サプライチェーンマネジメント

基本的な考え方

はじめに

グローバル化が進んだ現在、世界各国の社会的な課題が企業の事業運営にも密接に関連してきており、調達活動にも影響を及ぼすようになってきています。
KDDIグループは、自社のみならずサプライチェーン全体を見据えてサステナブルな調達を推進していくことが、自社の経営基盤強化、持続可能な事業活動に繋がり、社会的責任を果たす事にも貢献すると考えています。
この考えから、KDDIグループは、お取引先さまにおいても、公平・公正な取引を通じ、共存共栄ができるようパートナーシップ体制の構築を宣言しています。また、お取引先さまと協力しながら、人権、環境を中心としたサステナブル調達水準のさらなる向上を目指すよう、KDDIグループの調達方針を掲げています。
パートナーの皆さまとの公平・公正な取引、また、サステナブル調達水準を向上していく事で、調達を通じた社会への貢献と事業の発展を目指します。

調達方針

KDDIグループ持続可能な責任ある調達方針

KDDIグループは、社会インフラを担う総合通信事業者として、サプライチェーン上の調達リスクを回避し、より高い水準の社会的要求に応えるため、「KDDIグループ持続可能な責任ある調達方針」を策定し、国内外すべてのお取引先さまに対してリスクの把握・マネジメントの強化に取り組んでいます。
この方針では、適切なサプライチェーンマネジメントとして、お取引先さまとの共存共栄、地球環境への配慮、公平・公正な取引、人権・労働環境への配慮、適正な情報管理、品質と安全性の確保、社会との共生および適用範囲の8項目を定めています。
お客さまにご満足いただけるサービスの提供、企業と社会の持続的発展をお取引先さまと共に達成するため、同方針に基づき要請・支援を国内外すべてのお取引先さまに対して拡げています。なお、同方針はサプライチェーン全体への浸透を目指して日本語、英語、中国語、韓国語の4か国語で展開しています。

パートナーシップ構築宣言

パートナーシップ構築宣言

KDDIは、サプライチェーン全体での取引適正化を推進するため、経済産業省および中小企業庁からの要請も踏まえて、新たなパートナーシップを構築します。その具体的な取り組みとして、「パートナーシップ構築宣言※1」を策定し公表しています。
この宣言は、サプライチェーンのお取引さまや価値創造を目指す事業者の皆さまと協力し、共存共栄を推進することを目的としています。また、電気通信業界として電気通信事業者協会は、内閣官房と公正取引委員会から公表された「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」に基づき、「電気通信業界におけるサプライチェーン全体での取引適正化に向けた自主行動計画※2」を策定しました。KDDIは、この自主行動計画に則り、取引の透明性と公平性を確保し、さらなる価値創造と付加価値向上に向けて努力してまいります。

  1. ※1関係閣僚(内閣府、経産省、厚労省、農水省、国交省および内閣官房副長官)と経団連会長、日商会頭、連合会長をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」において、創設された仕組みです。
  2. ※2電気通信事業者協会が策定した本自主行動計画は、取引環境の公正性と透明性を追求し、サプライチェーン全体での共存共栄を図ることを目指しています。この計画は、公正・公平な取引、サプライチェーン全体の共存共栄、そして双方向のコミュニケーションの確保という三つの原則に基づいています。

調達ガイドライン

KDDIグループ持続可能な責任ある調達ガイドライン

KDDIグループは、調達方針を遂行するための指針となる「KDDIグループ持続可能な責任ある調達ガイドライン」を策定し、ホームページにて公開しています(日本語・英語)。ガイドライン策定にあたっては、RBA(Responsible Business Alliance)の行動規範や一般社団法人電子情報技術産業協会(以下、JEITA)の「責任ある企業行動ガイドライン」を参考に取り組むべき項目をまとめ、お取引先さまや調達品選定の際は、品質・価格・納期・安定供給に加え、環境や社会への配慮を重視した判断基準としています。このガイドラインは法令遵守・国際規範の尊重、人権・労働、安全衛生、環境、公正取引・倫理、品質・安全性、情報セキュリティ、事業継続計画、社会貢献の9項目を定めています。
2020年3月に実施した人権影響評価の結果を受け、2021年3月には、人権への配慮をより拡充した内容に改訂しました。
なお、「KDDIグループ持続可能な責任ある調達方針」や「KDDIグループ持続可能な責任あるガイドライン」について、社会情勢による遵守事項や法規制に合わせて、定期的な見直しを図っています。
また、サプライチェーン全体でCO2排出量削減に取組むためのグリーン調達ガイドラインを制定し、お取引先さまとカーボンニュートラル達成に向けて協調、協力を進めています。

紛争鉱物への対応

米国政府は、米国上場企業に対して、コンゴ民主共和国などの紛争地域で産出される鉱物(以下、紛争鉱物※3)の製品への使用状況を開示することを義務づけています。
KDDIグループは、米国上場企業ではありませんが、調達活動における社会的な責任を果たすため、サステナブル調達アンケートによる調査などを通じて、お取引先さまと連携し、紛争鉱物の不使用に向けた取り組みを推進しています。

  1. ※3タンタル、スズ、金、タングステン、コバルト、そのほか米国国務長官が指定する鉱物が該当

お取引先さまの選定

KDDIグループは、お取引先さまや調達品の選定基準として、品質・価格・納期・安定供給に加え、環境や社会への配慮を重視した判断をしています。
また、新たにビジネスを開始するお取引先さまとは、外部の調査機関なども活用し、環境や社会問題に対するリスクアセスメントを実施しています。お取引先さまの規模、過去の経歴、信用状況、営業状況、財務状況などを精査し、一定の基準を満たす場合に取引を行います。万が一、お取引先さまが人命に関わるような重大なコンプライアンス違反を起こした場合には、コミュニケーションを通じて改善策を検討し、是正措置が完結するまで、取引の終了などを含め対応しています。
また2018年度より、重要な一次お取引先さま※4に対するサステナブル調達アンケートを通じて、二次以降のお取引先さまにおいても「人権」や「紛争鉱物」などの調査を実施し、「KDDIグループ持続可能な責任ある調達方針」の遵守を確認しています。
なお、KDDIグループは行動指針に基づき、「反社会的勢力」との取引には一切応じません。

  1. ※4重要なお取引先さまの定義:発注金額ベース上位約90%の一次お取引先さま(二次お取引先さまは含まれていない)、重要製品・サービスを扱うお取引先さま、代替不可能なお取引先さま、サステナビリティ要件(環境・社会・ガバナンスなど)、商品、国やセクターなどの固有リスクや懸念のあるお取引先さまなどを基準として選定しています。

サステナブル調達の取り組み

活動指針

KDDIグループはお取引先さまと共に、PDCAの改善マネジメントサイクルを回すことで、サプライチェーン全体のサステナビリティの向上に取り組んでいます。重要なお取引先さまに対して取り組み状況の把握、リスクアセスメントを目的としたアンケートを行い、サステナブル調達の重要性をご理解いただけるよう啓発・支援するとともに、課題や取り組み状況の共有をお願いしています。お取引先さまのコンプライアンス違反に対しては、原因究明と改善を求め、必要に応じて指導・支援を行います。また、お取引先さまとより良いパートナーシップ体制を築くため、方針説明会の開催、訪問やオンライン会議を通じてサステナブル調達活動の取り組みに関する意見交換を実施しています。
アンケート結果をはじめとしたサステナブル調達の推進に関する事項は、サステナビリティ担当役員(コーポレート統括本部長)に定期的に報告され監督されています。

図:PDCAの改善マネジメントサイクル

高度化へ向けた取り組み

業界連携

日本電信電話株式会社、ソフトバンク株式会社とサステナブル調達に関する通信事業者間の連携を公表し、定期的な会合の実施や通信業界共通のSAQを作成し、サステナビリティに関するアンケートの標準化、お取引先さまの負担軽減を図っています。
2023年度からは、第三者評価プラットフォームのEcoVadis※5と、3社(NTT、KDDI、ソフトバンク)共通SAQ※6を導入し、お取引先さまとのさらなるエンゲージメント強化に向けて取り組んでいます。
2024年度は、サステナビリティへの取り組みや考え方、自社のCO2排出量計測など、お取引先さまに実施いただきたい取り組みをご紹介したハンドブックを発行し、サプライチェーンのサステナビリティ向上を目指してお取引先さまの活動をサポートいたします。

  1. ※5「環境」、「労働と人権」、「倫理」、「持続可能な資材調達」の4パートで構成される、サステナビリティ評価サービス
  2. ※6Self-Assessment Questionnaire(自評価調査)

教育・啓発活動

サステナブル調達の推進にあたっては、自社購買担当者に対して、理解度の向上・スキルアップを目的とした教育を実施しています。また、お取引先さまに対しても説明会やアンケートを通じて、人権の尊重、自然環境の保護などサステナビリティの重要性を啓発しています。

対象 取り組み内容
購買担当者の教育・啓発
  • 購買担当者向け教育プログラム
    購買担当者向けに、購買コンプライアンスの遵守、サステナブル調達の重要性とその実現方法についての教育プログラムを提供し、定期的に実施しています。
  • 調達プロフェッショナルとしての資格推奨
    購買担当者に対して、購買・調達プロフェッショナルスキル資格(CPP)の取得を推奨しています。
  • 購買担当者向けサステナブル調達研修会
    サステナブル調達を会社全体で実行するため、購買担当者向けに人権・環境・公正取引などの観点でコンテンツを作成し、教育を実施しています。
  • サステナブル調達に関するヒアリング・現地調査
    お取引先さまとのサステナビリティ全般に関する対面でのヒアリングや、労働環境確認のための現地調査を実施しています。
お取引先さまへの啓発
  • お取引先さま向け説明会の開催(能力開発プログラム)
    2023年度はオンライン形式で開催し、101社のお取引先さまにご出席いただきました。(目標出席社数:95社)
    説明会ではサステナブル調達全般に関する、啓発、方針・取り組み内容、通信業界間での連携取り組みについて情報の共有を行っています。
  • 調達先選定時におけるサステナビリティ評価の組込み
    2023年度より調達先選定時におけるサステナビリティ評価をトライアル導入開始。サステナビリティ評価が優れているお取引先さまとの契約締結を優先するなど、調達先選定基準に組込んでいます。
  • お取引先さま向け啓発コンテンツの提供(テクニカルサポートの実施)
    2024年度はお取引先さまのサステナビリティ活動を支援することを目的として、取り組み推進のための具体的な手順などを示した啓発用コンテンツをお取引先さまへ提供しています。また、日常的なお取引先さまへの訪問の際、啓発コンテンツを紹介し、お取引先のサステナビリティに関する取り組み推進をサポートしています。

お取引先さま向けの相談・申告窓口(苦情処理メカニズム)

KDDIグループでは「KDDIグループ人権方針」を策定し、お取引先さまやビジネスパートナーに対して、人権を侵害しないように働きかけ、協働しながら人権尊重を推進しています。またお取引先さまに対しては「KDDIグループ持続可能な責任ある調達ガイドライン」においても、強制労働や非人道的な扱い、児童労働、差別の禁止などを明示して理解を促し、実践をお願いしています。
「KDDIグループ人権方針」や「KDDIグループ持続可能な責任ある調達ガイドライン」から逸脱するような人権問題を含む企業倫理や法令遵守への違反行為などについての相談または申告を受け付ける窓口として、KDDIグループのお取引先さまの従業員などを対象としたヘルプラインを設置し、社内窓口および外部専門家と連携した社外窓口を通じて、常時、メールなどで相談や申告を受け付けています。

お取引先(仕入先)さま向け ヘルプライン(日本語、英語対応)
メール:kddi-supplier-helpline@city-yuwa.com

※KDDIグループ従業員からの通報窓口とは異なります

相談・申告対象について

・KDDIグループ社員の暴力行為、圧力行為
・下請法違反の疑い
・強制労働、児童労働、差別を含む「人権」にかかわる内容
・長時間労働など「労働・安全衛生」にかかわる内容 など

相談者のプライバシーや通報者の保護に十分配慮し、匿名での申告も受け付けています。また「公益通報者保護法」にのっとり、相談・通報したことを理由に不利益な扱いを受けないよう守秘義務を徹底し、相談者・申告者の保護に努めています。KDDIは、共に課題解決に取り組む社外窓口と秘密保持契約を締結しています。
なお、人権への影響を引き起こした、または人権への影響を与えたことが確認された場合、KDDIは影響を受ける当事者を救済することを約束します。