第1部 DAY2 オープニングスペシャルセッション
~通信とAIで創る新たな体験価値~

9月3日と4日に開催された「KDDI SUMMIT 2024」。その2日目、AIと通信を組み合わせ、KDDIとパートナーが共創することによる価値提供について紹介する講演が行われました。

ここでは、KDDI 取締役執行役員常務 パーソナル事業本部長の竹澤浩による「DAY2 オープニングスペシャルセッション」と、「次世代マーケティングで未来を拓く~データクリーンルームを活用したデータコラボレーションによる新たな共創~」と題した、Snowflake、サイバーエージェント、KDDIの担当者によるトークセッションの模様をお伝えします。

目次

  1. 第1部 DAY2 オープニングスペシャルセッション~通信とAIで創る新たな体験価値~
  2. 1ローソンで顧客接点を拡大、AIの活用も
  3. 2povo 3.0でグローバルへ
  4. 3アーティストやスポーツ人財の育成
  5. 第2部 次世代マーケティングで未来を拓く
    ~データクリーンルームを活用したデータコラボレーションによる新たな共創~
  6. 1KDDIと「ABEMA」のデータコラボにSnowflakeの技術を活用
  7. 2「ABEMA」のマーケティング戦略
  8. 3日本はデータを利活用できていないわけではない
  9. 4共創、人財育成におけるコミュニティの重要性

ローソンで顧客接点を拡大、AIの活用も

これまでauやUQ mobileのショップなどを通じてスマートフォンなどを提供してきたKDDIですが、よりお客さまに身近な存在となって、さまざまな価値を届けるためには、「リアル、デジタル、この接点のさらなる進化」が必要になると竹澤は語ります。
そこで取り組むのが、三菱商事と共同経営するローソンです。店舗に、今後、テクノロジーによるさまざまなサービスや機能が取り入れられ、「リアルテックコンビニエンス」としてさらなる成長が期待されます。

ローソンとの提携では、顧客データも膨大になる見通しであり、竹澤は「お客さま体験の変革には、AIのサポートが不可欠」と語ります。

お客さま1人ひとりに合わせる「パーソナライズ」も、AIに期待されることのひとつ。KDDIが有するデータをAIで解析して提案することになり、人の力ではなかなか見つけられなかったお客さまのインサイトの発見への期待感も示しました。

povo 3.0でグローバルへ

竹澤が続いて触れたのは、KDDIのオンライン専用料金ブランド「povo」です。

povoでは「トッピング」と呼ばれる多彩な選択肢がラインアップされ、Z世代に特化したマーケティングや、スピーディな取り組みが特長です。今後はパートナーのサービスに通信機能を組み込むことでサービスやコミュニティにおける体験の拡張を目指す「povo 3.0」という構想が示されました。

アーティストやスポーツ人財の育成

ローソンによる接点強化、povo3.0による体験拡張に続いて竹澤が示したのは、「RESPECT YOU, au」を掲げ、パートナーとともに取り組む未来人財の育成です。

その一例として挙げられたのは、インディーズアーティストの収益化を支援するEggs Passとの協業や、電子チケット販売プラットフォーム事業を行っている子会社のLivePocketとの取り組みです。

また、サッカー選手の本田圭佑氏が発起人である4人制サッカー全国大会「4v4」や、元プロ野球選手の斎藤佑樹氏による「野球場をつくろう」プロジェクト、学生スポーツなどをサポートする方針も今回、あらためて紹介されました。

最後に、竹澤は「誰もが思いを実現できる社会に向けて、パートナーとともに取り組む」と締めくくりました。

第2部 次世代マーケティングで未来を拓く
~データクリーンルームを活用したデータコラボレーションによる新たな共創~

続いて開催された「次世代マーケティングで未来を拓く ~データクリーンルームを活用したデータコラボレーションによる新たな共創~」と題したトークセッションでは、マーケティングにおける最新のデータ活用状況が紹介されました。

KDDIと「ABEMA」のデータコラボに
Snowflakeの技術を活用

登壇したのは、KDDI パーソナル事業本部 マーケティング本部長の村田浩子、Snowflake マーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャー 兼 エヴァンジェリストのKT氏、サイバーエージェント 宣伝本部 本部長の野村智寿氏、KDDI パーソナル事業本部 マーケティング本部 シニアエキスパートの山口 求の4人です。
「マーケティングはお客さまと企業をつなげるプロセス。パートナーと一緒に推進することで持続的な社会の成長につなげていきたい。マーケティングを取り巻く課題についてスペシャルゲストの方に登壇していただいてトークセッションを行いたい」と村田の説明から、セッションが始まりました。
KDDIでは、昨年2023年6月、新しい未来のテレビ「ABEMA」とスポーツコンテンツ強化に向けたパートナーシップを締結しており、共同でスポーツ業界をデータドリブンに盛り上げるためのマーケティング強化が進められてきました。

Snowflakeは、米国に本社があり、クラウドベースのデータプラットフォームを提供しています。KDDIでもすでに導入しており、社内やグループ会社のデータを一元で統合管理する「次世代DMP(TUKUYOMI)」、社外とのデータ活用に関してはセキュアな環境でデータの連携・統合・分析を行う「データクリーンルーム」を構築しています。

「ABEMA」のマーケティング戦略

情報であふれている現代、人々の価値観が多様になる中、デモグラ情報だけではお客さまのニーズをとらえるのは困難になってきています。「ABEMA」でどのような戦略を採用しているのか野村氏を交えてディスカッションを行いました。「ABEMA」のコンテンツの一例として紹介された麻雀の「Mリーグ」では、「麻雀自体のゲーム性やポテンシャル、真剣に取り組む人たちの熱量をディスカウントすることなくしっかり伝えコンテンツの魅力や産業の発展につなげていく」(野村氏)ことを心がけているそうです。SnowflakeのKT氏より「麻雀のゲーム性とプレイされる雰囲気が融合して多くの人が想像する麻雀のイメージを形作っているが、ゲームの本質を見極めた上で、その上で新たなコンテンツに仕立てていくことで麻雀の新たな雰囲気を生み出している。この文化づくりこそマーケティングとして大事なこと」とコメントがあったように、裾野を広げて道を開いていくことで今やMリーグだけで視聴者は数百万人に拡大したとのことでした。
「ABEMA」では「新しい未来のテレビ」を目指し、たくさんの方々に魅力的なコンテンツ、可能性、クリエイティビティを届けることを大切にしています。そのためには情報を素早く提供できる即時性や、簡単にアクセスできるアクセシビリティを構築することを意識しています。

「さまざまな技術を活用してストレスなくご利用いただけるものを提供することがサービスやソリューションを展開する側としてはとても大切」と考える野村氏は、KDDIとの提携において、「ABEMA」が持つ1st Partyデータと、KDDI側が持つ位置情報や行動データなどのビッグデータを掛け合わせることで、お客さまの解像度が上がり、マーケティングの手法・発想・運用などの変化を期待しているといいます。

KDDIの山口は、「ABEMA」とのタッグにより、視聴データや興味関心、趣味嗜好など、KDDIだけでは得られなかった情報をもとに、より正しいタイミングでお客さまにあわせた情報を届けられたことが大きな成果と語っていました。

日本はデータを利活用できて
いないわけではない

米国と比べ日本のデータ利活用はまだ発展途上と言われがちですが、SnowflakeのKT氏は、「データ活用していると確信を持っていえることが重要。SnowflakeはAIデータクラウドを標語としてデータ連携を支援しているプラットフォーム。データ連携に適したアーキテクチャでデータコラボレーションがあらゆるところで実現している」と語るように、KDDIと「ABEMA」のような企業間のデータ連携は広がりつつあるということです。

そうしたデータ連携をさらに進めるひとつとなり得るのが「データクリーンルーム」です。

「データクリーンルームでは、各社のデータを持ち寄ったとしても、相手に自社データを見られないまま分析結果だけを確認できる。マーケターの視点としては、1人1人のEメールアドレスを知りたいわけではない。」(KT氏)と個人情報に触れることなく、個々人にあわせたマーケティングが可能と語っていました。

KDDIでは、データクリーンルームを用いた新しいデータコラボレーションに取り組んでいます。KDDIが持つ「TUKUYOMI(ツクヨミ)」という社内のデータ基盤と連携して、社外のデータを組み合わせて新しい事業の機会や価値を生み出す構想だと言います。

KDDIが独自に構築したデータクリーンルームは、データを暗号化し、匿名化した上で、ほかのデータと組み合わせた分析を実現しています。「従来の企業間のデータ連携よりもタイムリーに分析ができるようになり、アウトプットもクロス集計だけでなく機械学習や生成AIによる精度の高い推計で、1to1、つまり1人1人の好みに合わせたマーケティング手法も実現できることがKDDIのデータクリーンルーム特有の強み」と山口は話します。来春には、「WAKONX(ワコンクロス)」の1サービスとして、より多く企業にでも提供できるようになる予定です。

「日本はデータ活用に法規制があり、やりにくい面もあるが、逆に安全とも言える。法律を守りながらデータ活用を実現することは米国によりも先進的な点。これまでは米国を追従する形だったが今後は日本が超えていくのではないか。日本は外から得たものを改良していくことが得意だが、データでも同じ状況になるのではないか」とKT氏からもコメントがありました。

共創、人財育成における
コミュニティの重要性

続いて語られたのは「つながることによる新たな共創×AI」というテーマについてです。

KT氏は「社会全体がネットワークでつながることによって、無駄な作業が可視化されるようになった。データを加工するのをそれぞれの企業が行うのは無駄、共創するべき。そのデータでどのような価値を生み出すかは企業ごとの競争を行っていくべき」と語ります。

野村氏も「どちらか一方が利益を得るだけでは、持続可能な社会や産業にならず、先細っていく。共創と健全な競争、この両輪が回ることが、いい社会につながっていく。情報量だけでなく変化の速さに適切にアジャストしていくことがマーケティングに重要。即時性や精度が上がると体験価値が上がっていく」と語っていました。

山口は「AIや生成AIを使っていくことが有効になる。それがAIの民主化につながる可能性もある」との考えを披露し、実際に生成AIを活用した事例を紹介していました。

KT氏は「AIによって大きなデータを簡単に解釈できるようになったが解釈したデータをどう使うかは人が判断しないといけない。AIと人間の役割分担が重要」と語ります。
「ABEMA」の将棋番組でもAIが活用されています。対局の状況をAIが勝率で表示してくれたり、最善手を示すことで将棋のルールがわからない人でも楽しめたりするようになっています。さらに藤井棋士のようにAIを超えるような予期せぬサプライズも発生することで今までにない視聴体験を提供しています。

現在の部分最適のマーケティングを全体最適にしていく上で難しいのが、刻々と変わる状況でどのように人を育てるかです。未来の人財育成について、コミュニティ育成の第一人者であるKT氏は「理念を共有するコミュニティをつくることで、バックグラウンドが異なる人が同じ目的を持ち、組織の中で重要な人財に育っていく」と語っていました。

野村氏も「まずは事業部のトップが触ってみる、やってみることでフラットに議論することができる」と人財育成におけるコミュニティの重要性を語っていました。

最後に村田から本セッションのまとめとして「共創と競争を通して自己実現ができる世界をKDDI・パートナーともに目指していきたい」と語り終了しました。

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