人財
KDDIのアプローチ(人財確保・人財育成)
日本では少子化・高齢化が進み、生産年齢人口が減少し続ければ、日本の経済成長自体が鈍化するといわれています。また、近年の情報通信分野における市場環境は、技術革新やグローバル規模での競争の激化、多様な事業者の参入などを受け、急速な勢いで変化しています。この変化に対して迅速に対応し、継続して成長していくために、国籍や性別、年齢、障がいの有無などにかかわらず、多様な人財の採用と活躍支援に力を入れる必要があります。
KDDIは、「サテライトグロース戦略」に沿って、5Gによる通信事業の進化ならびに通信を核とした注力領域で活躍できる人財を確保・育成し、社員力の向上を図ることを最重要課題と定めています。
人財育成マネジメント
採用においては、多様な人財を確保するため、2016年より採用活動におけるエントリーシート内の性別記載廃止を実施しました。
従業員育成施策においては、On the Job Training(OJT:職場での実務を通じた育成)とさまざまな研修などのOff the Job Training(OFF-JT:職場以外での育成)により、効果的な育成が図れるようさまざまな施策を実施しています。従業員一人ひとりへの適切な評価・フィードバックによって従業員の成長意欲を醸成、自己啓発を促すとともに、受け身ではなく「自らを成長させ、変革の担い手となりたい」という強い思いを持った人財に対し、より自身を伸ばしていける成長の場として、各種プログラムを用意しています。
また、会社が必要と指定する資格を取得した従業員に対し、受験料などの取得費用を支給し支援しています。
KDDIの人財育成施策
制度 | 内容 |
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役員「補佐」職位 | 取締役などの役員の補佐役として業務を行う職位に就き、経営者の考え方を間近で学ぶ |
ジョブローテーション制度 | 若手社員自らが将来を見据えたキャリアプランを深く考え、経験の幅拡大など、自己の成長(キャリア形成・異動)につなげるための制度 |
公募制度 | 事業上強化すべき領域やライン長ポジションに対して意欲ある社員の挑戦機会を創出し、社員の自律的なキャリア形成を支援する制度(エルダー活躍推進含む) |
KDDIグループ内副業制度 | ジョブローテーション制度・公募制度と並び、自律的なキャリア形成を支援することを目的に、業務時間の20%を上限に本業とは異なる実践の場を提供する制度 |
キャリアプラン申告制度 | 社員が自分自身のキャリアの棚卸しや個人の状況を上長に申告し、今後のキャリアプランなどを相談する制度 |
階層別研修 | 職位や資格に応じて業務遂行上必要な知識やスキルを習得する研修 |
生涯学習休職制度 | 自ら資格やスキルを習得する社員に対し、一定期間の休職を認める制度(最長3年) |
海外留学 | 海外の大学・専門機関などに在籍し、高度な専門知識の修得と、ビジネスパーソンとの交流などを通じ、人的ネットワークの深化を図る |
海外トレーニー制度 | 希望者を選考の上、海外拠点に一定期間派遣し、ビジネス実務を通じて多様な価値観や異なるビジネス習慣の中でも業務を遂行できる人財を育成する |
グローバル人財交流プログラム | 海外現地採用社員を本社に招き、業務を通じて日本の商習慣・業務・KDDIフィロソフィの習得・お客さまの在日拠点との連携強化を図る |
KDDI DX University(以下「KDU」) | KDDIのコア事業となるDX事業およびその他の専門領域ごとのプロ人財の育成・拡大を実現する研修プログラム体系 |
【KDU】専門スキル研修 | 全30の専門領域のジョブ定義・スキル定義に基づいた研修群 領域ごとに特化したスキルの習得を目指す希望者向けの研修 |
【KDU】DX基礎スキル研修 | サテライトグロース戦略の実行に向けて、全社員のベースとなるDX基礎スキルを習得するための全社員必修の研修 |
コアスキル研修 | KDDI版ジョブ型人事制度における「コアスキル評価」に基づいて、全社員に必要なビジネススキルや人間力を高めるための希望者向けの研修 |
人財育成体系
役員・本部長向けには、KDDIフィロソフィやサステナビリティ経営に関する勉強会を実施しています。
専門領域別研修例と育成成果
KDDIでは一例として以下の通り、専門的なスキル研修を実施しております。
区分 | プログラム1 | プログラム2 |
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名称 | KDDI DX University(DX5領域) | KMU(KDDI Marketing University)専門スキル研修 |
内容 | KDDI DX University(DX5領域)では、DXに特化した人財育成を目的に、ビジネスディベロップメント、コンサルタント&プロダクトマネージャー、テクノロジスト、データサイエンティスト、エクスペリエンスアーキテクトをDX専門領域と定義し、DXに関する体系的な研修カリキュラムを提供しています。研修プログラムは現業と並行し1年間受講する一般受講と、短期集中型の注力育成の2コースを設置しています。 |
概要: 詳細:
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目的・ビジネス上の利点 |
KDDIでは、中期経営戦略において、事業戦略を5G通信とData Driven、生成AIを中心に、お客さま接点である通信基盤を生かして成長領域の1つをDX(デジタルトランスフォーメーション)と定めています。この戦略を推進する「DX人財」の育成を目的として2020年に社内人財育成機関である「KDDI DX University」を設立しました。 ビジネス環境やライフスタイルが常に変化していく時代において、変化に柔軟に対応しながらお客さまや社会に新しい価値を提案し続けていくためには、それをリードするプロフェッショナル人財が必要不可欠です。 「KDDI DX University」の取り組みによって、ビジネスディベロップメント、データサイエンティストなど、社内外の変革に向けてデータをベースにビジネスデザインを行い、さまざまな関係者を巻き込んだ上で新たな事業開発や社内改革を推進していく能力を持った「DX人財」の充実という成果につながっています。 |
我々ブランド・コミュニケーション本部が、プロ人財育成強化を開始した2021年当時、新型コロナウイルスやDX化の進展によりお客さまのライフスタイル・ビジネスが急速に変化しており、これに対応するためにはこれまでの広告代理店さまなどパートナー企業依存から脱却し、自社内で専門スキルの高い少人数メンバーが戦略/PR/制作までの幅広い業務を担う、「インハウスマーケティング(内製化)によるコミュニケーションの高度化」が大きな課題でした。 そこで22年度より本部の目指す姿を「世の中の変化・競争環境の変化を捉え、2030年ビジョン・目指す姿の実現に貢献するプロ人財組織への変革」とし、成果創出できるプロのマーケターを育成・輩出し、自本部内のノウハウ蓄積→マーケティング高度化→内製化促進により、継続的なアウトプットの実現を目指し、本取組みを開始しました。 |
ビジネス上の定量的な利点 | 「KDDI DX University」の活用による成果として、2023年度の総受講人数359人のうち95人がKDDIが定めるDX領域のプロ人財として成長し、最注力領域であるDX領域の成長を支えています。 |
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プログラムに参加しているFTEの割合 | 4% | 6% |
グレード制度・専門領域
KDDIでは、職務役割の大きさと期待される人財要件の違いで区分される等級を「グレード」として定め、そのうち管理職(経営基幹職と呼称)をリーダー系統とプロ系統で分けています。各グレードで求められる職務役割や人財要件を、グレード定義書で定めており、キャリア形成や目標設定、評価制度、グレード任用の指標など、あらゆる制度の基準として活用しています。
KDDI版ジョブ型人事制度において、KDDI社員一人ひとりがプロとして活躍するための専門性の単位を「専門領域」と位置付けています。専門領域ごとに、グレード定義書をより具体化したものを専門領域定義書で定めており、実際の仕事内容とあわせて求められる役割や能力、専門性の度合いを社員一人ひとりが把握できます。
- ※30の専門領域は以下の通り。
「コンシューマ営業」「法人営業」「営業支援」「事業戦略・事業管理」「マーケティング」「監査(リスクマネジメント)」「M&A」「渉外」「総務」「人事」「リーガル・知財」「アカウンティング」「購買・物流」「カスタマーサービス」「RAN・コア・固定系 NWエンジニア」「衛星・短波・海底ケーブル」「建設系NWエンジニア」「商品開発エンジニア」「ソリューションSE」「ファシリティエンジニア」「情報セキュリティ」「ネゴシエーター」「NWアーキテクト」「アナリスト」「研究開発」「ビジネスディベロップメント」「コンサルタント&プロダクトマネージャー」「テクノロジスト」「エクスペリエンスアーキテクト」「データサイエンティスト」
評価・報酬制度
KDDIは、公正で透明性のある人事評価・報酬を実現するために、職能や年次による評価をなくし、成果に比重を置きつつ成果を高めるための挑戦行動や課題解決力・コミュニケーション力・専門性を評価対象としています。また、社員一人ひとりが成果の最大化と個人の能力開発のために、「人」「仕事」の両方に焦点をあて様々なテーマ(信頼関係構築、業務の成功、キャリア形成や学びの支援、目指す姿やビジョン実現など)を用いて上司と継続的(月1回を目安)に1on1を行います。
一般的な目標管理の仕組みを成果・挑戦評価と呼び、仕事の成果だけでなく、成果をより高めるためにとった挑戦行動についても評価することにしています。挑戦行動は、KDDIの行動規範である「KDDIフィロソフィ」の遵守を含む人財要件(「課題形成」「課題遂行」「チームビルディング」「フォロワーシップ」「専門性」)を軸に評価します。グレードごとに期待される役割に沿って期初に担務・目標を設定し、期中には1on1を行いながら軌道修正も行います。期末には期初・期中の1on1で積上げてきたやり取りを面談形式で上司と振り返りを行います。直接の上司以外も含めて目線合わせを行った上で最終決定します(成果挑戦評価)。
課題解決力・コミュニケーション力・専門性は、能力評価として360度評価や上司評価にて決定します。課題解決力・コミュニケーション力は各グレード別に期待される行動特性を360度評価および市場水準との比較で評価(コアスキル評価)し、専門性は専門領域別の職務遂行で発揮・活用された知識・スキル・経験を上司評価にて評価します(テクニカルスキル評価)。
「成果・挑戦評価」と「能力評価」の結果をマトリクスへプロットすることにより、社員一人ひとりの今の立ち位置を可視化(=人財レビュー)し、特性を生かしたキャリア開発と報酬への反映に活用します。この人財レビューは、昇降グレードによる昇降給をしていない社員を対象に年1回実施されます。
賞与については、会社業績などを反映する会社業績賞与および業務における個人の実績を反映し決定する個人業績連動賞与の2つにより構成し、算出しています。
社員エンゲージメントサーベイ
KDDIでは、一人ひとりの社員が生き生きと楽しく働くことが当社の持続的成長につながると考え、四半期ごとに「社員エンゲージメントサーベイ」を実施しています。
本サーベイでは、KDDIが社員エンゲージメントとして定義する「会社や仕事に対する自発的な貢献意欲」を測定し、指標化します。サーベイ結果はリアルタイムで各組織のリーダーへ共有されます。
人事部門が、「社員エンゲージメント」の結果を分析し施策立案をするのではなく、各組織のリーダーがサーベイ結果をメンバーと共有し、自分たちの組織の課題は何であるか、自分たちが生き生きと楽しく働くためにはどのようにしたら良いかを対話から生み出していく、このプロセス自体が、社員エンゲージメント向上につながると考えています。
このような活動に全社で挑戦し、社員エンゲージメント向上に取り組んでいます。
従業員に対する中長期インセンティブの提供
KDDIでは、従業員に対する中長期インセンティブとして持株会制度(KDDI社員持株会)を採用しています。
KDDI社員持株会は、社員(グループ会社含む)が持株会へ任意で加入し、毎月の給与や賞与からの天引きにより、一定金額を持株会に拠出し、KDDIからの奨励金と合わせてKDDI株式を買い付けるものです。全社員(契約社員などを除く)を対象とし、中長期的な財産形成に資する目的で、福利厚生制度の一環として運営されている制度になります。
社員への表彰制度
KDDIは社員の個人およびチームを対象とした表彰制度を導入し、社員のモチベーションアップ、連帯感の向上を図っています。