IoTを活用したニジマス養殖の効率化に成功
KDDI株式会社
2023年2月7日
KDDI (本社: 東京都千代田区、代表取締役社長: 髙橋 誠、以下 KDDI) と兵庫県豊岡市 (市長: 関貫 久仁郎) は2022年3月から2022年11月まで、ニジマスの安定的な人工ふ化実現に向け、IoTを活用したニジマス養殖の実証実験 (以下 本実証実験) を実施しました。
本実証実験では、ニジマス養殖を行っている神鍋養鱒場において、IoTによる水中のモニタリングにより水中データを自動的に計測し、これまで経験的に行っていた作業との誤差を修正することで生存率を1割程度増加することに成功しました。
■背景と課題
豊岡市では後継者不足と高齢化により、ニジマスの養殖事業者が減少しています。養殖のノウハウがベテラン作業者の勘と経験に依存していることが課題となっており、養殖技術の見える化が期待されています。
ニジマス養殖の事業化において、人工ふ化に大きく影響を与える要因の一つとして水温が挙げられます。ふ化後の給餌タイミングを正確に見極めるためには、日々の水温を積算する必要があります。この給餌タイミングがふ化後の生存率に大きく影響しますが、これまでは手作業で水温を計測し、ベテラン作業者の勘と経験に基づいて餌付けタイミングを判断していました。
■本実証実験について
1. 概要
- 人工ふ化を行う期間中、センサー機器により定期的に水温を計測、クラウドへ送信し、データ収集しました。
- 収集した水温を積算し、最適なふ化のタイミングに合わせて餌付けを実施しました。
<本実証実験のイメージ>
<画面イメージ>
2. 特長
- 養殖環境のモニタリングには、センサー機器などでコストが高額になることが多いですが、汎用品や簡易センサーを用いることで低コストかつ横展開可能なモデルを実現しました。
- KDDI IoTクラウド Standardを用いることで、開発を伴わずに様々なセンサーデータを収集し、いつでも確認が可能になります。
3. 結果
- 実際にモニタリングしたデータをもとに餌付けのタイミングを修正した結果、餌の食いつきが良い稚魚が増え健康状態が向上することで、成魚まで育てた際の生存率が1割程度増えると見込まれます。
- 過去に計測した水温と比べて上昇傾向にあることや、1日の温度差も以前より開きがあることが分かり、今後も継続してデータを取得しモニタリングすることで安定した養殖につながります。
- 豊岡市の担当者からは、「ベテラン作業者の勘と経験に基づくノウハウが、データによって見える化されることにより、経験のない若者が養鱒に取組むことができれば、直面する養殖事業者の高齢化や後継者不足という課題解決の一助となりえる。」と期待されています。
KDDIは、今後も、社会の持続的な成長に貢献する会社として、社会のデジタル活用・DXを支援します。
(参考)
- 2016年9月に地域活性化を目的とした包括協定を締結し、農業や観光振興でさまざまな連携を実施してきました。その協定の一環として、市内で開始しました。
- 神鍋高原に降った雨水が、神鍋火山の溶岩でろ過されながら流れて豊岡市日高町十戸で湧き出ており、水温の安定した清流を活かしたニジマスの養殖が、大正時代より行われています。神鍋養鱒場もその一つで、程よい脂質と癖のない上質な味を生かしたニジマス料理は女性にとても人気があります。
■KDDIの取り組み
KDDIグループは、KDDI VISION 2030において「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」を掲げ、パートナーの皆さまとともに社会の持続的成長と企業価値の向上を目指すサステナビリティ経営を推進していきます。
■KDDIの地域共創
KDDIは、SDGsの達成に向け、事業を通じて解決する社会課題の一つとして、地域共創に取り組んでいます。ICTを活かしたビジネスの知見や、人財育成、ファンドを軸にした地域企業のサポートに加え、教育における地域格差を解消するための環境整備もあわせて推進していきます。地域や企業とのパートナーシップにより、課題を継続的に解決することで「地域の明日」を創っていきます。