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2017年度ステークホルダーダイアログ (環境)
環境をテーマとしたダイアログ
KDDIでは、2018年3月、日本政策投資銀行 執行役員 産業調査本部 副本部長 竹ヶ原啓介氏をKDDI本社にお招きし、下記を議題としてステークホルダーダイアログを開催しました。
- 脱炭素化の情報開示 (TCFD) やRE100など政府・企業・機関投資家の脱炭素化に向けた最新動向の把握
- KDDIの長期ビジョンやマテリアリティに関する意見交換
出席者
- <有識者>
株式会社日本政策投資銀行 執行役員 産業調査本部 副本部長 竹ケ原啓介氏
- <司会・進行>
学会「企業と社会フォーラム」プログラム委員 今津秀紀氏
- <KDDI出席者>
-
総務・人事本部長 (CSR・環境担当役員) 土橋
総務・人事本部 総務部長 田中
総務・人事本部 総務部 CSR・環境推進室長 鳥光- ※出席者の肩書、役職は、2018年3月末時点
"リスク"と"機会"の両面から脱炭素を捉える
竹ケ原: 2015年が脱炭素社会に向けた動きの分水嶺です。パリ協定やSDGs (持続可能な開発目標) が採択され、平均気温の上昇を2℃未満に抑える目標に向けて国際社会が動き出しています。しかし、既存の延長線では達成できないことは明らかで、今後大きくジャンプしなければならないときが必ずきます。そこに向けて、企業も絵を描き、準備していく必要がある、というコンセンサスができあがりつつあります。
また、金融安定理事会 (FSB) によって設立された「気候変動関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)」の最終報告では、気候変動に関する"リスク"と"機会"の開示が求められています。数ある非財務情報の1つといわれていた環境が、限りなく財務情報に近い議題として、財務報告のメインストリームに入りつつあります。
マテリアリティ (重要課題) の観点からみると、情報通信サービスの世界に関しては、ネットワークサービスが高度化し、IoTなどが社会の基盤を担っていくような社会において、優れた人的資源・担い手をどれだけ確保して維持していけるか、データベースとネットワークサービスのセキュリティをどこまできちんと対応できるかがまず求められます。その上で、膨大なインフラの整備についてエネルギー効率はどこまで達成していくのかが問われています。KDDIのマテリアリティをみると、そうした観点での整理をした上で、さらに"環境"という軸を立ててずっと取り組まれてきています。欧州では現在、非財務情報開示に関して、TCFDと整合した形での気候変動に関するリスクと機会の開示の議論が進んでおり、環境の位置付けが高まってきていますが、その流れに先行しているといえます。
KDDI: マテリアリティに関しては、従来のものを見直し、2018年4月から新たに6つの項目をマテリアルな課題として設定します。マルチステークホルダーとESG投資家の両方の観点から検討を重ねたもので、"環境"についても1つの大きな柱として引き続き取り組んでいきます。
竹ケ原: 2017年に公表された『伊藤レポート2.0 (※)』の主旨は、現在の企業の比較優位性やビジネスモデルが20~30年後も堅強であることを示すことが大切であり、それがすなわち長期の投資家が見るマテリアルな項目、ESG課題であるということです。気候変動が一層進み、人口がますます減っていく社会において、自社の強みを維持するために何が大切なのか、そうした視点でマテリアリティとKPIを設定していくことが、特にESG投資家の観点からは重要です。
その視点でKDDIの環境への取り組みを見たときに、やはり「リスクと機会」、この両面が必要です。現在KDDIは低炭素経済への移行に伴うリスクに沿って、CO2排出量や長期的な削減ビジョンをきちんと出しておりそれは素晴らしいですが、さらにそこに、通信サービスがユーザーにもたらすプラスの機会の側面を入れていくべきです。
通信会社のサービスがもたらす正のインパクト
KDDI: これまでは、自社のCO2排出量について「絶対量の削減」にこだわり、環境目標を設定してきましたが、事業を通じた社会全体のCO2削減への貢献も、KPI化が必要と感じています。しかしそれをどう定量的に示すかは、算定がなかなか難しく、今後の課題です。
竹ケ原: 簡単にデータを出せないという点はわかる反面、精緻さがどこまで必要かという視点もあります。これから本当にイノベーションを起こして取り組みをジャンプさせていかないといけない中で、現時点でどこまでの将来図を描き切ることができるか。より重要なことは、定量的ではなくても長期的な目標を設定し、そこからバックキャストして中期経営計画につなぎ、さらにその終点をサイエンス・ベースで担保することです。TCFDでシナリオ分析が求められるようになったことで、今後具体的な事例も多く出てくると思います。
サービスが高度になるほどエネルギーの絶対量が増えるのは当然です。絶対量を減らしていく姿勢を明確にしつつも、社会全体の効率化に貢献するKDDIの存在感を示していくことが大切です。
KDDI: それが明確になれば、事業の目標を達成することが、環境への貢献につながるということにもなりますね。社外だけでなく社内にとってもすごくわかりやすいです。
竹ケ原: 「KDDI GREEN PLAN 2017-2030」でも触れているように、エネルギーの話だけでなく、たとえば使用済みの携帯電話は都市鉱山の源泉であり、ドローンを飛ばした森林管理など生物多様性保全のためにICTにできることも間違いなくあります。KDDIのサービスを通じて社会に価値を提供していく方法には、無限の広がりがあります。これからいろいろな会社が脱炭素社会に向けたロードマップを描いていく上で、エコシステムを構成する情報通信の世界からどんなメッセージが出るか、ユーザーのシナリオに大きく影響してきます。そこを勇気づけるような通信事業者がこの日本にあるのだというメッセージを、是非出していただきたいと思います。
KDDI: 本日の議論を通じて、環境問題への取り組みはリスクだけでなく機会と捉える必要があり、当社が20~30年後も成長し社会に貢献するためには、事業を通じた実践が必要であることを再認識しました。いただいたご意見を踏まえて、これからもしっかりと取り組んでいきます。
- ※2017年10月に経済産業省が公開した「持続的成長に向けた長期投資 (ESG・無形資産投資) 研究会報告書」