスプランコンテストを開催
2024/09/12
起業家を発掘し成長を支援するビジネスプランコンテストとは
地域活性化を図るため、スケールアップを目指す起業家の発掘と起業支援に力を入れる高知県では2024年2月にビジネスプランコンテスト「Kochi Start-up Pitch」を開催しました。同事業のパートナーであるKDDIは、人材育成のノウハウを生かしたプログラムを提供。県主催のビジネスプランコンテストを担当された高知県産業振興推進部産業イノベーション課の田所紗智子さまにお話を伺いました。
目次
背景と課題
若者が活躍する場を創るための新たな産業の創出と起業支援
高知県産業振興推進部産業 イノベーション課
田所紗智子さま
田所さま:高知県は、高校卒業後、関西や関東の大学や専門学校に進学するために県外へ出る若者がとても多くいます。しかし、卒業後に高知県に戻りたいと思っても、学んだことを生かせる会社が少ないというのが現状です。Uターンや移住の希望者も同様で、高知県で暮らしたくても働く場が限られているという課題があります。
そこで高知県では、若者が活躍できる場を生み出すために、新たな産業の創出と起業支援に力を入れています。
この業務を担う産業イノベーション課には、ビジネスの基礎知識から応用・実践力までを学べる「土佐まるごとビジネスアカデミー(土佐MBA)」、次世代の産業創造を目指すプロジェクトを推進する「産学官民連携室」、そして起業支援のプラットフォームである「こうちスタートアップパーク(KSP)」を通じて県内の起業を支援するチームがあります。このKSPは2017年度にスタートして以来、起業を希望する方の準備段階に応じて個別相談や講座、交流会などを実施しています。
起業家を発掘し成長を支援する
田所さま:KSPに相談に訪れる方の大半は個人事業主などの小規模ビジネスを検討されている方であり、雇用創出までのスケール感のあるスタートアップ企業の創出にはつながっていないという課題がありました。そこで、成長意欲のある起業家を掘り起こすことを目的に、2023年度の事業としてビジネスプランコンテストを開催することとしました。
賞を決めるだけのビジネスプランコンテストだと、その場は大いに盛り上がってもなかなか起業につながらない場合がありますが、あくまで今回の目的は高知県内で起業して、成長してもらうことです。そこで、コンテストの応募者には、学びの機会を提供するとともに、ビジネスプランをブラッシュアップする「アクセラレーションプログラム」を併せて実施するかたちにしました。
この事業を実施するにあたって、運営を委託する企業を広く公募し、審査の結果、KDDIとチャレンジすることになりました。この事業は、民間企業の力を借りて地域を活性化するという狙いがあったので、KDDIの提案は新たなチャレンジを行う上で、期待する内容だったと思います。
高知県×KDDIのビジネスプランコンテストの取り組み
アイデアのみで参加できる学生部門で学生起業家の誕生を促す
田所さま:一連の事業は、2023年の10月から12月にかけてビジネスアイデアを考えるワークショップや起業家講師とのメンタリングを含むアクセラレーションプログラムを行い、2024年2月にビジネスプランコンテスト「Kochi Start-up Pitch」を開催するという流れで組み立てました。コンテストの前に、参加者が専門家から起業家精神を学び、起業に対する意識とビジネスプランの質を高めることで、よりレベルの高いコンテストになると考えたのです。
コンテストのテーマは、高知県内の「地域課題の解決」や「地域資源の活用」を目指すビジネスプランです。今回のコンテストを機に学生起業家を生み出したいという思いがあったので「学生部門」を設け、「一般部門」と合わせて2つの種別にしました。こうちスタートアップパーク(KSP)にも学生が相談に来ることはありましたが、学生の積極的な掘り起こしができていなかったことから、より門戸を広げる意味で学生部門はビジネスのアイデアのみで応募でき、事業収支などは問わないかたちとしました。
学生向けにコンテスト参加を支援する特典を企画
田所さま:参加者募集にはとても苦労しました。特に学生向けのアクセラレーションプログラムについては、大学などでも起業に関する科目が多数実施されていることから、日々の授業や課題、アルバイトで忙しい学生たちが、私たちが実施するアクセラレーションプログラムに参加する動機を生み出すのが難しかったのです。
そこで、KDDIと協議してプログラムの内容の一部を変更し、学生向けにコンテストの「プレエントリー特典」を設けることにしました。エントリーシートの作成指導とメンタリング(個別指導)を受けられるプログラムです。すると、多くの学生から応募があり、そのほとんどがコンテストにも参加しました。学生に合わせてKDDIが丁寧にメンタリング指導をしてくれたので、コンテストに向けて学生たちの意識が高まっていきました。改めて、学生の状況に歩み寄るかたちで、プログラムを設計する大切さを感じました。
一般部門のアクセラレーションプログラムに関しては、一定数の応募があり、受講された方の一部は、コンテストへも参加してくれました。県外の方も多く、高知県とのつながりを感じて、「起業するなら高知県もあり!」と考えている方が多くいることを知り、とてもうれしく感じました。一方で、アクセラレーションプログラムで講師を務めてくださった方は、日頃、私たち主催の講座では出会えないグローバルな視点を持った方だったので、参加者をもっと集められればよかったという思いはあります。
熱気のあるビジネスプランコンテストが実現
田所さま:2024年2月10日、ビジネスプランコンテスト「Kochi Start-up Pitch」が開催され、事前審査を勝ち抜いた学生部門6組、一般部門6組が発表を行いました。登壇者たちは、コンテストの直前にも起業家講師とのメンタリングによりプランを磨いていましたので、コンテストの当日はとても熱を帯びた発表となりました。
審査員との質疑応答も盛んに行われました。学生たちの多くは、大学などで学んでいる研究テーマや日常の暮らしで感じている問題意識を基にビジネスのアイデアを考えており、ビジネスのプロである審査員たちから「事業に結びつけられる」「そのアイデア、欲しい」といった肯定的な意見をもらえたことで、自らの視点にビジネスチャンスがあることを実感できたようでした。
審査の結果、「最優秀賞」「部門優秀賞(一般と学生)」「企業賞(4社5賞)」が決定し、各賞が贈られました。一般部門の受賞者の中には応援に来ていた家族と一緒に泣きながら喜んでいた方もいました。改めて、人生を賭けて起業を目指す方々の思いの深さを感じ、日々の業務でも真剣に向き合わないといけないと背筋が伸びる機会となりました。
今後の展望
コンテストの経験を今後の起業支援につなげる
田所さま:コンテストの終了後、一般部門で登壇された数名がすでに起業を実現しました。学生たちの中にも、起業を目指す仲間として交流を続けながら、具体的に起業の準備を進めている方がいると聞きます。
こういった成果があった一方で、やはり参加者集めに苦労したのは事実です。実際にコンテストをしてみて、県が主催する場合の難しさも痛感しました。それゆえ、2024年度は、県が主催するのではなく、民間の取り組みを支援するかたちに切り替えました。スピード感を持ってさまざまな方法にチャレンジするフットワークの軽さも大切にしていきたいと思います。
私たちの役割は、起業を希望される方への支援や成長意欲のある起業家の発掘と成長支援です。今後も民間企業や団体の皆さまとの協働により、高知県内の地域活性化に向けて、起業支援に力を尽くしていきたいと思います。