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2011年度ステークホルダーダイアログ (被災地)
被災地の方々との意見交換会
KDDIでは、2012年から、東日本大震災での津波による甚大な被害を受けた岩手県大槌町で設立された一般社団法人「おらが大槌夢広場」と協働で同町への定期的なボランティア活動に注力し、被災地の現状を学ぶとともに被災地での交流を深めています。
2012年5月一般社団法人おらが大槌夢広場の方々をKDDI本社 (東京都飯田橋) にお招きし、これまでの活動や今後の支援内容、KDDIに対する期待などについて率直な意見交換会を行いました。
大槌町へたくさんの人に来て欲しい、そんな想いからのスタート
臼沢: 震災発生から1年以上が経過しましたが、被災地の復興は思うように進んでいません。
岩手県大槌町でも同様で、今回の震災で発生した瓦礫約10万トンのうち釜石市と大槌町の処理場で8割を、残りの2割を他県が処理することになりました。散らかっていた瓦礫はなくなりましたが、新たな施設や建造物が出来たわけではありません。大槌町の復興はほとんど何も進んでいないというのが実状です。
岩間: 大槌町の復興が進まないなかでも、まちづくりのために何かアクションを起こしたい、そうすることでおのずと雇用も生まれ、人が訪れ、町にお金が落ちる仕組みもつくれるのではないか、町を少しでも変えたいという想いから「おらが大槌夢広場」を立ち上げました。
その中のひとつの取り組みとして、まずは、大槌町にたくさんの方に来て欲しいという願いから「おらが大槌復興食堂」を始めました。食堂経営の経験が初めてのスタッフばかりで、立ち上げにはさまざまな面での苦労がありましたが、現在 (2012年5月現在) では、1日平均100人前後、多い日では、120人~130人程の方がお越しになっています。お食事の提供はもちろんのことですが、来ていただいたお客さまとはできるだけ会話をし、自分たちの想いや経験、被災地の現実を伝えるように心掛けています。
今後は震災体験の風化がどんどん進むことが予想されますので、自分たちが「もう対応しきれない」となるまで、多くの方々に接し、対話をしていきたいと考えています。
臼沢: 私の方では、企業さま向けのボランティアツアーの企画や被災地支援を通じた新人研修プログラムなどを組むなど、多くの企業さま・団体さまと連携するための受け皿づくりを進めることと並行し、ほぼ毎日大槌町にいらっしゃるボランティアツアーの皆さんの受け入れ業務などを行っています。そんな折に、KDDIさんとの出会いがありました。
コミュニケーションに重点を置いたボランティア活動
土橋: 当社では、東日本大震災発生直後から、被災地に対して多くの社員を派遣し復興のお手伝いをさせていただいてきました。また個人でボランティア活動をしたいという社員に対しては、ボランティア休暇や活動に必要となる費用の補助など、制度面での支援を行ってきました。
今回の震災の特徴は、被災地域が広範囲にわたることでした。社員のボランティア意識が高まる一方で、広範囲にわたる被災地の中で、どの地域に対して支援を行うべきか、という議論を重ねる中で「自力で地域復興を考えておられる町や団体の皆さんをお手伝いしたい」という考えにいたりました。「自分たちの町のために何かアクションを起こしたい」という想いのもと活動をされていた「おらが大槌夢広場」は、当社のボランティア活動への考え方と合致しており、社内公募によるバスツアーの企画が始まりました。
大槌町へのバスツアーは、休暇を取って行く形とは違い、20名程の社員ボランティアが金曜日の夜、東京を出発し、日曜日の夜に東京に戻ってくるものです。就業時間を使わずに参加できるよう、ハードルを低くしています。また、私たちのボランティア活動は、活動そのものはもちろんのこと被災地の方々との対話を重視していますので、20名くらいの小規模の方が地元の皆さんとコミュニケーションをとるには適切であるのではないかと考えています。
臼沢: 私たちもそれほど多くのスタッフが居る訳ではありませんので、受け入れるにも適正な人数があります。今おっしゃられた20名程度が確かに、全体をまとめられやすくなりますし、目が行き届く範囲なのかと思います。またボランティア一人ひとりの方とのコミュニケーションもとりやすい規模なのかと感じています。
土橋: 社員のボランティア意識の高まりや受け入れ側の状況をしっかりと考慮させていただきながら人数については検討したいと思いますが、当面はこの規模で活動を行っていきたいと思っています。
実際のボランティア活動は、土曜日に集中させ、2012年2月には小学校の通学路の雪かき支援、4月には夏に向けて海水浴場のゴミやガラスの破片を取り除く清掃活動などを行いました。またこうした活動の合間には、被災地の皆さんから震災当時の体験をお聞きし、被害にあった役場や街並みの視察、またその日の体験を社員同士で語り合う「シェアリング」の時間を設けました。やはりテレビや新聞などで見聞きするものと実際に現地の状況を見て、肌で感じるのとでは大変な違いがあり、本当に「何かしなければ」と強く感じました。また、参加した社員たちもいろいろな想いがよぎっていたようです。実際、かなりの参加者から「得るものが非常に多かった」という声が上がっていました。
臼沢: ボランティア活動そのものも大変ありがたいのですが、われわれとしては、ただ来てくれればそれでよいと思っています。大槌町のおいしいものを食べていただき、地元の人間と対話をし、被災地の現状や体験を肌で感じていただき、戻ったときにご家族や友人に「大槌町はこうだったよ」「おいしいものがたくさんあったよ」など伝えていただくだけでありがたいと思っています。一度ゼロになってしまったこの町をこれから新しく復興させていくためには、とにかく多くの人に来ていただいて、大槌町という町を多くの方々に知っていただくことが今は一番重要だと考えています。
土橋: いつもそう言っていただけて非常に感謝しています。やはり実際に行ってみるといろいろと感じるところはありますし、それを普段仕事する仲間や家族、友人に伝えることで "輪" を広げていきたいと思っています。またボランティア活動も「何もしなくてよい」というお言葉をいただきながらも、「何かできることはないか」ということを常々考えなければいけないと思っています。復興までにはまだかなりの時間を要すると思いますが、その時期その時期で変化していくニーズに対して「今一番必要なことは何か」を模索しながら、活動を長く継続していきたいと考えています。
ボランティア活動を通じて生まれたもの
土橋: ボランティアに参加する社員たちは、参加する前はお互いをあまり知らない者同士の場合もあり、最初はぎこちないことが多いです。しかし、一緒に活動を行ううちに、だんだんお互いを知るようになります。同じ目標に対して力を合わせることで、会社の中でのコミュニケーションが図れる。ボランティア活動をしていること自体が、社内の活性化にもつながっているのだと感じています。「支援」しているはずの私たちが、逆に勉強させていただいている、いわば社員教育のような価値があり、本当に感謝しています。
臼沢: 本当は私たちが「ありがとう」の気持ちを示さなければならない立場です。1回目の活動の際には、ただボランティア活動をして帰っていただくのはあまりにも申し訳ないので、地元の中学生による吹奏楽の演奏会を企画しました。せめてボランティアに来ていただいた社員の皆さんに「やってよかった」、「また来たい」と感じていただきたかったのです。これからも型にはまったプログラムのみではなく、いろいろな企画を考え、人と人とのコミュニケーションの要素を重視したプログラムを提案していきたいと考えています。
また、KDDIさんが大槌町へのボランティア活動を開始していただいたことで、相当な波及効果も生まれています。私たちのプロジェクトが一般にも広く知られるようになり、今では大手企業さまの新人研修などにも利用されているほどで、今後いろいろな展開の可能性も広がっています。また企業さま以外の一般の方々も月平均800人程が大槌町にいらっしゃっていて、なによりうれしいのはご家族でいらっしゃる方が多いことです。大槌町は被災地のなかでも、何度も来られるリピーターの数が多いと言われています。メディアでも取り上げられ、大変ありがたいことです。
土橋: 当初は想定していませんでしたが、実際に活動を行ってみると、どちらかが「何かをしてあげる」ということではなく、当社にとっても、大槌町にとってもお互いに良き相乗効果が生まれ、嬉しい状況になりました。
岩間: これからもいろいろな方々に大槌町に来ていただきたいです。そのためにはただ「待つ」のみではなく、自分たちからいろいろな企画を立てて新しい状況をつくりあげることが必要だということを実感しましたし、これまでの活動が、わたしたちの自信にもなりました。そういう意味では、ご協力いただいたKDDIさんには本当に感謝しています。今後もいろいろな形でつながっていければと考えています。
地域とともに真の復興に向けた貢献を
臼沢: 震災発生から1年以上が経過し、少しずつ被災地の生活も落ち着いてはきましたが、実はここにきて自殺者の数がかなり増えてきています。特に仮設住宅は、異なる地域の人たちの集まりなので、部屋から出て交流をする機会が少ないことや、生活の質が落ちていることなどから、大槌町の孤独死の数は岩手県内でも非常に多くなっています。このような状況を考えると今後は、住民の皆さんへの "心のケア" が非常に重要になってくると思っています。ご高齢の方を中心とした住民の皆さんは孤独な悩みを抱えておられるので、些細なコミュニケーションなどによるケアが今後は必要になってくるかと思います。
土橋: 住民の皆さんへの心のケアについては、今後の活動の中に取り入れていきたいと思います。ご期待に添えるかどうかわかりませんが、努力していきたいと思います。
岩間: 私たちの願いは、大槌町への関心を消さないこと、逆に広めていくことです。とにかく「忘れられないためにはどうしたらよいか」ということを常に念頭に置いて活動を行っています。半年、1年、2年、3年・・・と時間が経つにつれて、どうしても風化されてしまう部分があると思います。今回の震災では、多くの方々がお亡くなりになりましたし、多くの大切なふるさとがなくなりました。「震災があったこと」「今後どのように復興していくのか」ということをずっと伝え続けていきたいと思っています。
臼沢: 今は「被災地の大槌町」に来ていただいていますが、今後はただ「大槌町に来たい」と言っていただくことが、私たちの最終目標です。いわば、皆さんの「第二のふるさと」として、「おかえり」「ただいま」というような関係を構築できれば、すばらしいことだと考えています。
また現在は、岩手県沿岸での社員旅行のプロモーションや、特定公益事業という形で岩手県に人を呼び込むキャンペーンなど、岩手県の沿岸地域全体で皆さんをお迎えできるようさまざまな活動を行っているところです。
土橋: その想いは私たちもしっかりと受け止めて、それに応える支援をさせていただきたいと思っています。被災地支援は「ニーズに合った支援の継続」ということが大切だと私たちは考えています。今後も、「おらが大槌夢広場」の皆さんや大槌町の皆さんとの対話をより一層深め、現地のニーズを伺いながら、それらに沿った支援プログラムを検討していくことと、一過性で終わらない継続した支援体制を維持・向上させていく方針です。当社が大槌町の真の復興の一助となれるよう、積極的に地域コミュニティの発展に貢献していきたいと考えています。今後も活動を継続していきながらも、また何か別の形でタイアップできる領域があれば協力していきたいと思っています。
これからも「ただいま」と言って大槌町の皆さんに会いに行きます。
本日は誠にありがとうございました。
岩間・臼沢: こちらこそ、本日はありがとうございました。また大槌町でお会いしましょう。