京都大学フィールド科学教育研究センター、KDDIによる
芦生研究林保全のための寄付贈呈式ならびに連携成果発表会を開催
国立大学法人京都大学フィールド科学教育研究センター
KDDI株式会社
2021年11月10日
国立大学法人京都大学フィールド科学教育研究センター (センター長: 朝倉 彰、以下 京大フィールド研) とKDDI株式会社 (本社: 東京都千代田区、代表取締役社長: 髙橋 誠、以下 KDDI) は、2020年度、京都大学芦生研究林の貴重な自然の保全と、新型コロナウイルス感染症予防対策下でのVRを活用した最新の大学教育について連携しました。
2021年4月に、京都大学芦生研究林は、100周年を迎えました。
その記念すべき年にあたる本年度に、京大フィールド研の森里海 (もりさとうみ) 連環学や芦生研究林の森林保全、教育・研究への支援のため、KDDIが「+αプロジェクト (注)」で積み立てたお金の一部 (84万8800円) を、京都大学芦生研究林基金を通して、2020年度に引き続き、2021年7月30日付で寄付しました。
2021年度の新しい取り組みとして、2018年12月に、KDDIと地域活性化を目的とした連携に関する協定を締結した舞鶴工業高等専門学校の協力を得て、京都大学芦生研究林の魅力を広めるためのVR動画を制作しました。
VR動画については、今後、2本以上の新作制作を行い、それらは、2022年の「京都大学創立125周年」を祝うイベントでの活用を計画しています。
また、2021年7月には、新型コロナウイルス感染症の状況を勘案して、小規模ながら、植生保護柵の修繕、ツルニチニチソウなど外来種植物の駆除など、KDDI社員有志によるボランティア活動を行い、芦生研究林の保全に取り組みました。
今後、京大フィールド研とKDDIは、趣旨に賛同する行政、団体、企業などの協力を得ることも想定しながら、京都大学芦生研究林の保全と教育研究の促進を目指していきます。
詳細は別紙をご参照ください。
<別紙>
■背景
近年、芦生研究林の貴重な植生が、個体数が増えたニホンジカの採食によって著しく衰退しています。植物だけではなく、昆虫や魚などの様々な生き物や、土壌、川の水にも影響がでてきており、生態系の危機的状況となっています。
そこで研究者・関係機関と協力しながら、植物の保護柵を設置し、ニホンジカの捕獲を行ってきました。また、近年は、一般市民や企業からの寄付を受け付ける芦生研究林基金、また市民ボランティア活動による植生保護やモニタリングを実施してきました。しかし、保護柵で守れているのは芦生研究林の面積の1%に満たない面積です。さらに生態系の回復力も低下してきています。
100周年を迎える芦生研究林は、次の世代にも豊かな森を引き継げるよう、さらに様々な方のお力をお借りして、保全に取り組んでいきます。2019年11月には、企業による森作りを進める京都モデルフォレスト協会と芦生研究林は覚書を締結し、協働して森づくりや生態系保全を進め、モデルフォレスト運動の普及啓発を進めることになりました。これを契機として、2020年、KDDIと京大フィールド研との連携が実現しました。
<芦生研究林の位置>
■本年度の連携成果の概要
1. 舞鶴工業高等専門学校生によるVR動画コンテンツ制作
芦生研究林は近畿有数の原生的な森林として有名で、年間約4,000~7,000人の一般の方にハイキングやガイドツアーを通じてご利用いただいています。しかし、近年は若者への認知度が低下しており、さらに新型コロナウイルス感染症によりガイドツアーの利用者数も伸び悩んでいます。芦生研究林の魅力をPRし、一般の方に芦生研究林の森を楽しんでいただくとともに、森林の植生回復や教育研究のための芦生研究林基金への寄付へのご協力を呼びかけていく必要があります。さらに新型コロナウイルス感染症が継続するなか、新たなデジタル森林教育コンテンツの開発を進める必要があります。そこで、研究林の自然を体験して頂けるようなVR動画を制作しました。
京都大学芦生研究林監修の元、KDDIによる各種制作上のサポートを行い、舞鶴工業高等専門学校に所属するHANDMADE部員 (学生) が制作を担当しました。
本年10月に、ガイドツアーにいざなう第一作目のVR動画を完成させ、来年3月を目途に、「シカ食害を訴える」VR動画、「芦生研究林の美しい四季を楽しむ」VR動画などの制作を計画しております。
これら制作したVR動画は、KDDIのVR視聴システムを使って、来年の「京都大学創立125周年」を祝うイベントでの活用を計画しております。
<オンライン制作会議の様子>
<初めて芦生研究林に訪問し撮影を行う舞鶴高専学生たち>
<VR動画 第1作目>
2. KDDI「+α (プラスアルファ) プロジェクト」による京都大学芦生研究林基金への寄付
KDDIは、KDDIの社会貢献活動「+αプロジェクト」により積み立てたお金の一部 (84万8800円) を、京都大学芦生研究林基金に、昨年度に引き続き、2021年7月30日付で寄付しました。芦生研究林は、本寄付を、森林の保全と教育・研究の発展のために活用します。発表会当日には「寄付贈呈式」を行います。
3. 芦生研究林におけるKDDI社員有志によるボランティア活動
<第1回 芦生研究林保全ボランティア活動の様子>
KDDIは、2021年7月に、新型コロナウイルス感染症の状況を勘案し、密にならないよう小規模な人数による京都大学芦生研究林ボランティア活動をKDDI社員有志で実施しました。内容は、植生保護柵の修繕、ツルニチニチソウなど外来種植物の駆除などを行いました。
(参考)
■京都大学芦生研究林について
本研究林は、1921年、学術研究及び実地演習を目的として、旧知井村の九ヶ字共有林の一部に99年間の地上権を設定し、芦生演習林と称したことに始まります。2003年4月、フィールド科学教育研究センターの発足に伴い、「京都大学フィールド科学教育研究センター 森林ステーション・芦生研究林」と改称されました。2020年4月に新しく30年間の地上権契約を結びました。
京都市の北約35km、福井県と滋賀県に接する京都府北東部、由良川の源流域に位置し、面積は約4200ha (東京ドーム898個分相当) です。
近畿地方有数の面積の原生的なブナ林が残り、生物多様性の保全の面からも非常に重要かつ貴重な地域です。2016年に指定された京都丹波高原国定公園のなかでも特に保護すべき地域と指定されています。1000種 (変種など含む) を超える維管束植物が記録されており、そのうち約20%は全国あるいは京都府下で絶滅が危惧される種です。ツキノワグマ、カモシカなどの大型哺乳類を始め、ムササビなどの小型哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫など多数棲息しています。アシウアザミ、アシウテンナンショウなど新種・新変種として芦生研究林で初めて記載された種は58種に上ります。近年も、2010年に土壌動物のアシュウハヤシワラジムシという新種が発見され、2019年に着生ランのフガクスズムシソウが北近畿で初めて確認されました。
年間約3,000人の学生や研究者が実習や研究のため利用しています。一般市民にも開放しており、年間約4,000~7,000人がハイキングやガイドツアーを楽しんでいます。芦生研究林は一般社団法人「芦生もりびと協会」と協定を結び、協会に所属する団体によるガイドツアーを許可し、一般市民へ芦生研究林の森の貴重さや森里海連環学の普及啓発に努めています。「芦生もりびと協会」と連携することで、森の保全と持続的な社会の創出を目指しています。
■京大フィールド研が進める森里海連環学
京大フィールド研では、2003年より森里海連環学 (もりさとうみれんかんがく) を提唱し、森から海までの物質や人を含む生物のつながりを明らかにする研究に取り組んでいます。森里海連環学は気仙沼の牡蠣漁師である畠山重篤氏が唱える「森は海の恋人」に科学的な裏付けができないか、という発想から生まれ発展してきました。森里海連環学はSDGsの基盤といえるものでもあり、森と海はつながっていること、そして、人はそのつながりの中で在り方を考えなければならないことを再認識し、自然と人との持続可能な共存原理を考えていくものです。
提唱者である田中克名誉教授は著書の中で、森里海連環学とは「大学内の学問だけでなく、住民が人と人、人と自然、自然と自然のつながりのたいせつさに思いをはせ、人々が「力を合わせてみんなで生きていこうよ」という意識を共有しながら住民が進化させていく学問である」と紹介されており、京大フィールド研では、森里海連環学から生まれた研究成果を元に、社会の様々な主体とともに森里海のつながりやその分断について学び、持続可能な社会に向けた様々な活動を生み出す、社会連携活動を推進しています。
■KDDIの取り組み
KDDIは、これからも事業を通じて様々な社会課題の解決に取り組み続けるという決意をこめ、2030年を見据えたKDDIのSDGs「KDDI Sustainable Action~私たちの『つなぐチカラ』は、未来のためにある~」を策定しました。このたびの取り組みは、「暮らしをつなぐ~地方・都市の持続的発展~」に該当します。社会課題をリスクとして捉えるだけでなく、KDDIならではの強みを生かしたチャンスと捉え、5GやIoTなどを活用した地方創生や、途上国における低廉で高品質な通信サービスの提供など、事業として利益をあげながら、様々な社会課題の解決を図ります。
<KDDI Sustainable Action~私たちの『つなぐチカラ』は、未来のためにある~>
■KDDIの地方創生
KDDIは、SDGsの達成に向け、事業を通じて解決する社会課題の一つとして、地方創生および教育事業に取り組んでいます。人財育成、ICTを活かしたビジネスの知見やファンドを軸にした地域企業のサポートに加え、教育における地域格差を解消するための環境整備もあわせて推進していきます。
地域や企業とのパートナーシップにより、サステナブルなビジネスモデルを構築し、課題を継続的に解決できる「地域の明日」を創っていきます。
<KDDIが目指す地方創生の姿>