1. KDDIホーム
  2. 企業情報
  3. 地域共創(Te to Te)
  4. 地域共創の取り組み事例
  5. 防災DXツール誕生!災害関連情報を一元的に可視化し意思決定を迅速に

防災DXツール誕生!災害関連情報を一元的に可視化し意思決定を迅速に
~東京都市長会主催の防災DX推進検討ワークショップ体験インタビュー~

2025/01/30

東京都市長会 防災DX推進検討ワークショップ体験インタビュー

毎年のように地震や台風、集中豪雨など甚大な自然災害が発生している今、地方自治体の防災業務でもDX化の必要性が高まっている。KDDIでは、携帯電話の通信基地局管理から生まれた情報処理技術を応用し、「防災マップボード」を開発。2024年秋に東京都市長会が実施する防災DX推進検討ワークショップに協力し、自治体職員の皆さまに本ツールを活用した意思決定のDX化について体験いただいた。今回はワークショップに参加された立川市防災課の丸山浩史さまに、自治体の抱える防災の課題と、KDDIが実用化に取り組む防災マップボードを使用された感想を伺った。

背景と課題

地図上で複数部署の情報を表示できれば意思決定の速度は上がる

立川市 市民生活部 防災課 防災推進係 係長 丸山浩史さま
防災課の統括として、消防団の管理運営、災害時の被災者支援、地域防災の設備管理や組織支援など、すべての事業に携わっている。

丸山さま:立川市は、埼玉県飯能市名栗地区から東京都青梅市、府中市へと至る「立川断層帯」の上に位置しています。立川断層帯地震が起きると震度は7クラスに達し、壊滅的な被害が予測されています。また、市内を流れる多摩川は水害のリスクがあり、堤防の決壊が起きた場合、立川市内も浸水すると想定されています。JR立川駅は3線が乗り入れるターミナル駅なので、災害時には膨大な数の帰宅困難者が発生することは確実です。

立川市の人口は18万人ですが、防災訓練への参加者は年間のべ1万人程度で、シニア層を中心に参加する方は固定化しています。また市の職員からも「何かあったら防災課が対処してくれる」という声が多く聞かれます。大規模な災害が起きれば、若い世代や子育て世代も被災します。そして能登半島地震でもそうだったように、あくまで自助と共助が中心。災害に備える大切さを幅広い世代に伝えられるよう情報発信のアプローチを工夫しながら、防災意識を高める取り組みを進めています。

今回、東京都市長会のワークショップで災害時の情報収集と一元的に可視化することの重要性を学びました。現在は部署ごとにさまざまな情報を管理しており、紙で管理しているものも多くあります。災害が起きると、複数の部署が情報を持ち寄り、Google マップなどから地図の画像を取り込んで印刷し、各部署の情報を手作業で貼り付けていくしかありません。そうした情報をデータ入力できて、一元的に可視化した地図をクラウド上で作成できるシステムがあれば、効率化が図れて、意思決定のスピードも上がるはずだと考えています。

東京都市長会とKDDIの取り組み

防災DXツール活用を通じた意思決定を体験できる2日間のワークショップを開催

東京都多摩地域26市の市長で構成される「東京都市長会」(該当項目へジャンプします※1)では令和6年度から防災DXの推進に取り組んでいる。2024年秋には、多摩地域30市町村の職員を対象とした東京都市長会が実施する防災DX推進検討ワークショップを、KDDIが自社のDX技術を活用する形で企画・運営の面で支援した。立川市の丸山さまも受講した同ワークショップの担当者であるKDDIの利岡寛也に、実施の経緯と目的、具体的なプログラムの内容について聞いた。

KDDI 経営戦略本部 地域共創推進部 事業推進2G 利岡寛也
民間企業、県職員を経てKDDIに入社。地域共創推進部として自治体と共に、地域課題を解決する提案・支援を行っている。

KDDI 利岡:東京都市長会では、「多摩地域における行政のデジタル化の取組」を推進しており、令和6年度はテーマの1つとして「防災DX実証事業」があります。市長会では自治体の担当者向けに、今後のツール導入の参考になるよう、さまざまな防災DXツールを体験できるトライアル利用や、防災に関わる研修・講義を実施しています。その研修の一つとして、KDDIが開発した「防災マップボード」を活用するワークショップの企画・運営支援をさせていただきました。

防災マップボードとは?

防災DX推進を目的として、1枚の地図上にさまざまな災害関連情報を重ね合わせて表示できるツール。リアルタイム情報(雨雲レーダーデータやライブカメラ映像など)と、自治体独自のハザードマップデータや避難者数データなど、災害関連情報を一元的に可視化できる。Web上で地図を表示させる技術をベースに、1つの地図に多数の情報を重ねて表示できるハイパーレイヤリング技術(KDDI特許技術)や、多数の情報を高速で処理できるエッジコンピューティング技術を採用し開発した。

防災マップボードイメージ図

本ツールでは、雨雲レーダーデータやライブカメラ映像などのリアルタイム情報に加えて、自治体独自のハザードマップデータや避難者数データなど、災害関連情報の一元的な可視化が可能。

KDDI 利岡:ワークショップは2日に分けて実施しました。参加者は自治体の防災担当者とDX推進担当者です。1日目は防災の基礎的な知識を学習した後、防災マップボードの操作研修を行いました。また、能登半島地震の際に実施した仮設住宅設営候補地選定の事例を参考に、本ツールの基本操作の学びへとつなげていきました。
約1カ月後に実施した2日目のワークショップでは、「災害シナリオ」を活用した実習を行いました。まず、「中山間部において集中豪雨による土砂災害が発生して道路が寸断した。被災者の誘導や備蓄物資の配布にどのような対応を取るか」というシナリオに基づき、グループごとに防災マップボードを使って情報収集を行い、現地に適切な指示を出す意思決定を体感いただきました。

さらに、立川断層帯地震が発生し、市街地では火災も発生した中でターミナル駅に滞留した大量の帰宅困難者に、どの一時滞在施設を案内するか、というシナリオのワークショップも実施しました。東京都の多摩地域は広く、中山間地域もあれば都市部もあるため、2パターンの災害シナリオを用意し、参加された自治体の皆さまに自身の自治体で起こり得る事態として感じていただけるようワークショップの設計を行いました。

  • ※1)
    東京都市長会は、多摩地域の26市が連絡協調を行い、各市の行政の円滑な運営・向上を目指しつつ、地方自治の発展につなげることを目的に、多摩26市の市長が任意に組織する団体です。

対談:災害復旧支援ツールの今後の展望と課題

災害シナリオに沿って臨場感のある意思決定を体験

KDDI 利岡:今回のワークショップでは両日ともに参加者から満足度100%の評価をいただきましたが、ぜひ、丸山さまの率直な感想を聞かせてください。

丸山さま:2日目の災害シナリオのワークショップでは、複数の災害関連情報を地図上で可視化して、意思決定を行うことが有効だと実感しました。災害状況、被災者の人数、周辺の公共施設などを防災マップボードで表示できるので、同じグループのメンバーと協議しながら対応策を考えることができました。まさに実践に近いものです。

防災マップボード画像 IoTカメラからの取得情報

こういったツールで情報収集と整理ができれば、実際の災害が起きた時でも、現場の状況把握のために担当職員が危険な道を通って行かなくても、現場にいる職員や消防団のリーダーに指示が出せます。とても実践的だと感じました。

KDDI 利岡:災害シナリオは、一般社団法人分散型防災データ利活用協議会にも監修をしていただいたため、被災と復旧の実例に基づいたリアリティのある内容になりました。KDDIではこのツールを使って地図上に通信基地局の位置を示し、運用状況などの情報とリンクさせています。ひとつの地図上で複数の情報を一元的に可視化するこの技術について、協議会の先生方から「自治体職員が持つ、防災情報の一元化・可視化に役立てられないか」と助言していただいたこともあり、自治体向けの防災DXツールとしての応用が始まったのです。

丸山さま:防災マップボードの感想は、とにかく動作が軽く、動きが良いことです。パソコン1台で、ここまで情報を可視化ができるのはすごいなと思いました。1日目のワークショップの後、参加者全員に防災マップボードのIDとパスワードを発行してもらえたので、自宅のパソコンでも操作してみました。用途は異なりますが、ほかの防災システムと比較しても、操作性の軽さや表示スピードはかなり速く、表示する情報の種類を増やしてもスピードが落ちず、サクサク動くことには驚きました。

KDDI 利岡:このツールの元となるマップ技術は日々の基地局管理業務で使っているので、やはりスピードは追求していますね。それと、災害時には通信スピードが落ちますから、それでも表示が遅くならないよう設計されています。

丸山さま:防災課では、市内にある消火器、消火栓、消火水槽の設備を管理する業務もしていますが、現在は紙の地図で位置情報を整理しています。このツールを使って、デジタルの地図上に消火設備の位置を表示できれば、新たにどこへ設置するかの検討に使えますね。

KDDI 利岡:プロットした地点間の距離も簡単に表示できますから、そういった業務には役立ちそうですね。

自治体での実用化の鍵は平時から多くの部署で活用すること

丸山さま:防災マップボードはとても魅力的ですが、私が使えたのはワークショップの指導員の方が丁寧にサポートしてくれたからです。自治体に導入した場合、「誰がデータを入力し、ツールの運用を覚えるのか?」という問題が生じることは確実です。自治体職員は異動も多く、日々の業務に追われています。新たなパソコン業務を覚えることを敬遠する職員もいると思います。導入したのはよいけれど、誰にも使われない状況はもったいないです。

KDDI 利岡:災害の起きていない平時での活用、防災課以外の活用は考えられますか?

丸山さま:十分に考えられます。防災課では、先ほどの消火設備の管理に使えます。私が以前、所属していた健康推進課であれば、クリニックや病院の位置、新生児のいる世帯数と保健指導の要員を可視化して、どのエリアに新生児対応の人員を投入すればよいかが分かります。このツールは部署を超えた情報の共有とコミュニケーションの促進にもつながります。そのためには、各部署が持っている地図のデータを入力するためのルールづくりが必要です。

それぞれの部署が日々の業務で防災マップボードを使えれば、いざ災害が起きた時も、道路や下水道、防災といった異なる部署の地図データを持ち寄り、このツールで一元的に可視化できます。口頭で伝えるのではなく、地図上の画像として見ることができれば、部長クラスの責任者は「この道路が閉塞しているのか、ではここから復旧しよう!」といった意思決定ができると思います。データ入力は、若手や中堅の職員が担い、上長は簡単な操作だけで意思決定が可能になる。その体制が理想的です。

KDDI 利岡:理想的な運用方法ですね。まずは、多くの部署の方々に使っていただけるようなサービス設計、導入の際にはワークショップ形式の研修と継続的なサポート体制が必要だと理解できました。2025年秋を目指して商品化を進めていきますので、今後もアドバイスをお願いします。本日は、ありがとうございました。

  • 内容は掲載当時の情報です。現在とは情報が異なる場合があります。

サステナブルな地域共創を目指すKDDIの取り組みとは

地域共創(Te to Te)

KDDI地域共創アカウント

最新情報をお知らせ!
  • X