未来を切り拓く「WAKONX」~AI×和の力で日本のDXはどう変わるのか~

「失われた30年」と言われる日本ですが、それでもGDPで上位に踏みとどまっていられるのはなぜでしょうか。日本ならではの良さをAIでドライブし、デジタル化を加速することで、見えてくる日本の“勝ち筋”とは?「KDDI SUMMIT 2024」で、代表取締役執行役員副社長 ビジネス事業本部長の桑原康明が語りました。

セッションの後半では、日本のDXを加速するKDDIのビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」で、中核となる技術を提供する、フライウィールとELYZAの両CEOも登壇し、目覚ましい成果をあげる最新DXの実例について紹介しました。

目次

  1. 1日本がもう一度輝くための“勝ち筋”は「和魂洋才」にあり
  2. 2日本のデジタル化を加速する「WAKONX」の全容
  3. 3スタートアップとともに取り組むAIデータ活用実例

日本がもう一度輝くための
“勝ち筋”は「和魂洋才」にあり

さまざまな社会課題を抱える日本ですが、中でも最もクリティカルと言われるのが高齢化や人口減少による労働力不足です。足りない人手を効率化で補うべく、日本の企業でもようやくDXを加速する機運が高まってきました。

そこで桑原は、日本のアドバンテージに「リアルが非常に強い」ことを挙げます。ものづくりの技術力や、公共交通網に代表される正確さ、緻密さ。世界に誇れるおもてなしなど、日本の良さとされる点に目を向け、その歴史を振り返れば、「“日本の勝ち筋”が見えてくる」と、桑原は言います。

「日本は明治維新以降、西洋の素晴らしいものや技術などを取り入れ、日本の良さを入れてアレンジし、海外に展開して勝ってきた。今回もデジタル化を急ぐだけではなく、“日本の勝ち筋”を踏まえていけば良いのではないでしょうか」

そのことを端的に表す言葉が「和魂洋才」。KDDIのビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」の由来となる言葉に、桑原は「和魂洋才は、日本が勝つための方程式を表している。強いリアルをデジタルでスピードアップし、日本の良さを加えて、日本の勝ち筋を作っていく。これがWAKONXのベースです」と語りかけました。

日本のデジタル化を加速する
「WAKONX」の全容

KDDIビジネス事業本部 プロダクト本部 副本部長の野口一宙は、その「WAKONX」について全容を語りました。

WAKONXの全体像を表したスライドを提示した野口は、「WAKONX」がモビリティ、物流、小売・流通、放送、スマートシティ、BPOという6つの業界課題・社会課題のテーマを掲げていることを紹介。そこで、「Network Layer」「Data Layer」「Vertical Layer」という3つのレイヤーで、ソリューションを提供していくと解説します。

たとえば5,000万回線に達するKDDIグループ全体のIoT接続数のうち、半数以上の2,800万を占めるのがコネクティッドカーです。KDDIでは、グローバル通信プラットフォームとしてコネクティッドカーの世界展開を支援しています。世界7地域83カ国で展開し、通信からサービスまでカバーするさまざまなノウハウがKDDIの強みです。

世界各国で現地のキャリアに接続するためには、SIMのプロファイル管理に加えて、法令の定期チェックが欠かせません。また各国キャリアを束ねる仕組みや共通APIの運用も必要です。そこで、ワールドワイドな通信プラットフォームを構築することでコネクティッドカーの海外展開を支援しているのです。

例えば、ある国でサービスを受け入れた車が、国境を越えて隣の国に行ってもサービスを使えるよう、ローカルIPを維持する機能もあれば、自動車メーカーに対して、エンドユーザーのトラフィックや、アプリケーション別の統計なども提供しています。

通信事業はオペレーターとも呼ばれますが、通信と24時間365日のオペレーションはセットであり、「運用保守もAIにより進化しています」と野口は言います。
これまでは、熟練したスタッフによるオペレーションが物を言う場面もありましたが、現在はダッシュボード上でワンタッチ、ゼロタッチ操作など、自動化が進んでいます。そのなかで、すでにKDDI傘下のソラコムの基盤を用いたIoTでは、通信の不安定なSIMはどういったものか、とAIに質問すると教えてくれる仕組みが実現しています。野口は「通信機能をAPI化することで、幅広い領域に組み込みがしやすい通信基盤へと進化させています」と聴衆に語りかけました。

一方、Data Layerでは、KDDIが持つデータを価値に変えるための取り組みとして、AIインフラが整備されています。中長期で約1,000億円規模の設備投資が実施され、データセンターの構築・運用や5Gネットワークの分散基盤の活用が進められており、その上で提供されるAIモデルは、スタートアップと協力して作り上げた、オープンモデル活用の「まさに『和魂洋才』」(野口)であり、WAKONXでは業界領域に合わせてAIサービスを開発して、AIをエンベデッドしていくという考え方で取り組んでいます。

このほか、Vertical Layerでは、コネクティッドカーだけでなく、ドローンや船舶、自動走行ロボットなど未来のモビリティを支えるインフラへと進化させていくほか、さまざまな領域でAIやデータを活用したDX化やソリューションの提供を進めています。
KDDIグループとして、幅広いリアルフィールドに向き合い、デジタル化を進めて実績を積み上げる。そうして得たノウハウなどがアセットして法人のお客さまへ提供されるというわけです。

スタートアップとともに取り組む
AIデータ活用実例

「WAKONX」におけるAIデータ活用の実例は、株式会社フライウィール 代表取締役CEOの横山直人氏と、株式会社ELYZA 代表取締役CEOの曽根岡侑也氏をゲストに迎えたセッションで、詳しく紹介されました。

フライウィールでは、AIとシミュレーションによってデータドリブンな事業運営を実現する、プロダクト「Conata®」を提供しています。

KDDIの物流センターの事例では、倉庫内の物流業務の効率化のため、業務を可視化し、リソースを配分するためのシミュレーターを、約4カ月で開発。その結果、通常の1.4倍のパフォーマンスで出荷量が伸ばせることがわかったのです。

この事例は、WAKONX Logisticsのソリューションとして、株式会社Nexa Wareで物流倉庫向けデータ分析サービス「Nexa Warehouse-Optimizer」として提供が開始されています。

このほか、KDDIの法人営業部門では、情報収集に使用していた6種類以上のツールの入り口を、フライウィールが開発した「Conata Data Agent」に統合。営業活動を進める上で知りたいことを、検索ボックスから投げかけるだけで、AIが社内の情報を整理して回答を生成します。これにより、資料探しや社内有識者への相談など、日々何時間もかけて情報収集していた業務を、一瞬で解決することが可能に。若手や経験のないスタッフでも、日々の業務の生産性を向上し、顧客と向き合える時間を創出するための仕組み作りをKDDIとフライウィールが協力して進めています。

一方、曽根岡氏が率いるELYZAでは、オープンなLLMを土台に、独自の日本語モデルを開発。「LLMを作る上で重要な、GPU計算基盤であるAIデータセンターと、社会実装のためのアセットといったものがマッチした」(曽根岡氏)ことで、KDDIグループに参画したELYZAは、KDDIと三井物産が共同出資するBPO アルティウスリンクと、「コンタクトセンター業務特化型LLMアプリケーション」を開発し、コンタクトセンター向けサービス「Altius ONE for Support」の標準機能になりました。

一般的にコンタクトセンターでは、オペレーターが5分間、電話で対応すると、そのあとに入力作業に5分かかるところ、JR西日本のコンタクトセンターに生成AIを導入したことで、最大54%の業務効率化を実現。三井住友カードとの事例では、FAQを束ねて返信文のドラフトをAIで生成することで、60%程度の業務を削減できる見通しになったと曽根岡氏は説明します。

日本企業で今後、AIデータの活用を進めるにはどうすべきか。実証実験で終わらせないためには、「小規模であっても成功事例にまずフォーカスし、それをどう広げていくか。このプロセスができるかどうかが鍵だ」と横山氏。

曽根岡氏も「成功事例を作るためには、実際に業務活用する現場とともにフィット感のある生成アプリを高速で作って、試して、改善していくことが重要」と語ります。そして、3~4カ月で試していくことが、業務活用や組織での利用において鍵になると話していました。
KDDIグループは、フライウィールやELYZAをはじめとするグループの力を結集させ、法人のお客さまが、データ・AIを本当の意味で「活用」して業務や事業に生かせるようご支援を行い、“日本のデジタル化のスピードアップ”を目指していきます。

以下よりアーカイブ動画をお楽しみください

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