京都府舞鶴市でIoTを活用したスマート防災を開始し、小規模河川の流出解析と潮位変動の影響評価を実施
京都府舞鶴市
独立行政法人国立高等専門学校機構舞鶴工業高等専門学校
KDDI株式会社
2020年7月22日
京都府舞鶴市 (市長: 多々見 良三、以下 舞鶴市)、独立行政法人国立高等専門学校機構舞鶴工業高等専門学校 (所在地: 京都府舞鶴市、校長:内海 康雄、以下 舞鶴高専)、KDDI株式会社 (本社: 東京都千代田区、代表取締役社長: 髙橋 誠、以下 KDDI) は、近年、頻繁に発生している高潮・豪雨による浸水被害に対応するため、IoTを活用したスマート防災事業 (以下 本事業) を舞鶴市で2019年1月から開始し、2020年7月22日に小規模河川の流出解析と潮位変動の影響評価を報告しました。
<平成30年7月豪雨による市街地浸水被害>
<志楽川上流部に設置された水位計>
三者は、2018年12月に地域活性化を目的とした連携協定を締結 (注) し、その取り組みの一環として、防災をテーマにICT/IoTなどの先端技術を活用した解決策を協議してきました。
舞鶴市では、2013年、2017年、2018年に、災害救助法の適用を3度も受けるなど、台風や集中豪雨による浸水被害が頻発しており、浸水家屋被害だけでも合計約2,800戸にのぼりました。
このような被害に対して舞鶴市は、国土交通省や京都府と連携して、さまざまなハード整備や、宅地嵩上げ助成、各戸貯留施設補助などの対策を推進しています。
一方で、豪雨時における避難判断を行うための情報が不足しているという課題を抱えており、各者の知見を組み合わせた本事業を開始しました。
本事業では、舞鶴市が国や京都府との連携および市民への情報発信を実施し、KDDIがIoT水位計やドローンなどを準備し、舞鶴高専がこれらの機器を活用して小規模河川の流出解析を行いました。
今後も各者は、IoT/ICTなどの先端技術を活用したスマート防災事業を積極的に推進し、適切なタイミングとエリアでの避難情報発信による「安全で安心なまちづくり」を目指します。
詳細は別紙をご参照ください。
<別紙>
■背景
1. 舞鶴市について
舞鶴市は京都府の北東部を占め、京阪神から100km圏に位置します。北側は若狭湾に湾口を開いた舞鶴港が波静かな天然の良港を形成し、南東西の三方は自然豊かな山に囲まれており、東西に位置する2つの中心市街地と加佐地区、大浦地区など山間部などの周辺地域で構成されています。
また、東西の市街地には、伊佐津川、高野川、与保呂川、志楽川など複数の二級河川が貫通し、また周辺部である加佐地区には一級河川の由良川が貫通しています。
市街地を挟む海と山の距離が近く、山間部での降雨が短時間で市街地に到達し、河口部では舞鶴湾の潮位が河川水位に影響をもたらし、多くの浸水被害が発生していることから、市街地を流れる二級河川の情報をリアルタイムに収集し、タイムリーな発信が必要とされています。
2. 舞鶴市の取り組みについて
舞鶴市は2019年度から「舞鶴版Society5.0推進本部」を設置し、SDGs未来都市として民間企業や教育機関との連携やICTなどの先進技術の積極的な導入により、「心が通う便利な田舎暮らしができるまち」を目指しています。
近年3度も災害救助法の適用を受けるなど、台風などの際に浸水被害が頻発しているため、「ビッグデータ+AIによる街全体の効率的な見守り」の実現を目指して、舞鶴高専やKDDIと連携し取り組みを推進しています。
3. 浸水被害における防災上の課題
豪雨時において避難判断を行うために必要な情報が不足しており、避難情報発令までの時間短縮が課題となっています。特に市街地を流れる中小河川は降雨から水位上昇までの時間が短く、避難行動に必要な時間を確保するためには、正確な水位上昇の予測が必要とされています。
■実施内容
「舞鶴市東地区小規模河川の水位上昇に関する研究」を通じて、降雨・潮汐と河川水位の関連性を検討し、誤差の少ない流出モデルの再現を実施しました。今後は、今回検証した基礎的な解析結果と、IoT水位計などを活用した詳細なデータ計測を組み合わせ、高精度なシミュレーションを実現していきます。
1. 中小河川の流出解析
降水量と河川水位の関係を解明するために、東市街地の浸水被害の要因の一つである二級河川志楽川を対象に、タンクモデルによる流出解析を行い、数時間後の河川水位予測を行いました。
解析は既設水位計による過去の水位情報が存在し、潮位の影響を受けない中流部を対象に、被害が発生した平成16年台風23号、平成29年台風21号、平成30年7月豪雨の解析を行いました。
予測水位と実際の観測水位を比較し、誤差が少ない正確な流出モデルの再現ができました。
今後は、2020年3月に新設した上流部と下流部のIoT水位計も活用して複数箇所での検証を行い、高精度化を目指します。
<東市街地を流れる中小河川とセンサーなど:志楽川は地図右上>
<観測された河川水位と降水量から解析した河川水位の比較>
2. 気象予報を活用した水位予測
中小河川は雨が降ってから水位が上昇するまでの時間が短く、避難に必要な時間を考慮した3時間後の予測を行うには水位情報だけでは困難なため、気象予報から水位予測を行いました。
対象は平成29年台風21号の雨雲から得られる降水量とし、水位予測と実際の観測水位を比較し誤差が少ない良好な解析モデルである事が確認できました。
<気象予報から算出した1時間後と3時間後の河川水位の比較>
3. 潮位変動の影響評価
市街地の浸水被害には舞鶴湾の潮位の影響が非常に大きいため、その影響範囲を断面一次解析により確認しました。対象は台風による大雨と潮位上昇が重なり、大きな被害が発生した平成29年台風21号時の潮位66cmとし、河口から750m地点まで影響がある事が分かったため、今後は流速の測定を行い、潮位変動の空間的な影響の検討を行います。
■今後の取り組み
今回の水位上昇に関する研究結果と、データ測定を行うために設置したIoT水位計などを活用し、今後は下記の取り組みを実施します。
1. ドローンを活用した地形データの計測
ドローンを活用し詳細な地形データを計測し、細かな地形変化や河川構造物の影響を検討します。
<舞鶴高専生によるドローン測量の様子>
2. 氾濫解析シミュレーション
計測した詳細地形とIoT水位計や流速計から取得した詳細データを組み合わせて、内水・外水の氾濫シミュレーションを実施します。
今後も各者は多様な連携と協働により防災のまちづくりを推進します。
(参考)
■地域活性化を目的とした連携協定について
舞鶴市・舞鶴高専・KDDI が2018年12月に締結しました。本協定では、地域活性化を目的とした「産業の活性化に関する事項」「防災に関する事項」「スマートシティに関する事項」について、互いのノウハウを活かし各事項の課題解決と早期実現を目指しています。
<連携協定内容>
■KDDIの取り組み
KDDIは、これからも事業を通じてさまざまな社会課題の解決に取り組み続けるという決意をこめ、2030年を見据えたKDDIのSDGs「KDDI Sustainable Action~私たちの『つなぐチカラ』は、未来のためにある~」を策定しました。社会課題をリスクとして捉えるだけでなく、KDDIならではの強みを生かしたチャンスと捉え、5GやIoTなどを活用した地方創生や、途上国における低廉で高品質な通信サービスの提供など、事業として利益をあげながら、さまざまな社会課題の解決を図ります。
<命・暮らし・心をつなぐ「KDDI Sustainable Action」>
■KDDIの地方創生
KDDIは、SDGsの達成に向け、事業を通じて解決する社会課題の一つとして、地方創生および教育事業に取り組んでいます。人財育成、ICTを活かしたビジネスの知見やファンドを軸にした地域企業のサポートに加え、教育における地域格差を解消するための環境整備もあわせて推進していきます。
地域や企業とのパートナーシップにより、サステナブルなビジネスモデルを構築し、課題を継続的に解決できる「地域の明日」を創っていきます。
<KDDIが目指す地方創生の姿>