CFOメッセージ

取締役執行役員常務 
CFO 
コーポレート統括本部長

最勝寺 奈苗

新サテライトグロース戦略を支え
る経営基盤強化により、
企業価値向上と社会の持続的成長
を目指す

真の企業価値向上を実現する

私は当社の「心を高める」という社是に共感しており、またKDDIフィロソフィの中でも特に「原理原則に従う」「人間として何が正しいかで判断する」の2つを大切にしています。原理原則に従い、正しい判断をするためには、心が高まっていることが必要です。心が高まっていないと判断が揺らいでしまいます。心を高めるということは、高い視点で物事を考え、より適正な判断をするために、自分を律することだと考えます。

私はCFOであり、コーポレート統括本部長でもあります。従来のCFOの役割は、会計部門の責任者として業績を高め、株価を上げることで企業価値を向上させることにあると言われていました。しかし、株価は外部環境や地政学リスクなどの影響を受けるため、企業努力だけではコントロールできない部分があります。

私が経営管理本部長、サステナビリティ経営推進本部長を務め、現在コーポレート部門全体を統括する立場となって実感するのは、企業の力は業績だけではないということです。業績は企業活動の結果の大きな要素ではありますが、昨今は企業価値を表す要素として非財務価値が欠かせません。品格ある企業であるためには、企業が社会に対するインパクトや環境への責任を重視することが必要だと考えています。その点で、コーポレート統括本部は財務だけでなく非財務の価値向上にも貢献し、両輪で真の企業価値を向上させる役割を担っています。

事業成長を支える財務運営

KDDIはこれまで、KDDI VISION 2030を策定し、事業の核である通信によって「つなぐチカラ」を磨いてきました。新サテライトグロース戦略では、これまでの通信に加え、新たに生成AIとデータドリブンをコアに据えることで「つなぐチカラ」をさらに進化させていきます。この実現に向けては、中長期的な投資とコストバランスの適正化が必要です。具体的には、デジタルインフラ構築のための先端技術投資を積極的に行うため、インフラシェアリングや低稼働設備の見直しなどの効率化を進め、CAPEX・OPEX水準を適切にコントロールしていきます。

持続的成長と株主還元の両立、資本効率の向上

現中期経営戦略では、19.3期対比1.5倍を目指すEPS成長の目標達成を1年延長し、26.3期までの目標とすることにしました。また、近年は環境変化により、PLだけでなくBSマネジメント等、資本効率がより重要になってきております。当社はこれまで営業利益の向上を重視してきましたが、より資本効率を意識した経営を推進するため、経営管理本部が全社をリードしていきます。資本効率にはいくつかの指標がありますが、業態が異なる事業を多く抱えているグループ連結では、ROEに注目して経営しています。現在、BSに占める金融事業の割合が増え、ROEが低下傾向にあります。このため、金融事業とそれ以外の本体事業を分けて考え、それぞれのROEを向上させることで、連結で約13%強の水準を維持・向上していきます。

キャッシュアロケーションの方針としては、成長投資を最優先にしています。通信は当社の重要なバックボーンであり、設備投資を緩めることはできませんが、インフラ投資の効率化に加え、生成AIなどの先端技術への投資も行い、また成長のためのM&Aも行っていきます。総投資額が過度に膨れ上がらないよう管理していきます。

これら成長への投資に加え、株主還元も重視しており、株主還元の基本方針として、持続的な増配を継続し、配当性向40%超を目標にしています。さらに、機動的な自己株式取得も実施し、今後2年間のキャッシュアロケーションを計画的に実行していきます。

経営基盤強化

新サテライトグロース戦略に基づき、通信事業だけでなく、さまざまな領域のサービスをグループ全体で実行するためには、経営基盤の強化が不可欠です。
グループ全体でこの課題に取り組むために、「カーボンニュートラルの実現」「ガバナンス強化によるグループ経営基盤強化」「人財ファースト企業への変革」を経営基盤強化の3つの柱に掲げ、実行しています。

カーボンニュートラルの実現

カーボンニュートラルについてはこれまでKDDI単体の目標設定が中心でしたが、脱炭素社会の実現を加速させるため、2040年度末までにネットゼロ達成を目指す4つの環境目標を策定し、グループ全体で取り組んでいます。この目標達成に向けて、auリニューアブルエナジーが提供する太陽光発電の利用等により、Scope1およびScope2の削減を進めています。また、取引先との対話を通じてScope3の削減にも取り組んでいます。さらに、KDDI Green Partners Fundから出資しているスタートアップ企業との協業による取り組みも積極的に進めています。

カーボンニュートラルに加えて、最近では特に生物多様性保全の取り組みにも注力しております。IoTなどの当社のアセットを活用し、さまざまな企業や自治体と施策を推進していきたいと考えています。また、KDDIの事業と自然資本との関係性、およびリスクと機会を整理し、TNFDフレームワークに基づいた情報開示を行っています。

ガバナンス強化によるグループ経営基盤強化

新サテライトグロース戦略の推進に伴い、グループ会社の増加と事業の多様化が進んでいます。KDDIではグループ会社にCFOを派遣し、グループ全体のリスクマネジメントと情報セキュリティ体制の強化に取り組んでいます。派遣したCFOに対しては、グループ会社をサポートする専門組織によるヒアリングを行い、サポート体制を強化しています。

シェアードサービスによる共通基盤の拡充やCFO人財の育成・支援体制の確立を通じて、リスクマネジメント体制を強化し、グループ間データ連携に向けた整備や、情報セキュリティを強化することで、グループガバナンスを強化しています。

また、人権の尊重はあらゆる事業活動のベースになっています。方針を整え、取り組みについて対外発信し、グループ全体で人権尊重の姿勢をしっかり浸透させ、複雑化する人権課題に対応していきます。

昨今ではAIをはじめとするテクノロジーの発展に伴い、データプライバシーなどの人権リスクも高まっています。通信事業者として適切な人権配慮を行うことが不可欠であると認識しており、KDDIグループでは「イノベーションを支えるテクノロジーとデータの倫理的な利活用」を重要な人権課題のひとつに掲げています。AIの利活用を推進すると同時に、AIガバナンスの強化も進めていきます。

人財ファースト企業への変革

企業理念と人財重視

KDDIグループは「全従業員の物心両面の幸福の追求」を企業理念に掲げ、人財を最も大切な資源と位置付けています。これが社員の実感につながっているかという点では課題もあり、それらの課題を一つひとつ解消する形で人事制度の改革を行ってきました。
専門性が求められるこれからの時代において、当社は社内外で活躍するプロ人財を育成しながら、社員の働きがいと成果を生み出していきたいと考えています。社員がKDDIを好きになり、エンゲージメントを高め、会社とともに成長を実感できるような環境整備に取り組んでいきます。
事業領域の拡大に伴い業務が増えるばかりでは、働きやすいとは言えません。さまざまな施策の成果をデータで管理し、社員の負荷軽減を図るとともに、働きがいを感じられる状態とすることも、コーポレート統括本部のミッションの一つです。

DX・AI人財育成

プロ人財の育成は、当社の重要な取り組みです。会社全体が高度化するには、DXは当たり前に身につけているべきスキルであり、全社員がDXに対する理解を深め、ツールとして効果的に活用することが求められています。さらに、今後はAIの活用が鍵となるため、DXおよびAIの教育を強化しています。時代とともに磨くべきスキルが変わっていくため、当社としても感度を上げて育成を図る必要があると考えています。また、技術的スキルだけではなく、長期的視点を持ち、正しい判断ができる人財の育成も重要です。当社のフィロソフィの理解を深め、社内外での交流を通じて人間性を磨く機会を提供し、多様な経験を積むことで成長を促しています。

女性活躍推進

女性活躍推進は、過去からの施策の蓄積によって実現するものです。女性経営基幹職比率などの目標は掲げてすぐに達成できるというものではなく、地に足をつけた施策を継続することが重要です。その結果、真に登用されるべき女性が登用される状態にしたいと考えています。女性登用のガイドラインの整備や、また、技術部門では女性社員数が少ないなど部門による特性を考慮し、部門を超えた人財ローテーションによって女性を育成していくことが重要です。経営基幹職になることを敬遠しがちな女性の意識変革のため、女性担当者による啓発施策にも取り組んでいます。

働き方改革と
新オフィスへの取り組み

個と組織の力を進化させるため、2024年6月から「働き方アップデート」施策を実行し、より働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
当社は、2025年春に本社を「TAKANAWA GATEWAY CITY」に移転します。この移転に伴い、より一層働きやすさを追求できると考えています。目指すのは「さまざまな垣根を超えてつながり、新しいアイデアを創出・発信すること」と「自由で生産性の高い働き方を試行錯誤し、常に最新の状態を保つこと」です。KDDIグループ社員同士、また社外のパートナーとともに働ける環境や、働く時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を実現するための多様な施策を整備し、社員の生産性とエンゲージメント向上を図ります。

コーポレート統括本部とCFOとしてのミッションは冒頭に述べた通りです。実行に向けた社員の意識の高まりや、横連携が進んできていることを感じています。One Corporateで、ミッションの達成に向けて時代を先取りした新しいことに取り組むことが私たちの目標です。会社全体でワクワクして働ける環境、働きがいのある環境を作るために、まずはコーポレート統括本部の社員にワクワク感を感じ、生き生きと働いてもらうことが前提だと考えています。自らがやりがいをもって働くことで、全社員が働きがいを感じられる会社を目指していきます。