京都大学フィールド科学教育研究センター、KDDIによる芦生研究林保全とコロナ禍の学生教育を目的とした連携並びに、寄付贈呈式の開催について
~京都大学芦生研究林100周年を迎えて~
国立大学法人京都大学フィールド科学教育研究センター
KDDI株式会社
2020年10月22日
国立大学法人京都大学フィールド科学教育研究センター (センター長 徳地 直子、以下 京大フィールド研) とKDDI株式会社 (本社: 東京都千代田区、代表取締役社長: 髙橋 誠、以下 KDDI) は、京都大学芦生研究林の貴重な自然の保全と、新型コロナウィルス感染症予防対策下でのVRを活用した最先端な大学教育について連携します。
本年度は、京大フィールド研の森里海 (もりさとうみ) 連環学や芦生研究林の森林保全、教育・研究への支援のため、KDDIが「+αプロジェクト (※)」で積み立てたお金の一部 (50万円) を、京都大学芦生研究林基金を通して、2020年7月31日付で寄付しました。
芦生研究林では、新型コロナウィルス感染症のため、学生のフィールド実習が困難となっており、京大フィールド研は、KDDIが提供する「えらべるVR: ガイドVR-12K-」を活用し、KDDIと芦生研究林の教育コンテンツ作製を進めていきます。
次年度以降、新型コロナウィルス感染症の状況を勘案しながら、植生保護柵の設置や修繕、ジギタリスなど外来種植物の駆除等、KDDI社員有志によるボランティア活動を行う計画にしており、引き続き、京大フィールド研にKDDIが協力し、芦生研究林の保全に取り組んでいきます。
2021年4月に、京都大学芦生研究林は、100周年を迎えます。貴重な森ですが、盗掘やニホンジカによる植生衰退といった課題があり、豊かな森を取り戻すべく保全を進めています。また開かれた最先端の教育や研究フィールドとして発展させていくことを目標に、芦生研究林基金への寄付を募っており、100周年記念キャンペーンを2020年8月10日より実施中です。
今後、京大フィールド研とKDDIは、趣旨に賛同する行政、団体、企業等の協力を得ることも想定しながら、京都大学芦生研究林の保全と地域の活性化を目指していきます。
詳細は別紙をご参照ください。
<別紙>
■背景
近年、芦生研究林の貴重な植生が、個体数が増えたニホンジカの採食によって著しく衰退しています。植物だけではなく、昆虫や魚などの様々な生き物や、土壌、川の水にも影響がでてきており、生態系の危機的状況となっています。
そこで研究者・関係機関と協力しながら、植物の保護柵を設置し、ニホンジカの捕獲を行ってきました。また、近年は、一般市民や企業からの寄付を受け付ける芦生研究林基金、また市民ボランティア活動による植生保護やモニタリングを実施してきました。しかし、保護柵で守れているのは芦生研究林の面積の1%に満たない面積です。さらに生態系の回復力も低下してきています。
100周年を迎える芦生研究林は、次の世代にも豊かな森を引き継げるよう、さらに様々な方のお力をお借りして、保全に取り組んでいきます。2019年11月には、企業による森作りを進める京都モデルフォレスト協会と芦生研究林は覚書を締結し、協働して森づくりや生態系保全を進め、モデルフォレスト運動の普及啓発を進めることになりました。これを契機として、KDDIと京大フィールド研との連携が実現しました。
<芦生研究林の位置>
■本連携の概要
1. KDDI「えらべるVR: ガイドVR-12K- (※)」を活用した教育コンテンツ作製
京都大学では、新型コロナウィルス感染症のため、現地での実施が困難となったフィールド実習の補助的な教材として、KDDI「ガイドVR-12K-」を活用した教育コンテンツをKDDIサポートの元、作製しています。
また新型コロナウィルス感染症収束後も、デジタル世代である学生に対する効果的な教育プログラムに活用します。例えば、当該VRを用いて、森の見方を学んだ後、現地でのフィールド実習を実施することで、フィールドでの学習効果の向上が期待できます。また季節の移り変わり、樹上の生態系など、1回の実習では体験することのできない森の様子を、VRで疑似体験することで、多様な自然の見方を習得することができます。
<「ガイドVR-12K-」利用イメージ>
<京都大学にて、実際に学生がVRを活用した実習を行っている様子>
2. KDDI「+α (プラスアルファ) プロジェクト」による京都大学芦生研究林基金への寄付
KDDIは、KDDIの社会貢献活動「+αプロジェクト」により積み立てたお金の一部 (50万円) を、京都大学芦生研究林基金に2020年7月31日付で寄付しました。芦生研究林は、本寄付を、森林の保全と教育・研究の発展のために活用します。発表会当日には、「寄付贈呈式」を行います。
3. 芦生研究林におけるKDDI社員有志によるボランティア活動
KDDIでは、2021年度以降、新型コロナウィルス感染症の状況を勘案しながら、京都大学芦生研究林でのKDDI社員有志によるボランティア活動を計画しています。内容は、植生保護柵の設置や修繕、ジギタリスなど外来種植物の駆除等の実施を想定しています。
4. 京都大学芦生研究林100周年記念キャンペーン
2020年8月10日より京都大学芦生研究林100周年記念キャンペーンを実施中です。5,000円以上寄付された方には、台風で倒れた樹齢150年生以上の天然アシウスギのコースター等を返礼品としてプレゼントしています (キャンペーンは返礼品がなくなり次第、終了予定です)。
詳細は以下ご確認ください。
http://www.ashiu.kais.kyoto-u.ac.jp/asiu100th/#a1
<パンフレットはこちら>
(参考1)
■京都大学芦生研究林について
本研究林は、1921年、学術研究及び実地演習を目的として、旧知井村の九ヶ字共有林の一部に99年間の地上権を設定し、芦生演習林と称したことに始まります。2003年4月、フィールド科学教育研究センターの発足に伴い、「京都大学フィールド科学教育研究センター 森林ステーション・芦生研究林」と改称されました。2020年4月に新しく30年間の地上権契約を結びました。
京都市の北約35km、福井県と滋賀県に接する京都府北東部、由良川の源流域に位置し、面積は約4200ha (東京ドーム898個分相当) です。
近畿地方有数の面積の原生的なブナ林が残り、生物多様性の保全の面からも非常に重要かつ貴重な地域です。2016年に指定された京都丹波高原国定公園のなかでも特に保護すべき地域と指定されています。1000種 (変種等含む) を超える維管束植物が記録されており、そのうち約20%は全国あるいは京都府下で絶滅が危惧される種です。ツキノワグマ、カモシカなどの大型哺乳類を始め、ムササビなどの小型哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫など多数棲息しています。アシウアザミ、アシウテンナンショウなど新種・新変種として芦生研究林で初めて記載された種は58種に上ります。近年も、2010年に土壌動物のアシウハヤシワラジムシという新種が発見され、2019年に着生ランのフガクスズムシソウが北近畿で初めて確認されました。
年間約3,000人の学生や研究者が実習や研究のため利用しています。一般市民にも開放しており、年間約4,000~7,000人がハイキングやガイドツアーを楽しんでいます。
■京大フィールド研が進める森里海連環学
京大フィールド研では、2003年より森里海連環学 (もりさとうみれんかんがく) を提唱し、森から海までの物質や人を含む生物の繋がりを明らかにする研究に取り組んでいます。森里海連環学は気仙沼の牡蠣漁師である畠山重篤氏が唱える「森は海の恋人」に科学的な裏付けができないか、という発想から生まれ発展してきました。森里海連環学はSDGsの基盤といえるものでもあり、森と海はつながっていること、そして、人はそのつながりの中で在り方を考えなければならないことを再認識し、自然と人との持続可能な共存原理を考えていくものです。
提唱者である田中克名誉教授は著書の中で、森里海連環学とは「大学内の学問だけでなく、住民が人と人、人と自然、自然と自然のつながりのたいせつさに思いをはせ、人々が「力を合わせてみんなで生きていこうよ」という意識を共有しながら住民が進化させていく学問である」と紹介されており、京都フィールド研では、森里海連環学から生まれた研究成果を元に、社会の様々な主体とともに森里海のつながりやその分断について学び、持続可能な社会に向けた様々な活動を生み出す、社会連携活動を推進しています。
■KDDIの取り組み
KDDIは、これからも事業を通じて様々な社会課題の解決に取り組み続けるという決意をこめ、2030年を見据えたKDDIのSDGs「KDDI Sustainable Action~私たちの『つなぐチカラ』は、未来のためにある~」を策定しました。このたびの取り組みは、「暮らしをつなぐ~地方・都市の持続的発展~」に該当します。社会課題をリスクとして捉えるだけでなく、KDDIならではの強みを生かしたチャンスと捉え、5GやIoTなどを活用した地方創生や、途上国における低廉で高品質な通信サービスの提供など、事業として利益をあげながら、様々な社会課題の解決を図ります。
<KDDI Sustainable Action~私たちの『つなぐチカラ』は、未来のためにある~>
■KDDIの地方創生
KDDIは、SDGsの達成に向け、事業を通じて解決する社会課題の一つとして、地方創生および教育事業に取り組んでいます。人財育成、ICTを活かしたビジネスの知見やファンドを軸にした地域企業のサポートに加え、教育における地域格差を解消するための環境整備もあわせて推進していきます。
地域や企業とのパートナーシップにより、サステナブルなビジネスモデルを構築し、課題を継続的に解決できる「地域の明日」を創っていきます。
<KDDIが目指す地方創生の姿>